「ドル崩壊!」監修者でいらっしゃる、代表戸締役様のブログ等をご覧になっている方であればご存知かと思いますが、現在、東京市場を除く世界各国のインターバンク(銀行間融資市場)が「際どいフェーズ」(日経ビジネスオンラインより)に差し掛かっています。具体的にはOIS(政策金利に近い金利)とLIBORのスプレッド(金利差)が広がったまま、つまり銀行間の疑心暗鬼が継続したままの状況が続いているのです。
 今年の6月のスプレッドは、ドル、ユーロ、ポンド共に0.6から0.8%となっており、平常時(0.03から0.1%程度)と比べて異常値と言ってよい水準を推移しています。銀行間が疑心暗鬼になっているとは、要は各銀行同士がお互いの財務内容に対し、不安を抱く状態になっていることを意味しています。
 この各国インターバンクの現況に加え、比較的サブプライムローン問題に端を発した金融危機の影響が少ないこともあり、唯一東京市場だけが健全性を保っており(それでも、スプレッドは平常時よりは高いです)、世界中の銀行が東京市場でお金を借りる状況に至っています。
 本日の日経に、これに関連した記事が載っていましたので、ご紹介しましょう。

日本経済新聞 2008年7月23日四面「東京外為市場25%増」4月取引高
 東京外国為替市場の売買が伸びている。日銀や民間金融機関で作る東京外国為替市場委員会が二十二日に発表した調査によると、2008年4月の取引高は3025億ドル(一日平均)で、前年同月より25.8%増えた。欧米で金融混乱が長引く中で、相対的に市場が安定している東京での資金調達が膨らんだことなどが背景にある。
 調査は06年から毎年一回、四月に実施しており、今回で三回目。日銀が国内外二十二の金融機関から情報を収集してまとめた。
 
 欧米混乱で調達拡大

 欧米市場の四月調査結果が出ていないため単純に比較できないが、昨年十月調査ではロンドンの取引高(一日平均)は昨年四月と比べ7.3%増の1兆3340億ドル、ニューヨークは15.5%増の6519億ドル。東京は規模ではなお大きく水をあけられているが、伸びは上回った。
 海外の金融機関が日本で円建外債(サムライ債)を相次ぎ発行するなど、日本で資金を調達する動きが拡大。海外勢の需要を映し、ドルとユーロ、英ポンドなどの取引も、円との取引以上に伸びた。
 新興国通貨の売買も着実に増えた。タイバーツは二倍、南アフリカランドは74%増、ブラジルレアルは24倍に達した。』

 どうでもいいがロンドンの取引高、イギリスのGDPの割りに巨額すぎだろ、という感想は置いておいて、世界各国の銀行が東京で資金調達を活発に行っている影響で、困った事態が生じています。そう、海外の銀行が東京で資金を調達するせいで、円安、は言いすぎですね、「円高が押さえつけられている」現象が起きているのです。特に、ユーロなど典型です。
 要は、地元のインターバンクで資金調達ができなくなった銀行が、こぞって東京で資金を調達し、円を外貨(ドル、ユーロなど)に両替するため、ファンダメンタルは明らかに円高傾向なのに、そちらになかなか進んでくれないのです。
 だからと言って、東京市場までおかしくなってしまうと、世界中が大変なことになってしまいます。これはこれで仕方がないとは思いますが、東京市場が健全ゆえに通貨が安くなる(高くならない)という、極めて珍しい環境になっているのです。
 健全さのジレンマ、というわけです。

 なぜ本日この話題を取り上げたかと言えば、最近のユーロが対日本円で最高値を更新しようとしており、またぞろ物事の一面しか見れない日本メディアや似非経済評論家が、「投資家は欧州こそ今後の世界経済の中心と認識している。ユーロこそ次の基軸通貨を担う可能性がある通貨だ。日本は欧州に比べて駄目駄目なので、ユーロは対日本円で高騰を続けるのだ」などと、トンデモ論を撒き散らし始める時期と考えているからです。
 昨年まで日本円は対ドルで下げていましたが、その原因もやはり低金利の日本円が海外金融機関に借りられ、大量に日本から資本が流れ出ていた、つまりは円キャリートレード、あるいは資本収支赤字要因によるものでした。ところがその時期に、日本円の下落に狂喜したNHKが、「日本は少子化で国力が衰退するので、通貨が下げている」などというトンデモ論の特集をしたのです。
 それを裏付けるために(まともな経済学者がそんなトンデモ論に同意してくれるはずがないので)、NHKはイタリアの無名の経済学者(?)を引っ張り出してきて、このトンデモ論に同意させるという、恥ずかしい小細工まで行いました。韓国経済の論評をするのに、わたしを引っ張り出す以上にミスマッチ、とでも言えば、馬鹿馬鹿しさの一端が伝わるでしょうか?
 愚劣です、ひたすらに。その後、円高に触れましたが、NHKは別に「日本の国力が上がった」とか特集組んだわけではありません。
 ですが、これまでメディアの出鱈目な報道を、素直に受け止めていた日本国民にも責任の一端はあるのだと思います。これがエリート社会の欧米ならば、社会の上層部を形成するエリートたちが、当然ながらマスコミも支配しており、こんなトンデモ論が蔓延る余地はありません。(あ、中国もそうですね、ある意味)
 しかし幸か不幸か日本はエリート社会ではなく、真の意味での大衆社会です。際立って頭の切れるエリート階級、支配階級が存在しない代わりに、一般大衆の知性レベルが(他国に比べて)半端なく高い国なのです。
 メディアで働く人々の方が、一般大衆よりも情報不足という国は、あまり聞いたことがありません。前にも書きましたが、メディアの人々の知性が劣るとは言いません。レベルが低いのは間違いありませんが、単に情報を吟味、分析する時間が不足しているだけで、個人個人の頭の良さは我々と同等です。つまり、普通の日本人レベルです。
 これまでは「普通の日本人」が「異常な政治的意図」の下に、様々なプロパガンダ、ミスリードを垂れ流していたのが、明確な日本メディアの特徴でした。しかし、インターネットや各種のチャネルの出現により、この構造が崩れつつあるのが現代の日本なわけです。

 この話、明日も続きます。

人気ブログランキングに参加してみました。
 日本が大好き!な方は、↓このリンクをクリックを。
http://blog.with2.net/in.php?636493  

 新世紀のビッグブラザーへ ホームページは↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm
 新世紀のビッグブラザーへ blog一覧は↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/blog.html