(追加)土居豊講演『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』の概要まとめ
(追加)土居豊講演『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』の概要まとめ
先週土曜日、西宮市立中央図書館で『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』という講演会を担当しましたが、その内容について、追加でまとめておこうと思います。
特に、講演の最後にお話した「ハルヒのメンタリティは、バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡?」という仮説について、書いておきます。
※(報告)土居豊講演『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』 http://ameblo.jp/takashihara/entry-12121030898.html
1月23日土曜日午後、西宮市立中央図書館で『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』という講演会を担当しました。
すでに以下のブログ記事で、講演内容の前半部分は概説しました。
※参考ブログ
『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』西宮市立中央図書館講演の概要その2
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12120437430.html
『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』西宮市立中央図書館講演の概要など
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12120000243.html
さて、
その続きで、講演のまとめとして、
(1)谷川流は閉鎖系の物語を書く作家
という仮説と、
(2)ハルヒのメンタリティは、バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡?
という仮説についてお話しました。
(1)については、数多くの根拠がありますので、省略しますが、(2)については、これまで語られたことがなかったと思います。
「ハルヒ」の場合、物語のスケールの大きさに比して、実際の物語空間が日常世界に限定されていること、が目立ちます。
その理由は、こうではないかと考えました。物語の範囲が限定されているのは、すなわち物語の「創造主」たるハルヒの精神の未熟さを体現している、のだと。
作中では「女神」であるはずのハルヒの精神が、もっと現実世界に対してリアルにアクティブであれば、ハルヒの物語も、もっとリアリティが強く、現実世界に対して主体的な取り組み方をするでしょう。
そうではなく、ハルヒの想像力は、日常世界の範囲を超えると、すぐに「カナダ」や「宇宙」といった夢物語に移行してしまうのです。いわば、「日常系」から一足飛びに「世界系」へ飛躍してしまう。
これはつまり、ハルヒの想像力が、現実世界に対しては地元の範囲を越えることがなく、あくまで地元の範囲でしか活動を構想しない、という限界があるのです。
そのくせ、宇宙人などの夢物語を信じている、という内面を持っていて、「世界系」の物語的に、世界を自分が救う夢をみているのです。
けれども現実には、ハルヒの世界は、あくまでも生まれ育った故郷の地を超えることがなく、それゆえにSOS団の旅行先も限定され、おそらくはハルヒの進学先も地元の大学であるように描かれています。
そんなわけで、
ハルヒのメンタリティは、「日常系プラス世界系」であって、「バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡であるかも?」と考えた次第です。
したがって、
最初の【問い】
「なぜ『長門有希ちゃん』の文芸部は長野県まで合宿に行けたのか?」
に対する回答は、
【問いの答】
「『涼宮ハルヒの消失』の世界では、ハルヒを失ったキョンと長門の二人が、閉鎖世界を突破する可能性を秘めていた。それゆえ、その可能性を実現した「長門有希ちゃん」では、文芸部は遠く長野へ合宿にいくことが可能になった」
ということではないか?と、いささかこじつけですが、お話しました。
以上のお話に、「ハルヒ」シリーズのファンの方々には、きっとご不満もあると思います。
それでも、
「ハルヒ」シリーズの続編を待って、この議論の続きを、みなさんとご一緒に考え、語り合える日がくることを、いまから楽しみにしています。
(ハルヒの続き、谷川流さん書いてほしいなあ)
※講演会当日、参加者の方々が撮ってくださった写真をいくつか、転載します。
※ハルヒ:ふじこ@one1_vip
長門:星雫@mandcello

※photo:ふじこさん

※ぽと@ポニテ神 @NNataku

※きーぼー @keyboar

ちなみに、
筆者は「ハルヒ」シリーズについての研究本を刊行しています。
※
土居豊 著『沿線文学の聖地巡礼 川端康成から涼宮ハルヒまで』(関西学院大学出版会2013年10月刊)
http://www.kgup.jp/book/b146062.html
土居豊 著『ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する』(大学教育出版 2012年4月刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/4864291276/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1334231386&sr=1-1
※「ハルヒ」の聖地・西宮北口の喫茶店・珈琲屋ドリームにも、拙著を置いてくださってます

