先週の広島での終演後のファンの人達との飲み会で、ストリップを長く観ている方から

「踊り子というのはね、辞める時は“飛ぶ”方が楽なのですよ」

ということを語っていた。

「それは今まで応援してきたファンに失礼ですね。例え事後報告でもするべきではないか」

と私は反論した。詳しく聞けば

「それぞれの劇場での別れが辛い」

とのことであった。引退発表があり、そこまでの期間が長ければ地元でしか行けない根強いファンとの別れが各劇場で続いていく。それが精神的に大いに堪えるということであった。


以前、ある踊り子から

「私、引退興行をやらないから」

と言われたことがある。

「そんなんあかんで」

と私は申し上げたが

「絶対にしないし、何も言わずに辞めるよ」

「最後に挨拶して、オープンショーで終わるもんやで。盆にキスして引退しようや」

「絶対やだ」

と笑いながら、言い返された。


昨年引退されたHIKARUさんは、引退興行の間それぞれの劇場で泣き崩れていたと聞いた。引退興行など、踊り子のためなのではなく、まさに客のためのものなのかもしれない。

中学以降、自分の写真すらほとんど撮ったことは無く、学生時代に数度プリクラを撮ったぐらいで、劇場通いをすると急に写真の数が増え続けていった。出会った頃のポラロイド写真を見返すと、何か思い出すかもしれないと、たまりすぎたポラアルバムの中から探した。

20101結に私は晃生に行っている。この時、晃生へは半年ぶりで2度目である。

東大阪の下町の小綺麗とは言い難い劇場で、休日のギュウギュウに詰め込められた男達のムアっとした酸っぱい匂いが立ち込めるような場内で、この時初めて悠那ちゃんと出会った。良い匂い香りが立ち、瞳の大きくてスタイルの良い踊り子であった。

その時に私は「アラジン」という演目を観た。

本舞台いっぱいの天蓋カーテンの中で、顔の半分を白いベールで隠し、頭にはターバン。スモークが焚かれ幻想的な空間であった。アラジンのランプを手に持ち、激しく踊っていた。汗まみれになりながら、盆でのオナベッド。すぐに私は虜になる。そして長きに渡りスト観劇の要の踊り子となっていった。

その時のポラでは私が

「はじめまして」と言ったのか、

「初ストリップおめでとう」書いてある。

何故だがこの時の方がポラコメントがしっかりしているのは気のせいか(笑)。そこにはピンク色のポスカで「また、一緒に撮ろうね」とも書いてある。

当時の私は30代前半で、今よりも10kg近く醜く肥えており、顔はパンパンで、一方で悠那ちゃんは、流行っていたのか細い眉をしている。美醜の感覚が鈍い人でも、あまりにも酷い私のポラ写りに「美女と野獣」とはまさにこの事を言うのでないかとさえ思え、私の顔は悠那の2倍くらいある(笑)。撮り慣れていないというよりも、今後もあまり見返したくはない(笑)。

いつしか私はどんな踊り子でさえ、ツーショットを撮らなくなっていった。どう見ても「美女と野獣」になるので、嫌悪を抱くのと同時に、アナウンスされる「記念にどうぞ」というのにやや違和感を覚えていたのかもしれない。ゆえに合ポラなども数枚しかない。「記念」なら良いのであった。いつしか踊り子の写真を撮る行為そのものが「応援」に変わる。レアなチームショーなんかは、どう考えても「記念」になりかけていたのであるが、それでも撮らなくなった。その年の5月に来た時は、もうツーショットを撮っていないので、この頃から「記念」で私は撮らなくなっていった。

実に6年半ぶりにツーショットを撮った。引退週とならば、それは「記念」となっても良いであろう。時は過ぎ、ポラロイドがデジタルに変わると、焼き上がったデジ写真というのは酷なもので、かつてのポラのような出来上がりの悪さというある意味良い点が無くなり、痩せた私は豊麗線がはっきりと浮かび上がり老けて見え、一方で悠那ちゃんはやや太い眉に変わり、よりいい女になっている。6年半の歳月がかかっても、それは「美女と野獣」であるのにはなんら変わりはなかった。

