高槻遺棄事件について | 作家・土居豊の批評 その他の文章

高槻遺棄事件について

高槻遺棄事件について

※参考記事
【高槻女児殺害】威信をかけた捜査、被疑者逮捕も…星野くん遺体発見に唇かむ府警幹部 - 産経ニュース http://www.sankei.com/west/news/150821/wst1508210098-n1.html

※参考記事
大阪・高槻市女子中学生遺体事件 逮捕の45歳男、容疑を否認 http://fnn.jp/1PDuujU


高槻遺棄事件、容疑者逮捕の報道記事、上記の産経記事を読むと、「威信をかけた捜査」などと、大阪府警への礼賛ぶりが目立つ。容疑者の身柄確保の場面では「捜査員が怒声を響かせた」と小説もどきの描写も。その場にいたのか?と思わずつっこみたくなる。「府警の全力を挙げて」という表現は、府警幹部のコメント「総力を挙げて」を言い換えたのだろう。だが、本当に「全力」だったのだろうか? 
事件が発覚して以来の、捜査の後手後手ぶりをみる限り、今回は「全力」というより、かなりの失点だったのではなかろうか。高槻事件の警察捜査は、本当に礼賛に値するものだったのか? という疑問を抱きたくなる。容疑者否認なので、まだ犯人逮捕かどうかも未定なのはさておき、この事件、初動捜査のミスが重なったのは否めないだろう。
「神隠し」などと警察自身が慨嘆している場合ではない。同じような悲劇が繰り返されないよう、早急に対策を求めたい。
また、容疑者の取調はくれぐれも慎重に願いたい。焦って冤罪を生むのは、なしにしてほしい。
ところで、この事件で悲しいのは、中1生の二人が、どんな事情があったにせよ、失踪直前まで友達と携帯で連絡を取り合っていたのに、みすみす事件の犠牲者になってしまったことだ。
特に男子の方は、ネット上で、早くから写真入りの捜索お願いチラシが拡散されていた。この点でも、警察の捜索がもっと早く始められていたら、と無念だ。

※参考記事


それにしても、
子供が犠牲になる犯罪について、上記の記事のような上っ面の意見をみると、同じ中学生の子供をもつ保護者の身としては、非常に腹立たしい。
親が子供をみなければならないのは、もちろんのことだ。けれど、現在の日本社会では、親は四六時中、子供を見守っていられない。ましてや、中学生にもなれば、勝手に行動してしまうこともありうる。
まず、社会制度として子供を見守る仕組みが十分ではない。学校の長期休暇中、働いている親が子供を完全に守れないのは、自明なことだ。
町中の防犯カメラの普及は、反対意見もあるのはわかるが、やはり拡充を願いたい。
そもそも、「子供を守れ」というなら、まずは、未成年者が安心して長時間過ごせる公共施設をもっと増やしてほしい。例えば、夏休みの図書館にどれだけたくさんの子供が集まっているか、実際に見たらわかる。今回の場合も、もし被害者の中1生たちが、家族と気まずいことがあって、家に帰りにくかったなどの事情があったとして、未成年者の駆け込み寺的な公共施設が、近隣にあれば、野宿したり、見知らぬ他者の車に誘い込まれたりする危険を、回避できたのではないか? と考えるのだ。
さらに、学校教育の中で、防犯教育をもっと実戦的なものにしてほしいと思う。今回の場合も、一体どうして犯人の車に乗ってしまったのか、あるいは無理やり拉致されたのか、真相が明らかになってみないとわからないが、現実の事件を教材に、危険の可能性と回避策を、子供たちに直接教えてほしいと思う。
今回の事件を受けて、教育関係者や識者が、いろんなことを述べるだろう。けれど、必要なのは意見ではなく、行政が着実に防犯対策を進めることだと思う。子供を守るための予算を倍増するぐらいでも、まだ足りないのではなかろうか。


※筆者の過去記事
http://ameblo.jp/takashihara/entry-12063251273.html