中島朱実の世界

個人的思想から創作に至るまで、大衆的な記事とは180度違うことや非文学的な記事を羅列しています。

万人受けしないブログなので、記事の内容が合わないという方は、どうぞ退散なさって下さい。
コメントは承認制です。基本的には歓迎しますが、必ずしも反映される訳ではありません。

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 アメリカはミシガン州、ローチェスターヒルズ市。チッコーネ一家は日曜日には家族揃って教会に行くという中流階級の家庭でした。

 

父はゼネラルモーターズでデザインエンジニアとして働くイタリア系アメリカ人1世、母はカナダ系アメリカ人、兄弟は兄2人と妹2人と弟1人。そんな中に生まれた少女は、とても目立ちたがり屋で負けず嫌いでした。それは、規律を重んじるカトリックの家庭として生まれ育ったことへの反発なのかも知れません。

 

そんなある日のことでした。

 

少女が5歳の時でした。最愛の母を乳癌で亡くしてしまったのです。むろん、それ以前に病を患っていたことも判っていたし、治らないことも判っていた。しかし、日に日に衰弱していく母を目の当たりにしてまで耐えられるほど少女はまだ強くなかった。

 

少女は決心しました。これからは私が母親の代わりを務めるのだと。兄弟の面倒も私が見るのだと。そうよ、お母さんがいないのなら、私が強くなるのよ。いや、誰よりも強くなってみせるわ。これからは、自分のことは自分でする。この考えは、少女の中で自立心に芽生えた一方で、父に対して持った愛情への裏返しとも言えるのかも知れません。

 

しかし、事態は好転しませんでした。

 

3年後、父親が再婚してしまったのです。まだ、精神的に確立されてなかった少女にとって新しい母親は受け容れがたい存在だった。更に、父と義母との確執は悪化します。少女は反抗的な態度を取り、学校でも度々問題を起こすようになります。一方で、成績は常に優秀で先天的な容姿の良さと相俟って男子生徒からは人気の的となりますが、反面、敵も多くなります。

 

時は過ぎ、少女は高校生になります。

 

私だって一人の人間よ。ずっと孤独を感じていたし、弱気になることだって幾らでもあったわ。でも、誰が私をどう思おうが、私には関係ないことよ。父は、そんな私に楽器を買い与えてくれたし、色んな習い事をさせてくれたわ。感謝している。私はとにかく目立ちたかったのよ。ピアノは性に合わなかったから、代わりにダンスを覚えたの。相当にキワドイこともやったわ。男達の視線は私のダンスに釘付け、その中に父も居たから大笑い。

 

少女は人から注目されること、目立つことが生き甲斐でした。他人と一緒にされるのは嫌だった。好奇心はダンスというジャンルを超え、演劇やクラシックバレエへと移ります。

 

「君は凄いなあ。吸収力が常人離れしている。集中力が違う。どうだい、もっと高度な技術を覚えてみないかい。この僕が教えてやるよ」クラシックバレエの指導者、クリストファー・フリンはいう。

「いいわよ、フリン。もっと私にバレエを教えてよ。上手くなりたいわ」

「オーケー!じゃ、今から出掛けよう!」

「えっ、出掛けるってどこへ?」

「こういうのはね。目に見えるものだけを覚えてもダメなんだ。バレエは芸術さ。芸術を身に付けるには然るべき場所へ行かないと解らないことも沢山あるんだ」

「へぇー、芸術か。興味あるわね。で、どこへ行くの?」

「まあまあ、慌てなさんな。そうだな、まずはアソコへ行こうか」

 

フリンが少女を連れていったのは、何とゲイバーだった。奇妙な衣装をした男達と軽快なダンス・ミュージックが流れているその空間は、少女が今まで見てきたどのものよりもギラギラとしており、エネルギーに満ちていた。当然ながら驚いた。

 