【以下、告知です】
(お知らせ)「文学へのいざない in 門戸厄神 第9回 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』」
https://www.facebook.com/events/444558655738959/
村上春樹の育った町・西宮で、ゆかりの作品を読む読書会も、今回で9回目となります。毎回、常連の参加者の方々や新しい方のご参加があり、丁々発止のやりとりが楽しめます。
今回はいよいよ、村上春樹の代表作の一つ『ねじまき鳥クロニクル』です。
この小説は全3巻なので、3回に分けて読んでいきます。
※会場の居酒屋じゅとう屋は、ノーベル文学賞カウントダウンで全国ニュースに映った店です。
門戸厄神でのイベント、毎日新聞阪神版に大きく掲載されました。
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12082444989.html
【詳細】
↓
「文学へのいざない in 門戸厄神 第9回 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』」
【内容】
「西宮で育った村上春樹の文学は、いまやノーベル文学賞の候補といわれ、世界40ヶ国以上の言語に訳されています。世界中で愛読される春樹文学の原点は、故郷・西宮にあります。村上春樹研究を四半世紀続けてきた作家・文芸ソムリエの土居豊と一緒に、村上春樹の文学を読みましょう。」
【日時】
2016年1月28日(木)19時半~
ゲスト講師:土居豊(作家・文芸ソムリエ)
【参加費】
1000円(お菓子つき)
【場所】
じゅとう屋J:SPACE
西宮市下大市西町(阪急門戸厄神駅下車すぐ)
居酒屋「じゅとう屋」
お問い合わせ:0798-52-2258
以下のフェイスブックグループでも詳細を告知しています
↓
「文学へのいざないin門戸厄神~文芸ソムリエ・土居豊と一緒に文学を味わいましょう」
https://www.facebook.com/groups/796485500430190/
先週土曜日、西宮市立中央図書館で『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』という講演会を担当しましたが、その内容について、追加でまとめておこうと思います。
特に、講演の最後にお話した「ハルヒのメンタリティは、バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡?」という仮説について、書いておきます。
※(報告)土居豊講演『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』 http://ameblo.jp/takashihara/entry-12121030898.html
1月23日土曜日午後、西宮市立中央図書館で『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』という講演会を担当しました。
すでに以下のブログ記事で、講演内容の前半部分は概説しました。
※参考ブログ
『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』西宮市立中央図書館講演の概要その2
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12120437430.html
『「長門有希ちゃんの消失」と西宮ゆかりの文学』西宮市立中央図書館講演の概要など
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12120000243.html
さて、
その続きで、講演のまとめとして、
(1)谷川流は閉鎖系の物語を書く作家
という仮説と、
(2)ハルヒのメンタリティは、バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡?
という仮説についてお話しました。
(1)については、数多くの根拠がありますので、省略しますが、(2)については、これまで語られたことがなかったと思います。
「ハルヒ」の場合、物語のスケールの大きさに比して、実際の物語空間が日常世界に限定されていること、が目立ちます。
その理由は、こうではないかと考えました。物語の範囲が限定されているのは、すなわち物語の「創造主」たるハルヒの精神の未熟さを体現している、のだと。
作中では「女神」であるはずのハルヒの精神が、もっと現実世界に対してリアルにアクティブであれば、ハルヒの物語も、もっとリアリティが強く、現実世界に対して主体的な取り組み方をするでしょう。
そうではなく、ハルヒの想像力は、日常世界の範囲を超えると、すぐに「カナダ」や「宇宙」といった夢物語に移行してしまうのです。いわば、「日常系」から一足飛びに「世界系」へ飛躍してしまう。
これはつまり、ハルヒの想像力が、現実世界に対しては地元の範囲を越えることがなく、あくまで地元の範囲でしか活動を構想しない、という限界があるのです。
そのくせ、宇宙人などの夢物語を信じている、という内面を持っていて、「世界系」の物語的に、世界を自分が救う夢をみているのです。
けれども現実には、ハルヒの世界は、あくまでも生まれ育った故郷の地を超えることがなく、それゆえにSOS団の旅行先も限定され、おそらくはハルヒの進学先も地元の大学であるように描かれています。
そんなわけで、
ハルヒのメンタリティは、「日常系プラス世界系」であって、「バブル後の日本の若者のメンタリティの写し鏡であるかも?」と考えた次第です。
したがって、
最初の【問い】
「なぜ『長門有希ちゃん』の文芸部は長野県まで合宿に行けたのか?」
に対する回答は、
【問いの答】
「『涼宮ハルヒの消失』の世界では、ハルヒを失ったキョンと長門の二人が、閉鎖世界を突破する可能性を秘めていた。それゆえ、その可能性を実現した「長門有希ちゃん」では、文芸部は遠く長野へ合宿にいくことが可能になった」
ということではないか?と、いささかこじつけですが、お話しました。
以上のお話に、「ハルヒ」シリーズのファンの方々には、きっとご不満もあると思います。
それでも、
「ハルヒ」シリーズの続編を待って、この議論の続きを、みなさんとご一緒に考え、語り合える日がくることを、いまから楽しみにしています。
(ハルヒの続き、谷川流さん書いてほしいなあ)
※講演会当日、参加者の方々が撮ってくださった写真をいくつか、転載します。
※ハルヒ:ふじこ@one1_vip
長門:星雫@mandcello

