心に残る、とてもよい小説を読んだ。
デイヴィッド・ロブレスキーというアメリカの作家が2008年に発表したデビュー作で、『エドガー・ソーテル物語』(HNK出版、金原瑞人訳)だ。
ひとことでいえば、犬と家族と人間の壮大で哀切な物語といえるだろう。
アメリカをはじめとした世界25カ国で出版されて、ベストセラーになっている。
ところで、小説の魂というものがあるとしたら、何だろう?
読み手の心にぐっと迫ってくる、何かだ。
ストーリーのおもしろさ、予想もつかない展開、ため息の出るような読後感など、いろいろ考えられる。
でも、いちばん大切な要素といえば、やっぱり共感だろう。
共感とはつまり、その世界に読者の心がずっぽりと浸かってしまうことだ。
そんな状態のとき、読者は小説を読んでいるのだという現実を忘れてしまう。
心は、物語のなかにすっかり取り込まれてしまっているからだ。
そこでは、紛れもない人生体験をしているといってもいいかもしれない。
そこでふと、へんなことを考えた。
いま、こうしていろいろなことを体験しながら、現実の世界で生きているぼくたちひとりひとりは、もしかしたら、だれかが書いた小説のなかで生きている登場人物のひとりなのかもしれない。
書いているだれかというのは、例えば宇宙を創ったもの、時間、神といってもいい。
地球を舞台にした超大河小説だ。
ただし、その小説は、最後まで書き上げられているわけじゃない。
現在執筆中、である。
だから、物語が今後どのような展開をみせていくかは、作者の筆まかせというわけだ。
タイトル? 『地球と人間物語』かな。