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『ドイツのユーロ(後編)①』三橋貴明 AJER2013.4.16(1)

http://youtu.be/EfAWKK9ulaE

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 わたくしが本ブログや著作などで頻繁に外国(米欧中韓)を取り上げる理由は、現在の日本が抱えているのと同じ問題を抱えつつあるためです。すなわち、バブル崩壊とデフレ化、さらには「ドグマ(教義)としての緊縮財政」「ドグマとしての構造改革」により、国民経済が出口をふさがれていくという問題です。


 多くの日本国民が理解していないでしょうが、緊縮財政(増税、公共事業削減、公務員削減、公務員給与削減、社会保障支出削減など)と構造改革(規制緩和、民営化、自由貿易など)は、本来は政策としてワンパッケージです。すなわち、「小さな政府化」を目指すのが緊縮財政、構造改革なのです。一言でいえば、「改革」でございますね。


 インフレ対策としての両者には、差異があります。緊縮財政が需要(名目GDP)を縮小することでインフレギャップを埋めるのに対し、構造改革は供給能力(潜在GDP)を拡大することでインフレギャップ縮小を目指します。規制緩和にせよ、民営化にせよ、あるいは自由貿易にせよ、政府の規制(要は法律)という「枠」を撤廃、緩和することで、「新規参入」を増やし、潜在GDPを引き上げ、インフレ率抑制を目指します。


 先日、スペインが現状を打開するために「若者の起業促進」といった政策を打ち出すことについて、「状況を悪化させる」と批判しました。現在のスペインが抱えている問題は、インフレギャップ拡大ではなくバブル崩壊とデフレ化の危機です。デフレギャップ状態に陥りそうな国が、
「政府の規制を緩和し、若者が起業しやすい環境を創る」
 などとやったところで、巧くいったとしても潜在GDPが拡大し、インフレギャップが縮小もしくはデフレギャップが拡大します。現在のスペインに求められている施策は「政府による雇用創出」これ以外にはないのですが、ユーロ圏全体が「緊縮のドグマ(教義)」に染められてしまっており、緊縮財政的な政策(財政赤字の強制的な削減など)は何とか先延ばしにしましたが、構造改革路線を改めることはできません。


 結果的に、ついにスペインの失業率までもが27%を上回ってしまったわけです。
 
【インフレギャップとデフレギャップ】
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_42.html#DGAP


 インフレ抑制策として見れば、緊縮財政も構造改革も目指すところは同じです。そのため、構造改革が緊縮財政を内包しているケースもあります(中野剛志氏の著作ではそうなっていることが多いと思います)。日本の構造改革主義者が、
プライマリーバランスの黒字化を
 と叫ぶのをよく耳にしますが、プライマリーバランスの黒字化とは「デフレ期」ではなく「インフレ期」に適した政策です。ところが、彼らはインフレ、デフレ無関係に「政府の財政黒字」を求めます。結果、日本ではデフレ期の緊縮財政が強行され、状況を悪化させることを続けてきました。現在のアメリカや欧州は、周回遅れで日本の後を追いかけています。


 構造改革主義者たちが「常に」プライマリーバランス黒字化やら、規制緩和やら、民営化やら、自由貿易やらを主張するのは、「小さな政府」がドグマになってしまっているためです。


 お分かりでしょうが、わたくしは別に政策としての緊縮財政や構造改革について、否定していません。インフレ抑制策としては、まことに結構でございますね。でも、今はデフレ期でしょ? と、言っているに過ぎないのです。


 緊縮財政、構造改革、そして「小さな政府のドグマ」は、まさに世界を席巻してきましたが、どうやら終わりが始まりつつあるようです。日本もそうですが、最も悲惨な目に会っているユーロ圏で大きな動きがありました。


フランス:緊縮の時代は幕閉じる-柔軟性容認のドイツと温度差
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MMCZQ66K50XW01.html
 フランスのモスコビシ財務相は財政緊縮の時代が幕を閉じたと宣言した。それに先立ちドイツのショイブレ財務相は財政赤字削減について柔軟性を持たせることを提案しており、こうした解釈は新たに両国の対立を招く火種となりそうだ。
 モスコビシ財務相は5日、仏ヨーロッパ1ラジオの番組で、欧州の債務危機に対処する唯一の手段としての「緊縮のドグマの終わりを目の当たりにしつつある」と発言。「われわれは成長促進策を1年にわたって弁護してきた。緊縮それ自体が成長を阻害する」と述べた。 (後略)』


 まあ、財務大臣が、
「緊縮財政の時代は幕を閉じた」
「緊縮のドグマの終わりを目の当たりにしつつある」
 と宣言したところで、そう簡単にユーロ圏で「緊縮のドグマ」が終わることはないのですが(「ユーロ」という構造問題があるため)、少なくとも方向的には極めて真っ当です。


 フランスが本気で「経済成長」「雇用改善」そして「(成長による)財政改善」を目指すのならば、結局はユーロに留まり続けることは困難になります。何しろ、経済成長のためには財政政策に加え金融政策の自由も必須なのです。金利一つ見ても、現在のユーロ圏の金利水準は南欧諸国やアイルランドにとっては高過ぎるにも関わらず、ドイツにとっては低いです。結果、ECBは金利引き下げ派と引締め派との間で板挟みになります。(一応、ECBのドラギ総裁は「必要であれば金融政策当局者は追加利下げを実施する用意がある」と述べています)


 ユーロ加盟国の場合、ユーロに加盟し続ける限り、緊縮のドグマ、構造改革のドグマ、「小さな政府」のドグマから完全に抜け出し、政策目標を「デフレ期の正しい目標(雇用改善と所得拡大)」に向けることはできません。とはいえ、日本はそうではないのです


 問題は、日本では国内の「言論空間」がユーロ圏以上に長期間、小さな政府のドグマで染められてしまっているという点です。結果的に、政治家までもが何となく、
「経済成長は必要だが、緊縮も同時にやらなければ・・・・」
「デフレ脱却するのは当然として、構造改革も合わせてやらねば将来の成長が・・・・・」
 と、何となく自分に言い訳するように「デフレ対策」を口にするわけです。以前の政府は、そもそもデフレ対策を打とうとしなかったため、これでも相当に状況は改善されたのですが、未だ「言論空間」における戦いは終わっていません。


 日本の言論空間で「緊縮のドグマ」「構造改革のドグマ」「小さな政府のドグマ」を打ち払えるかどうか。この勝負の結果が、日本はもちろんのこと世界の歴史をも大きく変えることになります。改めて考えてみると、本当に凄い時代です。


 明日に続きます。


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