「何なのよ、ここは?」

「そう言っていられるのも最初だけさ。君なら解るはずだ。僕が言わなくても、ここから色々なものを学んでいけるってことをね」

 

フリンの言葉通り、少女は乾いた砂が水を吸収するかのように、どんどんと新しいものを身に付けていった。それは、少女がミュージシャンとして道へ進む為の布石だった。やがて、少女はフリンがダンス講師をしているミシガン大学へ進むも中退。あまりにも覚えることは早かった為、これ以上、大学に居ても意味がないというのが理由でした。

 

「僕としてはずっと居て欲しかったんだがね。大きな魚を逃した気分だよ」

「ごめんね。でも、この経験は私にとってとても大きなものだったわ」

「成功しろよ」

「いままでありがとう、フリン。私、あなたのこと忘れないわ」

 

大学を後にする少女。

その力強い足取りは、決して後ろを振り返らない。

 

チッコーネ一家では歳を取った父親と義母が。

すっかりと成長した兄弟達がいた。

 

「本当に行くのか?」

 

悲しみを押し殺しているようだった。

すっかりと大人の容姿になった少女は、静かに言った。

 

「ええ、みんな元気でね」

 

家族と別れ、もう二度と帰らないという強い決意を胸に秘めた少女は、僅か35ドルを手にしてグレイハウンドの長距離バスに乗り込んだ。

 

ニューヨークへの片道切符だった。

 

どれくらい時間が過ぎたのだろうか・・・

 

やっとの思いで長旅を終え、バスを降りた先にあるニューヨークのコンクリート。その感触を味わいながら私は人生最大の賭けに出ようとしている。

 

道を踏みしめた少女はその喧騒の中、ゆっくりと周りを見渡した。

 

「おっ、そこの姉さん、どうしたんだい。なんていうのかな、あんたニューヨークへ来るのは初めてって顔してるね」

 

タクシーのうちの1台が近づき、声を掛けてきた。更に「観光案内だったら俺様に任せときな。いいとこ連れてってやるぜ。どうだい、乗って行きなよ?」

 

少女はふと思いました。

 

そうね。もう、帰る場所なんてないんだわ。私が生きていくには、絶対に成功するしかないのよ。その為に私はここにやってきた。少女は返事をしました。

 

「いいわよ、連れてって」

「おう、そう来なくっちゃ姉さん。アンタ思い切りがいいね、気に入ったよ。肝が据わってるって感じだな。そのうち大物になる」

「いいえ、お世辞だったら結構よ」

「お世辞なんかじゃねえ。俺の勘だよ。勘。これでも結構当たるんだ」

「じゃあ、一応礼くらいは言ってこうかしら」

「ああ、俺様が保証してやる。で、そうと決まれば何処へ行く?」

 

少女は少し考えて言った。

 

「この街で一番大きな場所へ連れてってくれるかしら」

「よっしゃ、お安い御用よ。任せときな。さあ、乗った乗った」

 

調子のいい口調とは裏腹にタクシーの運転はとても静かでした。

そして、賑やかな街並みのど真ん中で停車しました。

 

「姉さん、到着だ。ここがニューヨーク最大の繁華街、タイムズスクエアだ」

「凄いわ、とてもエネルギーを感じる」

「どうだい、気に入っただろ」

「ホントね。ここで降りるわ」

 

少女からお金を貰ったタクシーの運転手は「ありがとよ。じゃ、またな。俺様はいつだって姉さんの幸運を祈ってるぜ、Good Luckだ!」と威勢のいい声で返事をし、足早に去って行きました。

 

少女はタイムズスクエアの真ん中で大きく呼吸し、両手を広げ、目を瞑ります。

 

喧騒の中から流れる微かな風の音・・・

音は次第に大きくなって行く・・・

 

聴こえる・・・

聴こえるわ・・・

私を呼ぶ声が・・・

 

そう!大きな大きなスタジアム全体に響き渡る巨大な観衆による声援が!

