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『G0.5(前編)①』三橋貴明 AJER2014.3.11(5)
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久しぶりに直球的な日本経済論。いや、日本の「国民経済論」。
『甘利大臣 思い切った賃上げを
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015882751000.html
甘利経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、GDP=国内総生産が改定値で下方修正されたことに関連して、経済の好循環の実現には賃上げが欠かせないとして、経済界に対し、春闘でベースアップに応じるなど思い切った賃上げに踏み出すよう改めて求める考えを示しました。
10日発表された去年10月から12月までのGDPの改定値では、伸び率が実質で年率プラス0.7%となり、先月の速報段階から0.3ポイント下方修正されました。
これに関連して、甘利経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、「駆け込み需要が含まれていることを考えると、若干弱含んでいるが、全体としてはよい方向に向かっている。企業に経済の好循環をしっかり回していくという認識を持ってもらうことが大事で、そのためにも賃金にしっかり反映させてほしい」と述べ、経済の好循環には賃上げが欠かせないという考えを強調しました。
そのうえで、甘利大臣は「政府は賃上げの環境整備のため、法人税の減税を前倒しして原資を渡している。利益が上がっているにもかかわらず、なんの対応もしない企業は、経済の好循環に非協力的だということで、経済産業省からなんらかの対応があると思う」と述べ、経済界に対し、春闘でベースアップに応じるなど思い切った賃上げに踏み出すよう改めて求める考えを示しました。』
「政府は賃上げの環境整備のため、法人税の減税を前倒しして原資を渡している。利益が上がっているにもかかわらず、なんの対応もしない企業は、経済の好循環に非協力的だということで、経済産業省からなんらかの対応があると思う」
あの~、いつから日本は賃金を政府が統制し、官僚が「対応」するような共産独裁国家というか、統制経済国家になったのでしょう・・・?
という皮肉は置いておいて、政府が法人税を減税してくれたところで、企業側にそれを人件費に回す「義務」があるわけではありません。株主の配当金に回してもいいですし、内部留保として貯めこんでもいいですし、海外投資に回しても構わないのです。まさに「市場」主義に基づいて、企業は政府が法人税減税という形でプレゼントしてくれたお金を、「利益拡大」(あるいは預金)のために使います。
政府が法人税減税により「賃上げ」や「国内への設備投資」を期待したところで、企業側にそれに応える義務はありません。国境を越えた資本移動が自由化されている以上、なおさらです。
だからこそ、
「法人税減税は設備投資減税と賃上げ減税に限定するべし」
と訴えてきたわけで、一応、政府は設備投資減税や賃上げ減税もやりますが、無条件の法人税減税も実施します。
「無条件」の法人税減税は、特にデフレ期には国内投資にも賃金にも回らないから、止めるべき。
と、繰り返してきたわけですが、甘利大臣の口ぶりを見ると、本当に、
「法人税を減税すれば、企業が賃金を上げてくれるはず」
という認識をお持ちだったようでございますね。一体、何を根拠にそんな風に思ったのかわかりませんが、生き馬の目を抜くように仕事をしている経営者(一応、わたくしも経営者)が、自社の利益以外をそんな真剣に考えるはずがありません。好景気で余裕があればともかく、デフレ期には絶対に無理です。(まあ、みんながそんなことを言ってお金を使わないので、デフレなのですが)
資本主義国で、企業が「自社のこと」だけを考えて動くのは当然です。みんな生き残りに必死で、「社会全体」のことなど考えている暇はありません。
だからこそ、政府というものがあるわけです。
甘利大臣の言い方からすると、何となく経済産業省の官僚から、
「大臣。法人税を無条件で引き下げれば、企業は賃上げをしてくれますよ」
と、吹き込まれていたように思えます。(だからこそ「経済産業省が対応」と付け加えたように思えるのです)
とはいえ、経済産業省の「グローバリズム」に染まった官僚たちにしてみれば、
「法人税を無条件で引き下げ、結果的に賃金が上がらなかったならば、それは市場がそう判断したということで、正しい」
という認識になるのです。基本的に、グローバリズムに染まった官僚、あるいは市場原理主義の思考の枠組みを持つ人にしてみれば、現状は追認されるのです。なぜならば、市場がそれを選んだのだから。
特に、法人税減税という「規制緩和(徴税も規制の一種)」をした以上、いかなる結果になっても、「市場」が機能した結果であるわけで、正しいのです(本当に、彼らはそのように考えます)。
とはいえ、そうなると「企業の利益」と「国民経済の利益」との乖離を埋める手段がなくなってしまいます。結果的に「国民の安全保障強化」や「デフレーション脱却」といった課題は達成できません。
「政府は国民全体を豊かにする経世済民を目指す」
「企業は自社の利益拡大を目指す」
上記は、ごくごく当たり前の話だと思うわけですが、今後の安倍政権は(特に来月以降)、「こんなはずではなかった」というケースに相次いで遭遇することになると思います。その時点で「経世済民」の基本精神に戻り、軌道修正をかけていけるかどうかにより、安倍政権が長期政権になるか、あるいはレームダック化するかが決まるでしょう。
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◇日本経済復活の会
積極財政による日本経済復活を目指して活動をしているボランティアグループです。
Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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