No.095 「想いを乗せて、さようならH嬢⑤」
「ありがとう。」
どうもで~す(=⌒▽⌒=)
さぁて、「想いを乗せて、さようならH嬢」も、
今回で最終回となってしまいましたぁヾ(@^▽^@)ノ
まずはここまで読んで頂いた全ての皆さんに、
心から感謝を申し上げますm(u_u)m
もし最後まで読んで頂いて、ご満足頂けたら幸いです☆
それではどうぞご覧下さいませ~(*^ー^)ノ
*
時計の針は深夜0:00を回り、日付はもう12月31日。
今日ですすきの最後なんだぁ・・・。
ラスト頑張るね。
H嬢から来たメールの文章が、
俺の頭の中で何度も何度も浮かび上がった。
(なんでやねん!)
(なんでいなくなるんだ!)
本当はちょっと冷静になれば、理解できたことだったかもしれない。
でも、気がついたら、俺は必死になって走っていた。
白い吐息と共に、C店のビル前に辿り着くと、
俺は一度だけ呼吸を整え、ビルの中へと足を踏み入れた。
僅かに呼吸が乱れながらも、
冷静を装いながらエレベータに乗り込むと、
俺はもう一度呼吸を整えながら、
頭や肩に乗った白い雪を払いのけた。
幾度となく足を運んだC店。
「いらっしゃいませ」
いつものように出迎えてくれる黒服。
なんとなく俺の様子がおかしいように思われたかもしれないが、
そんなことはもうどうだって良かった。
店では今年最後の営業ということで、
多少なりとも混雑していたものの、
とても店のナンバーを張ってるH嬢のラストというようには見えなかった。
(やっぱり店には内緒なのか・・・。)
何度か座ったことのある席に通されると、
様々な想いが交錯していた俺の元に、H嬢が姿を現した。
「たかちゃん・・・」
一言だけ俺の名前を呼んだその表情は、
驚きながらも、どこか悲しげだった。
H嬢が俺の隣に座ると、
黒服がいつものようにボトルキープしている焼酎を運んでくる。
「焼酎でいいよね?」
俺は無言で頷く。
俺には何から話していいかわからなかった。
ゲストグラスにアイスがひとつずつ丁寧に加えられ、
焼酎と水が注がれるまでの間、
この無言の時間が、俺にはもの凄く長いように感じられた。
「お前もなにか飲めよ」
「・・・うん」
無言の時をさえぎる様に自ら言葉を発すると、
H嬢は目の前にあるグラスを手に取り、俺と同じように自分の焼酎を作った。
いつもの流れというべきか、俺たちは小さく乾杯した。
一口だけ焼酎を喉に流し込んだが、
俺には焼酎の味が全くしないように思えた。
またしばらく、無言の時が続く。
「・・・・・・辞めるのか?」
俺はいきなり確信に迫るような言葉を発してしまった。
H嬢は一瞬グラスを見つめながら、ゆっくりと頷いた。
「・・・・・・そうか」
俺は再びグラスに口をつけた。
今度は焼酎の味がした。
「お母さんが退院できたんだけど、
ハッキリ言ってお父さんを見れるような状態じゃないし。
誰かが家のことをやらないといけないんだ・・・。」
「店には内緒なのか?」
「・・・たぶん簡単には辞めさせてもらえないし、
お世話になったけど、このまま辞めるのが一番良いと思って。」
「誰も知らないのか?」
普段質問攻めなんかしないが、
俺には抑えることが出来ない。
「お店で一番仲の良い子には言ったけど、
それ以外には誰にも言ってないよ」
「・・・・・・そうか」
俺はしばらくの間、
ただ呆然とグラスを見つめた。
ややしばらく、沈黙が俺たちの席を支配した。
僅かに目をつぶると、俺は意を決したようにH嬢に視線を移した。
「・・・それじゃあ、今日は卒業式だな。
俺がお前をススキノから送り出してやるよ」
そう言って、俺はグラスの焼酎を一気に飲み干した。
精一杯の笑顔を作って見せると、ようやくH嬢も笑顔を見せた。
笑顔を浮かべる二人。
でも、心からの笑顔ではないことは、確認するまでもなかった。
その日、H嬢と何を会話したのか、俺には全く覚えていない。
