Book 008 - クリムゾンの迷宮 / 貴志祐介 | 午前零時零分零秒に発信するアンチ文学

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時事問題から思想哲学に至るまで、世間という名の幻想に隠れた真実に迫る事を目的とする!

■あらすじ

藤本芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。

「火星の迷宮へようこそ、ゲームは開始された……」

それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。

『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な発想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。



古本屋へ行くのが好きで、そこでたまたま本書を見つけた。

表紙の裏側に書いてあるあらすじを読んでみて興味を持ったので、取り敢えず購入してみた。つまらなけらば、また売ればいいのだからね。



■クリムゾンの迷宮

出だしは、どこかの映画にありそうな展開だ。

主人公・藤木芳彦がいきなり見知らぬ場所に閉じ込められる。周りは誰もいない。
記憶も直ぐには思い出せない。不安になり、夢遊病者のように彷徨っていると段々と思い出してくる。それでも、見に覚えのないものがある。それは、手元にある「水筒」や「ランチボックス」。多分、何者かが置いていったものであろう。

藤木が直ぐに餓死しないように。

それと「携帯用のゲーム機」がある。どうやらカセット式になっており、赤外線ポートまでついている。ポーチの中を調べていたら、やはりソフトが入っていた。それを本体に差し込む。すると、安っぽいファンファーレが鳴り、画面いっぱいに次の文章が表示された。

火星の迷宮へようこそ

誰かの悪戯なのだろうか?
これは間違いなく俺に対してのメッセージだと藤木は思った。

ゲームは開始された。無事に迷宮を抜け出て、ゴールを果たした者は約束通りの額の賞金を勝ちとって、地球に帰還することができる

「約束通りの額?」

藤木はゲーム機のAボタンを押しながら、そこに書いてある説明を順に読み出した。
すると、全体像が徐々に見えてきた。まずは、この迷宮らしき場所に閉じ込められているのは自分だけはでない。他にも閉じ込められた人間がいるということ。次に、指定されたチェックポイントなる場所が存在するということ。そこでプレイヤーは選択肢を与えられ、その選択は100パーセント各々の裁量に任せられるということだ。

(とにかく俺以外のプレイヤーを探さねばならない)

藤木がそう思って徘徊していると人影を目撃する。向こうも藤木に気づいたらしく一目散に逃げる。藤木は「待ってくれ、俺は味方だ」とばかりに追いかける。結局追いつくのだが、その際に相手は躓き、拍子に自身のゲーム機を壊してしまう。よく見れば女だった。

「折角のゲーム機が壊れてしまったじゃないの。責任を取ってよ」

名前は大友藍。彼女はそう言いながら藤木に詰め寄る。

このゲームでは、協力するも敵対するも自由である。何せゼロサムゲームだからねえ。片方が得をすれば、もう一方は損をするのである。しかし、藍のゲーム機が壊れてしまったので、藤木は彼女と組まざるを得なくなった。そして、二人がゲーム機からの誘導通りに進んで行くと、そこには他の仲間?が大勢集まっていた。

「それは、少々まずいことになりましたね」

年齢42歳、眼鏡をかけた一見物静かな学者風の男・野呂田栄介がいう。
藍のゲーム機が壊れたことを言っていた。どうやら、この野呂田がグループを統率しているようだ。結局、何人かでグループ分けをしながら協力し、この迷宮を脱出しようと決まった。

表向きでは…

第一のチェックポイントでは、4つの選択肢がある。

サバイバルのアイテムを求める者は
護身用のアイテムを求める者は西
食糧を求める者は
情報を求める者は

それぞれ進めという訳だ。

4グループに分かれ、各チームが東西南北へと進む。その行き先で入手した物品を持ち帰り、再び集合する。そして、お互いが報告した上で入手した物品の何割かを交換し合うという訳だ。そうすれば誰もが均等に物を集められる。だが、それは同時に嘘の報告をし、此方が有利に物を集めるよう計画することも出来るということも意味している。

この最初の選択こそが、今後の運命に大きく影響する。
藤木は、やはり食糧が大事だと思い、を選択しようとする。

「ねえ。へ行かない?」
「えっ?」

藍が藤木の袖を引っ張りながら小声で囁いた。

情報よ。今、何よりも必要なものは、情報だと思うの」



とにかく、先を読みたくなるようにシナリオが工夫されている。
だから、392ページと分厚い割りにサクサク進む。普段はゆっくり読む私も、一晩で読み終わってしまった。そこで思ったことは、本書を含めたホラーというジャンルの中で、最も恐怖を与えているのは誰か?ということだった。それは、「宇宙人」や「妖怪」や「魔術師」や「悪魔」や「ゾンビ」などではない。我々と同じ「人間」なのである。


クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)/貴志 祐介

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