マストドン「土居豊のホスト丼」での文学論議《アーサー・ランサムの児童文学『ひみつの海』》 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

マストドン「土居豊のホスト丼」での文学論議《アーサー・ランサムの児童文学『ひみつの海』》

話題のマストドン、「土居豊のホスト丼」での文学論議、アーサー・ランサムの児童文学『ひみつの海』

 

 

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ランサムの「ひみつの海」は、冒険物語としても構成が最も巧みで、限りなく本物に近い危機に直面しながら、いかに脱出するか? 異文化との接触をどうやってコミュニケーションで乗り越えるか? 友情と信頼をいかに勝ち得るか? 義務と理想をどうすり合わせて実現するか? こういった困難な課題を達成していく。

紅海でエジプト人になりかけたティティ、ロジャ、ブリジットの場面は、最高にスリリングだ。

最後の日の朝まであきらめずに北西航路と北東航路を発見する場面も、ジョンのあきらめの心情と重ねて見事に描かれている。

 

「ひみつの海」に出てくるブリジットは、ウォーカー5兄弟の中で一番、しっかり者で、しかもイマジネーション豊かな子だ。末っ子は上を見て育つから、だいたいしっかりするものだが、ブリジットの場合は、上の兄弟たちの冒険物語をうらやましがりながら育ったので、冒険への憧れを一番心に抱いている。

 

「ひみつの海」、ウナギ族のメンバーたちはそれぞれに個性的だが、マストドンがデイジーから手紙で難詰されて悩む場面は、仲間意識という課題を突きつけて、現代の我々にも心に刺さる。

デイジーのあっけらかんとした性格、マストドンの生真面目さ、ダムとディーの有能さ、が見事に噛み合ったグループの組織力は、ちょうどアマゾン海賊とツバメ号が一体となった際の総合力に匹敵している。

ウナギ族の物語は、この一作しか書かれなかったのだが、彼らにとっての「六人の探偵たち」にあたる作品が読みたい、と思う。

 

「ひみつの海」、最後に、この作品の舞台となったイングランド南部の海岸地方は、ハリッジ港の近隣だが、実は話題のクリストファー・ノーラン新作映画『ダンケルク』で、英国の「ダイナモ作戦」の主要な発進地となるはずだ。「ひみつの海」前作の「海へ出るつもりじゃなかった」でハリッジからオランダのフラッシングまで航海したように、映画『ダンケルク』では、ダンケルク海岸に追い詰められた英軍を、民間の船やヨットまで動員して北海を横断して救出する話だ。ランサム自身も、このダンケルクの撤退戦で、自身のヨットを提供しようとして丁重にお断りされている。映画「ダンケルク」は、ランサムファンならぜひ観ておきたい。

 

※参考ブログ

ノーランの映画「ダンケルク」と、英国BBC映画「Swallows & Amazons」

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12282219656.html