今までの思い出や、いろんなことを話したような気がするけど、
俺の心はポッカリと穴が空いたようで、
会話が頭の中に入ることはなかった。
「焼酎なくなっちゃったね」
H嬢の言葉に、俺は「そうだな」と答えると、
ややしばらくした後に、
「それじゃあ今日はドンペリでお祝いしよう♪」
誕生日のことを思い出した俺の提案に、
H嬢は少し驚いた様子を見せたが、
しばらく考えて「ちょっと待ってて!」と、いきなり席を立ち、
今度は鏡月のビンを片手に小走りに駆け戻ってきた。
「どうしたの、それ?」
「裏から盗んできちゃった♪二人で焼酎飲も?」
「・・・・・・・。」
悪戯っぽい笑顔を見せたH嬢が、俺にはとても愛おしく見えた。
俺は、H嬢に恋をしている。
そう気づいた瞬間だった。
約二時間、俺は店でH嬢と同じ時間を過ごした。
いつも指名がかぶるH嬢だったが、
この日だけはなぜかずっと俺の隣にいてくれたんだ。
「そろそろお時間、二時間になりますが、
ご延長はどうなさいますか?」
今日は年末最後の営業。
いつもより長く設定された営業時間は、ラストまでもう一時間あった。
「たかちゃん、明日早いんでしょ?そろそろ帰らないと。」
そんな話は一切していない。
長時間、店にいさせないようにした、俺への配慮だった。
名残惜しかったが、あと一時間だろうが、二時間だろうが、
長くここにいたところで、別れの辛さは変わらない。
「・・・チェックしてください。」
二人の時間の終わりを告げる言葉を、俺は自ら発した。
緑色の瓶には、まだ半分程の焼酎が残っていた。
その首には、二人の名前が書かれたネームプレートが下がっている。
もう二度とこの焼酎が運ばれることはない。
俺は、そんなことを考えていた。
支払いも終わり、いよいよ最後の乾杯。
最後の言葉は、なんて言っていいか分からなかったけど、
「元気でな・・・富良野は札幌よりも雪多いだろ?
くれぐれも風邪とか引かんようにな」
「・・・ありがとう、たかちゃんも元気でね」
いつものように、エレベータの前までお見送り。
これが最後のお見送り。
鉄の扉が閉まるまで、お互いを見つめ合った。
「ありがとう」
これが、H嬢の最後の言葉だった。
俺には、ようやく気づいた想いを、
H嬢に伝えることが出来ませんでした。
**
「epilogue~列車に想いを乗せて~」
布団の中に入ってもほとんど眠れなかった俺は、
翌朝、H嬢に一通のメールを送った。
------------------------------
「H」へ☆
おはよ!!
今日はめずらしくマジメにメールします☆
演出的に富良野に向かう列車の中で読んでくださいね。
改めまして、卒業おめでとうございます。
「H」に出逢って約半年、
本当にアッという間だったけど、
めちゃくちゃ楽しかった♪
「H」に出逢えたことが、
俺にとってかけがえのない時間でした。
いつも素直で、
真っ直ぐで、
頑張り屋で、
根性があって、
心が優しい、
そんな「H」に惹かれていくのに、
さほど時間はかかりませんでした。
俺の寂しい○○回目の誕生日を、
シャンパンとケーキでお祝いしてくれたね。
あの頃はぶっちゃけそんな親しくなかったから、
本当にビックリしたよ(汗)
しゃぶしゃぶ美味しかったね♪
食べ放題と戦う姿は、笑えたけど楽しかった。
店で逢うのがほとんどだったけど、
時間が経つにつれて、「H」が少しずつ心を開いてくれるのが、
嬉しくて、嬉しくて、少しせつないけど・・・でも、凄い嬉しかった。
それだけに、夜中のメールはめっちゃキツかった・・・。
いきなり頭が真っ白になって、
すぐに逢いに行かなきゃって思った。
逢いに行って、「行くな!」って、
本当は止めたかった。
でも、俺には事情が分かってるから・・・
だからこそ、精一杯笑顔で送り出したかった。
きっと、笑顔思いっきり引きつってたよね?(汗)
ごめんね。
「H」は、どんな道でも大丈夫!!