※photo:ふじこさん

※ぽと@ポニテ神 @NNataku

※きーぼー @keyboar

ちなみに、
筆者は「ハルヒ」シリーズについての研究本を刊行しています。
※
土居豊 著『沿線文学の聖地巡礼 川端康成から涼宮ハルヒまで』(関西学院大学出版会2013年10月刊)
http://www.kgup.jp/book/b146062.html
土居豊 著『ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する』(大学教育出版 2012年4月刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/4864291276/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1334231386&sr=1-1
※「ハルヒ」の聖地・西宮北口の喫茶店・珈琲屋ドリームにも、拙著を置いてくださってます

【以下、告知です】
(お知らせ)「文学へのいざない in 門戸厄神 第9回 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』」
https://www.facebook.com/events/444558655738959/
村上春樹の育った町・西宮で、ゆかりの作品を読む読書会も、今回で9回目となります。毎回、常連の参加者の方々や新しい方のご参加があり、丁々発止のやりとりが楽しめます。
今回はいよいよ、村上春樹の代表作の一つ『ねじまき鳥クロニクル』です。
この小説は全3巻なので、3回に分けて読んでいきます。
※会場の居酒屋じゅとう屋は、ノーベル文学賞カウントダウンで全国ニュースに映った店です。
門戸厄神でのイベント、毎日新聞阪神版に大きく掲載されました。
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12082444989.html
【詳細】
↓
「文学へのいざない in 門戸厄神 第9回 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』」
【内容】
「西宮で育った村上春樹の文学は、いまやノーベル文学賞の候補といわれ、世界40ヶ国以上の言語に訳されています。世界中で愛読される春樹文学の原点は、故郷・西宮にあります。村上春樹研究を四半世紀続けてきた作家・文芸ソムリエの土居豊と一緒に、村上春樹の文学を読みましょう。」
【日時】
2016年1月28日(木)19時半~
ゲスト講師:土居豊(作家・文芸ソムリエ)
【参加費】
1000円(お菓子つき)
【場所】
じゅとう屋J:SPACE
西宮市下大市西町(阪急門戸厄神駅下車すぐ)
居酒屋「じゅとう屋」
お問い合わせ:0798-52-2258
以下のフェイスブックグループでも詳細を告知しています
↓
「文学へのいざないin門戸厄神~文芸ソムリエ・土居豊と一緒に文学を味わいましょう」
https://www.facebook.com/groups/796485500430190/