スコットランド住民投票は、まさにロブ・ロイのようだった | 作家・土居豊の批評 その他の文章

スコットランド住民投票は、まさにロブ・ロイのようだった

スコットランド住民投票は、まさにロブ・ロイのようだった


※スコットランド住民投票は独立を否決、支持派が敗北認める
2014年 09月 19日 16:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0HE0E020140919



独立をかけて住民投票をやる、というのが、今時、あり得ないような無謀な試みなのは、いうまでもない。
しかし、そこをやってしまうのが、スコットランドらしい、と思うのだ。
結果は、もちろん、独立は否定されたわけだが、その行為自体に、一種の爽快感を覚えたのは、私だけだろうか。
今回のスコットランド独立投票は、まさに、ロマン主義そのものだ。
おそらく、結果は、みえていただろう。それでも、敗北するとわかっていて、運命的に突き進む行為は、正しく悲劇的であり、悲劇的な行為に人生を賭すのがロマン主義だからだ。
思えば、スコットランドといえば、ロマン主義の見事な実例ばかりだ。
古代のケルト文化への憧れから始まって、悲劇の女王メアリ・スチュアート、「ロブ・ロイ」として名高い義賊ロバート・ロイ・マグレガー、ロマン派詩人のジョン・キーツや、ウォルター・スコットなど、ロマン主義の代名詞的ビッグネームが並んでいる。さらに、『宝島』のロバート・ルイス・スティーブンソン、『シャーロック・ホームズ』のアーサー・コナン・ドイルも、スコットランド人だ。
ロマン派音楽の大家メンデルスゾーンは、「フィンガルの洞窟」「スコットランド交響曲」で、北方のロマン主義への憧れを名曲として残している。
思うに、今回のスコットランド独立投票は、まるで映画『ブレイブハート』や『ロブ・ロイ』のような、負けるとわかっていてなおも戦う気概を、現実にやってのけたようにみえるのだ。
その悲劇的な姿(失礼な言い方になってしまうが)からは、今の日本の閉塞的な情況の中で、他国のことながら、カタルシスを感じさせられた。
しばし、その感慨にふけりつつ、アバド指揮の「スコットランド交響曲」を聴きながら、我が身を省みたい。
しかしながら、付け加えたいのは、今回の住民投票には、「ロブ・ロイ」のように、大国をうまく利用して生き残る、したたかな勝負師の印象も垣間見えたように思うのだ。それが救いだろうと思う。

※メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」「スコットランド交響曲」
http://www.amazon.co.jp/メンデルスゾーン-交響曲全集-ロンドン交響楽団-アバド-クラウディオ/dp/B001NGSMJQ/ref=sr_1_2?s=music&ie=UTF8&qid=1411115945&sr=1-2&keywords=アバド+メンデルスゾーン

※映画「ロブ・ロイ」
http://www.amazon.co.jp/ロブ・ロイ-DVD-リーアム・ニーソン/dp/B00005EYPO

※スコットランドといえば、村上春樹も紀行文を書いています
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』村上春樹
http://www.amazon.co.jp/もし僕らのことばがウィスキーであったなら-新潮文庫-村上-春樹/dp/4101001510