いつも素直で、
真っ直ぐで、
頑張り屋で、
根性があって、
心優しい、そんな「H」は何をやっても大丈夫!
マジな時の俺が言うことは、意外と当たるんだよ?(笑)
・・・だから、決めた以上は、しっかり頑張んなさい☆
でも、ちょっとしんどくなったら、
その時はいつでも連絡してね!
富良野まで飛んでいくから!
それでは最後に・・・
長くなったけど、本当に寒くなったから、
体調にはくれぐれも気をつけてね。
今まで本当にありがとう。
たかちゃんより。
------------------------------
その日の夜、H嬢から返事が来ました。
------------------------------
たかチャンへ☆
今JRに乗って、富良野に向かうところだよ♪
たかチャンのくれたメール、かなりジンときました(ノω・、)
昨日たかチャンに逢えるって思ってなかったから、
ホントに嬉しかったよ。ありがとう。
みんなで騒いだ忘年会の時ぐらい酔っ払ってたら、
抑え切れなくなって確実に泣いてたと思うよ。。。
私は、たかチャンに出逢えて、
本当に良かったなと思います。
ススキノには約4年間いたけど、
たかチャンに卒業を祝ってもらって幸せでした。
文章苦手でうまく伝わらないかもしれないけど、
たかチャンにはホントにありがとうって言いたいです。
今まで、ホントにホントにありがとう☆
P・S
これからも仲良くしてね。
------------------------------
メールを受けた数時間後、
H嬢と出逢った時間が、そのまま年と共に終わりを告げ、
俺は気持ちの整理がつかないまま、新年の時を迎えた。
その後、何度かメールのやり取りをしたものの、
俺とH嬢はどちらかともなく、自然消滅してしまった。
後日、C店ではナンバー嬢が飛んだということで、
多少なりとも騒ぎになったらしい。
忘年会で一緒だった5人組の一人は、
指名ホステスから、H嬢のことを何か知らないか、
俺に伝えて欲しいと頼まれたそうだ。
もちろん、俺は知らないと答えた。
これが、俺とH嬢との思い出です。
皆さんがどう思われたかは分かりません。
時として文章は受け手によって捉え方が違うと思うし、
俺自身も文章が下手なので、ちゃんと伝えきれたかどうか分からない。
でも、純粋に最後まで読んで頂いたことに対し、嬉しく思います。
・・・ただ、ひとつだけ、
いまだに俺には分からないことがあります。
H嬢は、なぜ俺だけに別れを告げたのか。
俺は今でも、
ふと、その理由を考える時があります。。。
***
長々と駄文連なる文章に、
最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
☆SuperTakachan☆
※業務連絡「飲みネタ募集中」
詳しくはこちら→「No.055 皆さんにお願いです」
~過去の記事~
※検索ワード「すすきの」「ススキノ」「薄野」「札幌」「北海道」「繁華街」「ニュークラブ」「キャバクラ」「飲み屋」「ホステス」「ホスト」「黒服」「スカウト」「水商売」「夜」「恋愛」「友情」「男」「女」「嬢」「夜の蝶」「友達」「スナック」「パブ」「酒」「ビール」「焼酎」「ウイスキー」「飲食店」