私はよく聞く“ステージが固まっていない”という表現が大嫌いで

「プロならば、初披露の時から固まっているものを出せ」

と常々言っていた。

「グダグダ感が良いとかいう、園児のお遊戯のようなものが好きなファンなど一切理解出来ない」

と私が申したところ、ストリップと歌舞伎を愛する知人から

「あなたの言うのもごもっともなのですが、それは少々違うのですよ」

と言い返された。

「普通、一香盤一回しか行けない客が多いのに、おかしいですね。海老蔵が舞台で固まっていないものを出すのか」

「ストリップというのはね、芸能の一面を持っていますから、場数をこなさないと固まらないものなのですよ。芸術なら100回稽古して1回出せれば良いのですが、劇場の規模や雰囲気にも左右される芸能は、1回で覚えて、100回見せないと形とならないのです。ですから初日から楽日までに徐々に固めていくものなのです」

と的を射たことを言われ、スト愛などない私には目から鱗が落ちる思いであった。

悠那ちゃんの場合はどうであろう。初出しの時からある程度固まっているものを出し、それを少し軟化させ、より硬度のある完成形に近づけていったのではないか。「ピエロ」や「フェアリー」などが、数ある悠那作品の中でもその最たるものであるように思える。

4回目は「シンデレラ」。悠那ちゃんが踊り子として最後に作った演目。

召使いとして働いているが、城で舞踏会が開かれているのに着ていくドレスが無い。

すると花道で回転しながら、あっという間にして綺麗なドレスへと変身してしまった。

「あれ、おかしいな。俺は誰よりも演目を観れるはずであったのに」

一瞬も見逃すまいと見入っていたが、全くわからなかった(笑)。

東洋で観た時は、回転している時はなんとなく観えたような気がしたが、今回ばかりは本当に魔法がかかってしまったようだ。

舞踏会での華麗なダンス。12時の鐘の音が聞こえると魔法が解けてしまう。急いで戻らないといけない時に、そこでガラスの靴の片方を落としてしまった。

日常へと戻されると、召使いの衣装で楽し気に家事をこなしている。すると再び魔法がかかり、ドレス姿へと変身してしまった。ガラスの靴を持ちエンディングへと進んでいく。


ステージ構成は誰が観ても納得する完成度の高さであろう。明るく楽しい感じで、最後の演目を観られて良かった。翌日も1回目までならいることは出来たが、ここが私の悠那ちゃんを観る最後の時で良いであろうと、私は道劇に行かなかった。


悠那ちゃんと出会え、私はハッピーでした。12時が過ぎ、楽日が初日に変わるとあなたはもう匠悠那ではない。シンデレラのように良き王子を見つけて、幸せになって欲しい。

母の日で忙しい時期に「花束」を作って頂けた、花屋さんには感謝しております。そしてツイッターを通じて多くの人達に出会えました。今まで撮った写真の中では、ふざけたコメントが多かったものの、広島で撮ったポラには

「ストリップを愛し続けて下さい」

と書かれてありました。今は上がりすぎたストリップ熱を冷ます時で、やがて時間がたてばそれは調度良い適温に再燃されるであろうと思っております。




20165頭 渋谷道頓堀劇場

(香盤)

1. 翔田真央 (道頓堀)

2. 園田しほり (杉プロ)

3. 有馬美里 (道頓堀)

4. 川中理紗子 (道頓堀)

5. 匠悠那 (道頓堀)  引退



4演目:匠悠那

2演目:翔田真央/園田しほり/有馬美里/川中理紗子



ファンの方によると、悠那さんは引退週で10演目とのことです。

観劇日:5/7(土)