柚希礼音会チケット出し
ペンライト

パレード写真の撮影はスポニチ

柚希礼音×夢咲ねねラストショー

5月10日に退団する星組トップコンビ、柚希礼音と夢咲ねねが、3月9日、本拠地宝塚大劇場でラストショーを行った。今回はこの模様を報告しよう。

在位6年、最近では和央ようか、花總まりコンビ以来の長期トップコンビで、人気もずば抜けていた2人の最後とあって、千秋楽のチケットも超プレミアムとなり、あいにくの雨の中、キャンセルチケットを求める人や、パレードの席取りなど、大劇場周辺は異様な熱気に包まれた。

午後1時から始まった公演は、いつもの通り「黒豹の如く」「Dear DIAMOND!!」と続いたが、舞台も客席もいつになくテンションが高く、ショーでは柚希、夢咲に加えて紅ゆずる、真風涼帆、礼真琴、綺咲愛里とのトリプルカップルが踊る場面で紅が「ちえさん大好き」といえば柚希が「星組最高!」と締めて大きな拍手に包まれた。

本公演終了、万里柚美組長が、柚希の初舞台から武道館までの懐かしい映像が映し出されるなか、幕前で柚希のファンにあてた手紙を代読。手紙は「バレエダンサーを夢見ていて宝塚のことを全く知らずに入ったことから挫折もあったが、宝塚を客観的に見ることができ、気が付いたら大好きになっていて、周囲のおかげでこれまでやってくることができた」といった内容、柚希らしい気持ちのこもった文章に客席もほっこりしたところでいよいよサヨナラショーの開幕。

緞帳が上がると大階段中央に「REON」の文字。ゴールドの衣装の柚希が板付で登場して、まずはトップ披露公演「大王四神記」の主題歌から。続いて「ロミオとジュリエット」の「世界の王」を紅はじめ星組全員に囲まれて歌うと、会場からは手拍子で応援だ。

下級生時代の曲をメドレーでつないだあと夢咲との初コンビ作「ブエノスアイレスの風」で夢咲登場。「ロミオとジュリエット」から舞踏会でのデュエット「天使の歌が聞こえる」のデュエットへとつながる心憎い構成。

続いて柚希は「めぐりあいは再び」の平井堅作曲による主題歌も披露。「スカーレット・ピンパーネル」「オーシャンズ11」と続いたところで「REON」の名場面からの再現で柚希一家がせり上がりで登場。父親役の紅、母親役の真風、兄役の如月蓮、そして本人役の壱城あずさの茶の間での涙と笑いのコントの前で柚希が歌うのはもちろん自作の「ちえちゃん」。これは泣かせた。
そして極めつけの「眠らない男ナポレオン」から主題歌を披露。ラストは武道館で歌った自作の「for good」。ブルーのペンライトが場内を埋め尽くす中、柚希も思わず涙ぐみながら熱唱、ゆっくりと幕をとじた。

ダンサー柚希というよりはシンガー柚希を強く印象付けたサヨナラショー。かつて「花の業平」新人公演で大抜擢されたのはいいが、舞台稽古で声がでず、演出の柴田侑宏氏か怒号をあびせられていたのがうそのようだ。以前この話を本人にしたら「先生方の辛抱強いお稽古のおかげです」と謙虚に語っていた。そんな柚希の人柄が全面的にでたさわやかなサヨナラショーでもあった。

最後のあいさつは同時に退団する逢月あかり、海隼人、鶴美舞夕、音花ゆりと続く。鶴美と音花には同期の月組トップ、龍真咲が花束をプレゼント。鶴美は感極まって嗚咽。しかし「宝塚で本気で生きる強さを学んだ。でも(大好きな宝塚に別れを告げるのは)寂しいです」とあいさつ、大きな拍手を浴びていた。
続いて夢咲の登場。「修学旅行のときに宝塚を初めて見て受験を決意したころを懐かしく思い出します。ないものだらけの私をここまで導いてくださった柚希さんに感謝です。本当にありがとうございました」と感謝の言葉でしめくくった。

そして柚希は、万里組長はじめ星組全員の「ちえさん!」の呼びかけに「はーい」と答え「タカラジェンヌを着たかった」とオーソドックスに紋付袴姿で登場。同期の十輝いりすから宝石をちりばめた豪華な胡蝶蘭の花束をプレゼントされ、「最高に幸せ」とあいさつ。「幸せすぎて心が震え、勝手に涙がこぼれる。究極の幸せです」とつづけ「一人で突っ走ったりしたり、いろんなことがあり、山あり谷ありでしたが、だからこそいまは誇らしい気持ちでいっぱい。5月10日の東京の最後まで柚希礼音を楽しみたい。よろしくお願い致します」と謙虚にしめくくり、総立ちになった客席は拍手の嵐。カーテンコールは計6回。「晴女だったのに雨がふって、みなさんお気をつけて帰ってください。パレードの出までには誰か雨をやませてください」とファンに懇願、最後まで笑顔でファンを気遣っていた。

会見のあとの花の道パレードには本降りの雨にも関わらずファン1万人(歌劇団調べ)が沿道を埋め尽くし、10年に1度といわれたビッグスターにふさわしい旅立ちとなった。雨の中1万人という数字はついぞ聞いたことがない。真飛聖のときが雨模様だったが出にはあがっていたがこんなに多くはなかったし、天海祐希とか姿月あさとがこれに近かったと思うが晴れていた。そういえば大地真央が雨の中のパレードだった。どこまでもビッグな柚希にふさわしい涙雨だったのかもしれない。

柚希は引き続きディナーショーのあと東京公演千秋楽の5月10日に退団。その後の予定はまだ発表されていない。

©宝塚歌劇支局プラス3月9日記 薮下哲司