私はそこで歌い、そして、踊るのよ!

 

ゆっくりを目を開けると、そこには眩しく、果てしなく広い青空が。

 

「私はこの世界で神よりも有名になる」

 

少女は天に向かって誓いました。

 

1)Borderline / Madonna

2)Crazy for You / Vision Quest (Soundtrack)

3)Vogue / I'm Breathless

 

 

 

 

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 『申し訳ありません。お探しの条件では求人が見つかりませんでした』

 

薄暗い部屋に表示されているPCのディスプレイ。

今年42歳になる藤倉にとって、それは無情な宣告だった。

藤倉の中から怒りが沸々とこみ上げてくる。このまま目の前にあるディスプレイを叩き壊してやろうかと思ったが、ネットカフェのブース内では出来なかった。

 

『転職決定数ナンバーワン、続々と喜びの声が。さあ、あなたに合った会社をみつけよう。弊社の担当者が責任を持ってお探し致します。お気軽に登録下さい』

 

別にこんな宣伝文句を信じた訳じゃない。それでも、心のどこかで期待していた部分はあったのだ。何が『申し訳ありません』だよ。本当に申し訳ないと思っているのか、コイツはよ。このクソナビ野郎めがぁ。藤倉は、心の中でしか毒づくことしか出来なかった。情けねえ。

 

思い起こせば、22年間勤めた会社から戦力外通告を受けたのが始まりだった。

一生懸命に働きながらも退社に追い込まれた独身男。

 

「幾らなんでも酷いじゃないですか。自分でいうのもなんですが、俺は自分なりに会社の為に尽力してきましたよ。寝る間も惜しんで、この身を削って、頑張ってきたんですよ。休日に呼び出されても文句ひとつ言わなかったじゃないですか。なのにどうして」

「いえいえ、藤倉さんの気持ちは十分伝わってますよ」

「だったら何で俺なんですか?」

「何で?って言われましても。会社で決定されたことなのでね」

 

メガネをかけた表六玉みたいな男が淡々と言った。社会人というよりも半ば学生気分で、また何の苦労も知らずに昨日今日入社したばかりのガキが。こんな奴が人事部とは人材難もいいとこだ。会社も情けねえぜ。

 

「・・・納得出来ないな。俺はマダマダやれる。戦力にもなる」

「戦力になるかならないかは会社が決めることです。藤倉さん、あなたが決めることじゃない」

「るせえんだよ、お前じゃ話にならねえ。佐藤さん呼んでくれよ」

 

佐藤さんとは、藤倉を子分のように可愛がっていた上司のことだった。

藤倉は、人事部のガキを押し退けて応接室を出ようとする。

 

「ま、まって下さい。藤倉さん、まだ話は終わってませんよ」

「佐藤さんに会わせろ。あの人なら解ってくれる」

 

応接室の扉を藤倉が開けて出ようとする。それを必死で止める人事部のガキ。

 

「私がどうかしたのか?藤倉」

 

応接室に駆け寄ってくる背広姿。50代半ばで、白髪を生やした小太りの男が近づいてきた。オールバックに決めたヘアースタイルが威圧的だ。藤倉は驚いた。一方、もみ合っていた人事部のガキも直立不動になった。

 

「佐藤さん・・・」藤倉が、オールバックの男をほうを向いて呟いた。

「一体どうしたんだ?騒々しい」佐藤がいう。

 

藤倉は事のあらましを説明した。人事部からの突然の退職勧告。一体俺のどこが悪いんだ。納得がいかない。佐藤さんなら解ってくれる。そうでしょ。

 

「なあ藤倉よ」肩を寄せて佐藤がいう。「それが会社ってもんなんだよ。お前が一生懸命働こうが、頑張ろうが、評価するのはウチのお偉方だからな。サラリーマンの悲しい宿命だよなあ。私も今回の人事には、お前に同情するぞ」

 

