懺悔21(川崎のひと)懺悔5続編 | 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~

懺悔21(川崎のひと)懺悔5続編

「其のにほひ 桃より白し 水仙花」松尾芭蕉
long long ago・・・君はあの冬の日、水仙を見たいと言った。
小田急線から小田原で伊豆急に乗り換え下田市須崎へ向かった。寒い日だったけど爪木崎へと向かう細い道・・・まさか、あの時は、二人に別れが突然訪れるとは思ってもいなかった。
水仙 須崎

水仙(Narcissus)、花言葉は自己愛自尊神秘・・・学名のNarcissusとはナルシスト、水に映る自分の姿に恋したギリシャ神話のナルシス。ギリシャ語で「麻酔」の意味からきたとの説もある・・・。
あの頃のデートは大抵、君の家の近くの溝の口のカフェでのおしゃべりだった。時々は向ヶ丘遊園にも行ったね。最初の遊園地デートで初めて腕を組み、君の大きな胸に触れたこと・・・それはいまでもいい思い出。
ホテル伊豆急、部屋に入る、二人で食事に行く、別々にお風呂、部屋に戻って・・・なんだかとても落ち着かない。ベッドはツイン、会話が弾まない。とても緊張していたんだ、きっとね。
とりあえず別々にベッドに・・・やや沈黙5秒間か・・・君のベッドに潜り込む・・・重なってキスをする・・・ふくよかな君の胸の膨らみがとても心地よい・・・ホテルの浴衣は着たままだったけど、下へと移るけど・・・一生懸命しようとするけど、・・・君は・・・閉じたまま抵抗してる・・・ここまで来て最後の一線は明らかに守ろうとしてる。何とかしようと焦るけど経験のない悲しさで、こんな時どうしていいか分からない。そして君の目に涙が滲んでいるのを見たとき、これ以上は無理ぽと悟った。もう自分に対して憤りつつ眠るしかなかった。
帰りの電車は無言の電車、手を握ったままお互いしゃべらず眠るでもなく、ただ後悔の念が渦巻いていた。そしてそのまま降車駅に着いてしまった。
・・・君は、言った。そして行ってしまった。別れましょうと・・・
・・・君は、あの初めての一泊旅行が覚悟の上の別れの旅路だったこと・・・知ってたんだね。デートは重ねていたけど、君は、口では言わなかったけど、早く結婚する相手を見つけようとしていた。たけちゃは、若かった。別れの時、駅のホームで一人残され見送る自分の姿は、群から離れてポツンと一人咲く水仙のよう・・とても悲しく見えてたに違いない・・・。