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『三つの対立(後編)③』三橋貴明 AJER2014.4.15(3)

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【連載】三橋貴明の第2次所得倍増計画
【第11
回】第五章 中小企業対策の骨格―都市と地方の所得格差を埋める(前編)
~最強の経済リソース保有国日本に、安倍政権は間違えた労働政策をとるのか!~
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39132


 スウェーデンに来ています! とは言え、本格的な活動開始は明日からなのですが。
 さて、スウェーデンといえば、もちろん「移民問題」が深刻になっているわけですが、経済的にはもう一つ、重大な問題を抱えています。すなわち、デフレ化です。


ノーベル賞経済学者「スウェーデンは日本になってしまった」 欧米諸国は日本を反面教師として学べ
http://newsphere.jp/economy/20140501-5/
 欧米諸国がデフレスパイラルに陥る危険が懸念されており、「次の日本となる」可能性が指摘されている。
 デフレの危機が論じられる際に、日本経済が度々引合いに出される。その背景には何があるのか。
【脆弱な金融部門と人口の高齢化】
 特に、EU諸国の陥っている状態が1990年代の日本と似ている、と4月29日付のフォーブス誌は指摘している。EU諸国は、2008年のリーマンショック以来金融部門が脆弱化し、人口の高齢化と出産率の減少といった問題にも直面している。大量の不良債権にあえぐ金融部門、人口高齢化と出産率低下等の問題を抱えていた1990年代の日本と重なる。
 デフレに悩まされた日本と同じく、EUのインフレ率は5年間で最低の0.5%に下落し、ECBの目標率2%を大きく下回っている。
【積極財政に及び腰】
 金融政策の失敗も相似点として挙げられる。ノーベル賞経済学賞受賞者である米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、4月20日付のニューヨーク・タイムズ紙のコラムで、スウェーデンが「日本になってしまった」と述べた
 2010年当時、経済危機に対処する模範として仰がれていたスウェーデンは、先進国の中でも非常に好調な景気に浴していた。しかし、高失業率と低インフレ率にもかかわらず、中央銀行は金利の引き締めを決定した。金利上昇後まもなく、スウェーデンの失業率は悪化し始め、デフレも始まった。
 1990年の不景気の際、日本の政策は、小さすぎ、遅すぎ、一貫性が無さ過ぎたため、デフレが長引いた、とクルーグマン教授はニューヨーク・タイムズ紙の別のコラムで指摘している。経済回復のスターだったスウェーデンも、拙い政策の結果、日本になってしまったのだ。
【「日本とは違う」】
 クルーグマン教授のコラムに対して、スウェーデン中央銀行当局者は、4月28日付の同紙の別の記事を通じて反論した。スウェーデンは不景気ではなく、雇用も増加している。2013年、スウェーデンの国内総生産は1.5%の成長を記録した(第四半期は3.1%の増加)。低インフレではあるが、「日本のように世帯が消費を後回しにする兆候はない」と主張した。
 デフレ型不況の反面教師となってきた日本だが、アベノミクスの旗印の下、積極財政にシフトし、インフレ率の上昇も見られている。デフレから脱却し経済回復に成功するなら、日本は世界各国のロールモデルになれるかもしれない。』


 ポール・クルーグマン教授の発言通り、現在のスウェーデン経済は「デフレ化」しています。というわけで、例によりグラフで見てみましょう。


【スウェーデンのインフレ率の推移(対前年比%)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_46.html#SedInf


 スウェーデンのインフレ率はリーマンショックを契機に下落を開始し、14年3月にはついに0%を下回ってしまいました。消費者物価指数でみた場合、スウェーデンは日本よりもインフレ率が低いのです。


 スウェーデンの日本化というか「デフレ化」が特徴的なのは、一時的に大規模な金融緩和を行い、リーマンショックの衝撃を巧く「回避」したにもかかわらず、結局はデフレ化してしまったことです。リーマンショックを受け、スウェーデン中央銀行はバランスシートを三倍にまで膨らます大規模金融緩和を実施し、インフレ率は09年、10年と、2%弱と比較的健全な水準で推移していました。


 とは言え、スウェーデンもやはり不動産バブルの崩壊局面を迎えています。スウェーデンの住宅価格は05年時と比べ、何と70%も高騰しているのです。スウェーデンは別に人口大国というわけではないため、これ以上の住宅価格上昇は、少なくとも短期的には見込めません。


 それにしても、スウェーデン中央銀行の、
「スウェーデンは不景気ではなく、雇用も増加している」
 は、さすがに無理があり、現在の同国の失業率は8.1%と「高止まり」の状況が続いています
 と言いますか、失業率が8%を超えている状況でありながら、スウェーデンは相変わらず「移民」に寛容(?)な政策を継続しています。すでに、同国人口の約15%は外国生まれで、コペンハーゲンの向かいにあるマルメでは、人口の30%が外国移民。11%が移民の子孫になっているのです。すなわち、マルメ市の人口の四割は移民という話になります。


 日本や台湾、スウェーデンなどの事例を研究すると、「外国移民(もしくは外国人労働者)」「デフレ」「実質賃金」「工場の外国移転」「少子化」などが密接に関係していることが分かるのです。


 ちなみに、スウェーデンの合計特殊出生率は、1999年に1.5と最低となり、2010年には1.98にまで急回復しています。とはいえ、何しろ「外国移民」の出生率は、元々のスウェーデン国民の三倍です。


「合計特殊出生率が回復したといっても、多産の外国移民が増えただけじゃないの?
 という、疑問を持たざるを得ないわけです(同じ疑念はフランスにもあります)。


 というわけで、三橋は現在、各国で取材を敢行し、統計を調べ、徳間書店から出版予定の「移民亡国論(仮)」の執筆に取り掛かっているわけでございます。


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