ちっともそんな風に思ってない口ぶりだった。何が「同情するぞ」だ。佐藤さんまでそんな事をいうのか。俺はアンタの力にもなってきたじゃないか。それこそ自分自身の自由を削ってまでも。で、それで終わりかよ。

 

人事部のガキも「やれやれ、これだから会社のお荷物は困るんだ」と言いたげな表情で、藤倉を小馬鹿にしていた。

 

藤倉は当然の如く会社の退職勧告には納得がいかなかったが、彼をとりまく環境は日に日に悪化して行った。こうやって自主退職へと追い込んで行くのだ。

 

会社を辞めた藤倉は、暫く仕事から離れたかった。

 

以降の藤倉はずっと就職活動中の身だったが、時が過ぎるのは早いものだ。彼自身「なあに、頑張って仕事を探せばまた見つかるさ」なんて思っていたし、以前の仲間達もまた「藤倉みたいに真面目な人間なら、欲しがる企業は幾らでもある。あせらずにじっくり探せばいいんだ」と励ましてくれる。

 

しかし、現実は違っていた。

 

ハローワークや求人誌には山ほどの求人があるものの、実際に足を運んでみれば提示条件が違っていたなんてことは珍しくもなんともなく、安い給料で長時間拘束される。仕事の内容も、以前に聞いていたものと似ても似つかぬもので重労働を押し付けられることもある。当然ながら、そんな会社は定着率が高いはずがない。

 

見学に行っても挨拶を交わすこともなく、薄暗い部屋で顔色の悪い従業員達が忙しく働かされている。彼らの目が無言で語りかけてくる。『オメエ、命が惜しくないのか?』、『あなた、悪いことは言わないわ。こんな所に来ちゃダメよ!』。その向う側には従業員を監視している薄気味悪い監督職の連中がいる。

 

毎日毎日、背広を着て、ビジネスバックを持ちながら歩き回る日々。履歴書1枚作るのだって金が掛かっているんだ。証明写真が高くつく。気がつけば2年が経過していた。

 

あれだけ蓄えていた貯金も底を尽く。安いと思っていたアパート代も重くなってくる。俺もとうとうヤバくなってきたぜ。次第に以前の仲間からは疎遠になり、世間から見た藤倉という男は惨めなニートのオヤジにしか見えなかった。

 

死のうか・・・

 

藤倉が絶望になりかけていた頃、ハローワークで思いもよらない求人があった。

 

『ビル施設管理業務、誰にでも出来る仕事です。面倒なことは一切なし。業務内容は出入口の施錠と解錠のみ。1名のみ募集します、まずは履歴書を郵送ください。書類選考の上、面接日をご連絡致します』

 

会社名は「㈱インサイド・アイランド」とある。

 

給料提示は破格だった。

 

まさか・・・

 

「はっはっはっ、ゼロが一桁多くなっているよ。先方の入力ミスだなこりゃ」ハロワのおっさんがいう。

 

笑い事かよ。書類のチェックをするのはお前らだろうが。こんなもん「わたしたちは普段からイイ加減な仕事しかしてませんので、そこんとこよろしく!」ってテメエ達のバカを露呈しているようなもんじゃねえか。でもよ、俺にも生活が掛かってんだよ。入力ミスだろうが印刷ミスだろうが手違いだろうが何だろうが、こんな破格の案件を見過ごす訳にはいかねえのよ。

 

何せ日給が「50000円」だからなあ。

オマケに勤務時間は0時~5時までのたった5時間。

月に4日出勤しただけでも20万だ。

 

おっさんは「とりあえず、先方へ電話入れますね」というが、何てことだろうね。肝心な電話番号すら載ってねえじゃねえか。

 

「本当だ。連絡先なんて何もかいてませんね。『まずは、履歴書を郵送ください』か。それだったら、藤倉さんから直接郵送でいいんじゃないですか。ハローワークとしては紹介状書きますんで、それと一緒にすれば問題ないかと思います」

 

いい加減なもんだぜ全く。

 

しかしだ。噂には聞いたことがある。ハロワには、ごく稀に信じられないくらいの好条件なホワイト求人が出現するということを。そして、そんなホワイト求人の画面はすぐに消えるということも藤倉は知っていた。

 

では、この求人が掲載されている日は、一体いつなんだ?

