社会保障・ベーシックインカムは労働意欲を低下させるか?
社会保障も国防も十分議論されないまま参議院選も終盤に入っています。盛り上がらないなぁ・・・
そうは言っても期日前投票で数年ぶりに参政してきました。投票の仕方がわからず、どきどきしたわ。
そんな中、社会保障についてはベーシックインカム(BI)が最も良いと考えると数日前にも書きました。BIとは、①すべての国民個人に対して②無条件で③生活に必要な最低額を支給する制度です。
今朝の日経新聞『経済教室』には、同志社大学の山森亮教授がBIについてわかりやすく解説しているので、詳しくはそちらをお読みいただくとして。
BIが良いのではないかと言うと、必ず帰ってくるのが「そんなことをしたら労働意欲が低下して経済が落ち込む」という主張です。
こういうことをいう人は労働の本質を知らない人です。その後にもご丁寧に「働かざる者食うべからずというではないか。」と言うのです。
こういう人は新約聖書の愛読者かレーニンの信奉者です。(それらにはそう書かれているから間違いありません)
今たまたま読んでいた『構造・神話・労働』(レヴィ・ストロース日本公演集・みずず書房刊)の中で、フランスの民族学者レヴィ・ストロースはこう述べています。
ユダヤ・キリスト教的視点からみると、労働とは人間が神との接触を失ったために額に汗して自らのパンを稼がねばならぬという一種の「罰」なのです。
ところが日本では逆に、労働を通じて神との接触が成り立ち、維持され、保ち続けられるのですね。
この本は1977年にレヴィ・ストローズが来日した時の講演やシンポジウムをまとめたものなので、現代から見ると、当日まだ日本人にもそういう感覚が残っていたのかとさえ思えます。
が、このように単に商品としての労働ではない、労働が持つそれ以外の性質にも注目しなければいけません。
BIが実現すると食うための労働ではない面が現れてくるので、毎日定時まであるいは無理して残業して働かなくてもよくなり、清掃業や接客業など辛い仕事の時給が上がります。(実際今起こっていることは、それに近いことが起こっています。人手不足でそうした業種の時給が上がっている)
自民党が参院選前に行った「高齢者限定の現金5万円支給」や古くは民主党時代の「子供手当」など、BIに近い政策は受け入れられています。
最近はヘリコプターマネーの導入も真剣に議論されるなか、いよいよBIの登場が近づいてきたという感じですね。
ちなみに今回の選挙でBIを公約にしているのは生活の党のみ。おおさか維新の会から立候補している田中康夫は、以前国政選挙に立候補したとき、BIを公約にしていたはずですが、今回はさっぱり。(国政選挙でBIを公約にした最初の候補者だったはずですが。)