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『世界の歴史はイギリスから動く①』三橋貴明 AJER2016.10.25
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今回のアメリカ大統領選挙では、トランプの、
「アメリカ政府の通商政策がグローバル化を促進させ、米国の製造業の雇用を失わせた」
との主張が支持されました。16年6月29日、トランプはペンシルベニア州で演説した際に、グローバル化を批判すると同時に、
「我々の政治家は積極的にグローバル化の政策を追求し、我々の雇用や富や工場をメキシコと海外に移転させている」
「グローバル化が金融エリートを作り出し、その寄付によって政治家はものすごく裕福になった。私もかつてはその1人だった」
と、発言しました。
『NAFTA・TPP・中国 トランプ新政権、まずは通商政策を刷新
http://www.cnn.co.jp/usa/35092275.html
ワシントン(CNN) 米次期大統領ドナルド・トランプ氏は来年1月20日の就任当日から、米国の通商政策の刷新に着手する考えであることが16日までに分かった。CNNは、政権移行チームが政策の主要5原則について起草した文書を入手した。
文書はトランプ大統領就任から200日までの通商政策の骨子についてまとめたもので、北米自由貿易協定(NAFTA)からの撤退または再交渉など、トランプ氏が選挙運動中に打ち出した公約に基づく重点課題に照準を当てている。
ただしこの文書の内容は「論議のみを目的とする」と明記され、就任までに大幅に変わる可能性もあると記されている。それでも移行チームが公約をもとに、トランプ政権の青写真として描いた政策の内容が明らかになった。
「トランプ氏の通商計画では、共和、民主両党のグローバル主義者と決別する」と文書では明記。「トランプ政権は長年にわたった融和的な通商政策を覆す。新しい貿易協定は、米国の労働者と企業の利益を第一とすることを前提に交渉を行う」とした。(後略)』
典型的なので、NAFTA(北米貿易協定)によるアメリカとメキシコの関係について考えてみたいと思います。
NAFTAにより、米墨間ではモノ、ヒト、カネの移動が自由化されました。結果、何が起きたのか。
モノの移動が自由化されたことで、アメリカ産の「安い小麦」がメキシコに雪崩れ込み、メキシコの小麦農家を次々に廃業に追い込んでいきました。
ヒトの移動が自由化されたため、廃業したメキシコの小麦農家は、陸続と米墨国境を越え、北に向かいます。安価な労働力を望むアメリカの企業(特に中小企業、地場企業)の経営者は、メキシコ人労働者をむしろ歓迎しました。
さらに、カネの移動が自由化されたことを受け、ペンシルベニアやミシガンなど、まさに今回の大統領選でトランプが引っ繰り返した五大湖周辺のラストベルト(錆び付いた地帯)を中心に、工場がメキシコへと移転していきました。
メキシコに移ったアメリカ系企業は、安い労働力を使い、製品を生産。安価な製品が、アメリカに逆輸入されていきます。
結果、ステークホルダー(関係者)は、
●勝ち組:アメリカの穀物メジャー、アメリカの企業経営者、それらの企業に投資をしている投資家、そしてアメリカの消費者(製品を安く変えるため)
●負け組:アメリカの製造業を中心とする労働者、メキシコの小麦農家
と、勝ち組、負け組に分かれました。
グローバリズムに基づく国際協定(NAFTA)で、企業や人々が「自由に競争」した結果、勝ち組と負け組に分かれた。負け組は自己責任でしょ。
という話なのでしょうが、現実にはそれでは済まないのです。
トランプの今回の選挙戦は、アメリカの負け組のルサンチマンに訴えかけ、メキシコや大企業、グローバル投資家への憎悪を煽るスタイルでした。そういう意味で、藤井聡先生が指摘されている通り、確かに全体主義的です。
とはいえ、これまた藤井先生が書いていらっしゃいますが、その手の全体主義を一気に支持を拡大させてしまったのは、明らかにグローバリズムなのです。
グローバリズムは、国内の所得格差等を悪化させ、全体主義をもたらす。特に、グローバリズム+デフレーションとなると、最悪です。どこの国のことを言いたいのか、書くだけ野暮でございますが。
全体主義的な国家を望まないならば、早期にデフレから脱却し、グローバリズムを「制限」する必要があるというのが、今回のアメリカ大統領選挙から読み取れるのです。
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