藤倉の目線は、舐めるように日付を見ていた。

 

今日だ!

 

たぶん採用はされないだろう。それでも俺には意地がある。何の意地かって訊かれても困るのだが。まあこんな美味しい求人を見てしまった以上、応募しない訳にはいかない。藤倉は急いでアパートに戻った後、履歴書と職務経歴書を作成した。それから、ハロワで貰った紹介状を纏めて郵送した。

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■あらすじ

 

芸術家志望の若者も、大学の助手も、社長の御曹司も、誰一人夏子を満足させるだけの情熱を持っていなかった。若者たちの退屈さに愛想をつかし、函館の修道院に入ると言い出した夏子。嘆き悲しむ家族を尻目に涼しい顔だったが、函館に向かう列車の中で見知らぬ青年・毅の目に情熱的な輝きを見つけ、一転、彼について行こうと決める。魅力的なわがまま娘が北海道に展開する、奇想天外な冒険物語!文字の読みやすい新装版で登場。

 

 

■解説

 

三島由紀夫といえば、個人的には純文学の小難しいイメージがあるのですが、本作の「夏子の冒険」にはそれが殆ど感じません。美しい文章で話が進行し、とても読みやすく、面白く、そして、切ない話になっています。

 

20歳になった松浦夏子は、この若さにして人生というものに見切りをつけてします。世の中は退屈であり、わたしの前に現れる男達はみな、どこにでもいそうな平凡で保守的でつまらない人間ばかり。だから、わたしの未来だってきっとつまらないものになる。それなら、いっその事、自殺してしまおうかしらと行為に及ぶのですが、家族がなんとか思い留まらせて未遂に終わります。

 

その家族というのが、父の他に、母の松浦光子、祖母の松浦かよ、伯母の近藤逸子・・・いわゆる三婆な訳ですが、みんな夏子の我儘ぶりには手を焼いてました。一度言い出したら二度と曲げようとしない。それは誰の命令であったとしても。

 

そんなある日のこと、夏子は家族との食事中に決意します。

「わたし、修道院に入る」と。

 

修道院の場所は北海道の函館。東京からは船に乗っていかねばならない。夏子の身が心配な三婆は、お供として一緒に付いていきます。

 

その道中、夏子は上野駅で猟銃を背負った青年を見かけます。暗く、どす黒い、森の光を帯びた獣のような美しい目。彼は一体何者なのだろうか。今までの男とは全然違う。気になって仕方がない。

 

夏子一行は船に乗ります。同じくして、あの青年も函館行きの船に乗船します。夏子は三婆が席を離れてから青年に近づきます。彼の名は井田毅。彼には今までの男達になかった情熱がある。う~ん、上手く言えないけど、身体の芯から得たいの知れない力が漲っているかのようと夏子は思った。「そうだ、決めた。毅に付いていこう。彼がこれからどんなことをするのか、この目で見てみたい。いいえ、そうじゃないわ。わたしも体験してみたい」と。

 

「あたし、松浦夏子。明日、函館で会いましょう」

 

こんな話までに発展していたことも知らない三婆。

 

「という訳だから、わたし、毅さんに付いていく。じゃあね」

 

この先、三婆が右往左往したのは言うまでもありません。一方で、夏子は毅と函館で落ち合います。そして、どんどん毅の話に惹きこまれて行きます。彼がこれからしようとしていることは、ここから先にあるコタンで仇をうつ為。一昨年、婚約者である秋子を熊に殺された場所だった。毅は熊をみつけてこの猟銃で仕留めるのだという。夏子は目を輝かせる。

