薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

映画・演劇評論家の薮下哲司(元スポーツニッポン特別委員)が宝塚歌劇はもとより映画、演劇など幅広い分野のエンターテイメント情報をお伝えしていきます。

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   撮影:岸隆子

 

 

初演20周年!一路トート降臨「エリザベート」スペシャル・ガラ・コンサート開幕

 

「ベルばら」とともに宝塚歌劇の代名詞的ヒット作となったミュージカル「エリザベート」(小池修一郎潤色、演出)の初演から20周年を記念「エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート」(小池修一郎構成、演出、訳詩、中村一徳演出)が9日、梅田芸術劇場メインホールから開幕した。さまざまなバージョンがあるが初演の雪組出演メンバーを中心にしたモニュメントバージョンから始まった。今回はこの模様をお伝えしよう。

 

「エリザベート」初演は1996年2月。一路真輝のサヨナラ公演だった。ウィーンでは1992年に開幕。評判は早くから伝わっており、宝塚では小池氏が、涼風真世主演のバウホール公演「Lost Angel」(92年)ですでに「闇が広がる」や「キッチュ」といった楽曲を使用したぐらいだ(当時市販されたビデオからは著作権の関係で削除されている)。知る人ぞ知るミュージカルだったわけだが、その「エリザベート」を一路のサヨナラ公演として白羽の矢を立てたのは当時の雪組プロデューサーだった古沢真氏(現宝塚クリエイティブアーツ社長)だった。初日朝の舞台稽古が終わった時、前方中央でご覧になっていた作曲家のリーバイさんに印象を聞くと「オーケストラがよくやってくれた、君もそう思うだろう」と興奮した表情で話されたことを昨日のように思い出す。出演者に対するコメントを期待していたのでやや肩すかしだったが、日本語歌詞が分からないので、難しい楽曲をよくここまで演奏してくれたという賛辞だったのだと思う。楽屋袖で不安そうに「どうでしたか」と聞いてくれた一路には「ちょっと難しい作品なので万人向けではないけれど、最後に代表作が出来てよかったね」と答えたことを覚えている。このあとのことはさまざまなところでさまざまな話が伝えられているので省略するが、エリザベート20周年スペシャル・ガラ・コンサートの舞台は、そんなことを思い出しながら見ていた。

 

モニュメントバージョンは、開演アナウンス、指揮者のあいさつ、轟悠扮するルキーニが登場する初演のプロローグが映像で映し出されたあと、ルドヴィカ役の京三紗、グリュンネ役の飛鳥裕、黒天使役の五峰亜季、マダム・ヴォルフ役の美穂圭子の雪組初演の出演者で現在も宝塚歌劇団に在籍している4人と退団したマックス役の古代みず希とゾフィー役の朱未知留の6人が司会の久路あかりとともに登場。あいさつとともに思い出話を披露。二十年前と全く変わらない古代と今まさにゾフィーにふさわしい年齢になった朱のあでやかな美しさが印象的。

 

そのあとルドルフ(少年時代)役の安蘭けい、ルドルフ役の香寿たつき、ビデオ出演のルキーニ役の轟悠と続き、フランツ役の高嶺ふぶき、エリザベート役の花總まり、そしてトート役の一路が一人ずつ登場して輪に入り、それぞれの思い出話に花を咲かせた。安蘭が、新人公演でトートを演じたことから、毎公演、舞台袖から一路の舞台を見ていたエピソードや、ただでさえ大変な稽古に、代役稽古や新人公演の稽古が重なって大変だったこと、香寿が、組替えで東京公演には出ないことが分かっていたので代役がなく、出番が一幕の冒頭以外は二幕までないことから、みんなが忙しそうにしているなか、酸欠で倒れた生徒の介護係りをしていたことなどを明かすと、高嶺は20代から60代までのヒゲの早変わりで、肌が荒れ、口元にほくろが出来たことを明かすなど知られざる裏話が続出。しかし全員一様に、音どりと歌稽古が大変だったけれど充実していたと、その緊張した稽古風景を懐かしく思いだしていた。あまりの稽古の大変さに、稽古場の時計を1時間進めたが、演出の小池氏にばれた話も暴露、ついでに小池氏の結婚披露宴で雪組メンバーが「不幸のはじまり」を歌ったことも披露。「でも、あれを歌うと夫婦円満」と言われて、一路が「私の時にも歌ってもらえばよかった」と思わずもらして大爆笑。

 

一路は、とにかく必死で何も覚えていないというなか、ある日、銀橋からの出番で、待ち時間にオケのメンバーと雑談をしていて出遅れ、歌詞を間違えて、出演者全員に大迷惑をかけたことを20年ぶりに改めて謝罪。雪組メンバー全員が、間違えた一路の歌詞をとっさに歌い継ぎ、観客には間違いを悟られなかったのだという。カゲコーラスをしていた安蘭も「一路さんと同じ歌詞を歌いました」と話して笑いをさそっていた。一幕は久路の絶妙の司会で1時間余りそんなトークが続いた。

 

休憩をはさんで二部は、ソングナンバーを中心にしたコンサートで、まずは一路の「愛と死の輪舞」から。「パパみたいに」は20年前と全く変わらない花總と古代がデュエット。「双頭の鷲」出演中のため出られなかった轟のルキーニ部分は安蘭と香寿が交代で務めたが、この二人のルキーニが新鮮。特に香寿の「キッチュ」が楽しかった。

 

主要ナンバーの抜粋で、一路は「最後のダンス」 花總は「私だけに」 一路、香寿で「闇が広がる」 高嶺、花總の「夜のボート」などなど極め付けはもちろん、安蘭の「ママ、どこにいるの」 美穂の「マダム・ヴォルフのコレクション」など懐かしいシーンも再現、カーテンコールは全員がVサイン、まるで20年前にタイムスリップしたかのような同窓会コンサートだった。

 

一方、モニュメントバージョン上演に先立って、水夏希トートと姿月あさとトートのフルコスチュームバージョンの舞台稽古が公開された。姿月バージョンは、トートの姿月の歌唱力がさらに円熟味を増し、余裕たっぷりのトートに後光が差した。エリザベートは大鳥れい、フランツは樹里咲穂、ルキーニは湖月わたる、ルドルフは涼紫央、ゾフィーが出雲綾といった配役。いずれも在団中よりも肩の力が抜けて、舞台を楽しんでいる感じが見ていても心地いい。アンサンブルメンバーは全バージョン同じで全日程に出演するが、元宙組娘役トップの紫城るいがリヒテンシュタイン、「エリザベート」には縁がなかった歌姫、音花ゆりがヘレネ役、退団したばかりの蓮城まことがジュラ役など、興味深い配役で脇まで目が離せなかった。このほか龍真咲がエリザベートに初挑戦するバージョンや、各組メンバーが勢ぞろいするアニバーサリーバージョンなどがあり、ファンは忙しい週間になりそうだ。

 

会場は超満員、いずれにしても「エリザベート」が宝塚の珠玉の財産として存在しているという事実を強烈に印象付けたコンサートだった。今後もことあるごとに再演し続け、新たなスターを育てて行ってほしい。

 

コンサートは、大阪が18日まで。東京は来年1月8日から20日までオーチャードホールで。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月3日記 薮下哲司

 

 

 

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