 

「いいでしょ。わたしも連れてって。足でまといにはならないわ」

 

修道院の話なんてどこへやら、夏子は毅に連れられてコタンを目指します。その遥か後方では、三婆があーだこーだと言いながら追ってきている。

 

これは夏子が修道院へ行くまでの間、ちょっぴりと寄り道をした話。

短い間ながらも毅によって夢中になれた彼女が一瞬だけ輝けた青春のお話。

 

 

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 英国の小さな町にある楽器店にて。

 

13歳のカート・スミスは物珍しい様子でキーボードなどの楽器を見ていました。それはまるで、彼の心を癒すかのように。そんな時、同じようにして楽器を見ていた少年がいました。名前はローランド・オーザバル。カートと同じ歳でした。

 

ローランドは決して恵まれた家庭環境で育った訳ではなく、幼くして両親の離婚を経験していました。自分と同じ匂いを感じ取ったのか、カートもまた同じくして心に深い傷を負っていたのです。彼らは出会うべきして出会ったのでした。

 

2人はすぐに打ち解け、自分達の体験を元にした歌を作り出します。そして、本格的に音楽活動を行うようになります。「バンドは幾つか経験したさ。しかし、どれも満足出来なかった」いずれは自分達が中心となって活動出来るユニットを作りたいと思うようになり、これがティアーズ・フォー・フィアーズ(以下TFF)結成に繋がりました。メンバーは以下の通り。

 

ローランド・オーザバル(V・G)

カート・スミス(V・B)

イアン・スタンリー(K)

マニー・エリアス(D)

 

「恐れや精神的な傷というものがあるならば、決して自分自身の心の中にしまってはならない。たとえ大人であったとしても、そういったものは背負うことなく、又、引き摺ることなく、子供のように声に出して泣き叫べ。シャウトするのだ」

 

これは、とあるアメリカの心理学者によって提唱された原初療法のようですが、カートとローランドの精神にとっては重要な役割を担っていました。いわばバンド名のTFFも、上記をルーツにしたものでした。

 

透明感のある美しいメロディに乗って歌い上げられるメッセージは重く、デビュー作こそヒットに恵まれなかったものの、TFFは徐々に頭角を現していきます。その原動力となったのが、彼らのプロデューサーとなるクリス・ヒューズでした。MTVの普及によりPVに力を入れ、音楽的にも力強さを加えた手腕はTFF第5のメンバーと呼ぶに相応しい存在でした。

 

84年発表のシングル「Mothers Talk」は全英14位まで上昇。続く「Shout」はTFFの代名詞ともいえるナンバー。本国イギリスでこそ4位に終わったものの、全米を含む5カ国で1位となり、日本でも自動車のCMソングに使われました。

 

彼らの人気を不動にしたのが「Everybody Wants to Rule the World」です。

 

晴れて澄み切った空の下でオープンカーが駆け抜け、飛行機が優雅に飛んでいるPVからはシニカルな歌が届きます。これは当時のアメリカやソ連に対する反戦を意味していたのではないかと思慮されます。ありもしないものを求める彼らに聴かせてやりたい。世界を支配したがっている連中に聴かせてやりたい。それでも俺たちは手を繋ぐしかないんだ。

 

この曲は、何と全米1位・全英2位の大ヒットとなりました。

 

その後「Head over Heels」(全米3位・全英12位)を含めた4作のシングルを1枚にしたセカンド・アルバム「Songs from the Big Chair」は、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンの波にも乗り、1000万枚近くのセールスを獲得。

 

それでも、ローランドは満足しなかった。

 

自分達のサウンドをもっと成熟させる為にTFFはアメリカの女性シンガー オリータ・アダムスを招聘。アルバム「The Seeds of Love」は、彼らの目指した完成形といえるでしょう。

 

1)Sowing the Seeds of Love / The Seeds of Love

2)Everybody Wants to Rule the World / Songs from the Big Chair

 

 

 

 

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 人間は正しいと思う判断は出来ても、正しい判断は出来ない生き物です。

 

「そんなことあるものか。俺のやっていることはいつだって正しかったし、間違っているとすればお前のほうだろう」と言われても、これもまた彼の個人的な考えから「これは正しいことだ」と思い込んでいるに他なりません。どのような者でも人は己のフィルターを通さないと思考出来ないからです。

 

何が正しいとか何が正しくないとかは、神様にでもならなければ誰にも解らないのであり、その解りもしないものに対して折り合いをつけて生きていかねばならないのが我々人類の宿命です。

 

ところが実際問題、ちゃんと折り合いをつけていられる人ってどれくらい居るのでしょうか。殆どいないのではないでしょうか。人間は己の都合の良いように思考します。だから、他者とバッティングすることも珍しくありません。

 

東野圭吾氏の小説「変身」に登場する成瀬純一は未曾有の脳移植手術によって蘇った青年だった。それは奇跡と言ってよいほどの死からの生還。純一は退院後も問題なく回復。念願の社会復帰まで叶った訳だ。医学的には全て順風満帆だったはずだが、彼に異変が生じたのはその後だった。自分が自分で無くなる感覚。純一をじわじわと追い詰めてくる感覚。そう、死んでいないはずである提供者の脳が純一の脳を乗っ取ろうとしていたのだ。容姿を除けば純一の人格は徐々に「奴」のものへと変化していく。五感までもが変わってしまう。あまりの変貌ぶりに社内の者達や恋人の葉村恵までもが戸惑いを隠せない。やがて純一は自分自身を取り戻す為に脳内を支配しようとする「奴」と戦うことになる。

 

戦いに勝利する為にはどうすれば良いのか?

 

自分自身を終わらせればいい。

そうとも、戦おうとする自分自身を終わらせればいい。

 

純一の世界はあくまでもフィクションによる特殊なものですが、現実に眼を向ければ形こそ違っていてもこういった戦いは日常のように行われています。

 

同じものを見ているようでも人によっては全く見え方が違います。どっちが正しく見えているのかと問えば、彼らは必ず自分の眼のほうが正しいと思うでしょう。同じものを聴いていたとしても人によっては全く聴こえ方が違います。どっちが正しく聴こえているのかと問えば、彼らは必ず自分の耳のほうが正しいと思うでしょう。同じことを考えていたとしても人によっては全く答えが違います。どっちが正しいのかと問えば、彼らは必ず自分のほうが正しいと思うでしょう。

 

「感情的トラブルを起こすな」

「理性的に行動せよ」

 

社会でよく言われる台詞ですが、トラブルなんてものは不意にやってくることが多いものです。我々人間は基本的に自分勝手な生き物であり、そういった因子の干渉によって起こってしまう。だから、譬え自分自身がトラブルの当事者となったとしても、それを恥じることはない。起きる時は起きるのであり、そういう時に冷静に物事を判断せよとか理性的に行動せよとかいうのは到底無理な話です。

 

では、トラブルが起きればどうすれば良いのか?

 

それは、トラブルが起きたという状況・・・

ただ、この1点だけを認めること。

 

自分を責めることなく、相手を責めることなく、トラブルを責めることもなく。

 

何も考えることなく、トラブルの当事者であるなら、そんな自分自身を終わらせること。「何が原因か?」とか「どう対策するのか?」とか「どう反省するのか?」とかなんてものは後から幾らでも考えることが出来る。しかし、急なトラブルに直面している時は、そう簡単に思考なんて働かない。ここで重要なのは「傷口を広げない」ということ。その1点だけに力を注げばいい。

 

傷口を広げずに済んだのなら、そんな自分を褒めてやればいい。また、心の中で相手にも感謝すればいい。程度にもよりますが、後は気持ちを落ち着けた上で対策を立てていけばいい。決して自分自身だけで抱えることなく。

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