名品中の名品!!
8月も残り僅かになりましたね。
朝晩は過ごしやすくなりましたが、
日中はまだまだ暑いです。
名品中の名品!
福島武山 作 「赤絵金襴手唐獅子紋丸」
福島武山 は、
九谷焼 で赤絵の具を使って描く技法の
「赤絵細描(あかえさいびょう)」を用いた作品で有名です
平成10年度に赤絵細描の作品で
第23回全国伝統的工芸品コンクールの
内閣総理大臣賞(グランプリ)や、
その他多くの賞を受賞し、
平成15年には石川県指定無形文化財に認定されました。
その技術は素晴らしく、
”一ミリの中に3~4本の線”を描く緻密さで
表現されています。
普通紙にでも、
1ミリの中に3~4本の線を書くことは中々出来ませんよね。
それを立体的な器に、書き難く伸びにくい絵の具で、
尚且つ筆で描くのですから
神業と言っても過言ではないと思います。
作業工程も非常に手間がかかり、
赤絵細描では磁器の表面にまず、”にかわ”の液を塗り、
表面の誇りや油分を取り除き、絵の具ののりをよくします。
線の太さや模様により筆の種類や
絵の具の濃さを使い分けます。
この赤の上絵の部分が
もっとも長く手間のかかる部分なのです。
赤描きをすべて終えると、
まずサンドペーパーで軽くなでるように
ざらざらした部分をとり、いったん窯へ入れます。
表面を凹凸をなくすことで、
この後の金描きのときに筆のすべりをよくします。
窯からだし、今度は金絵の具で描き足します。
金を使うことで、絵に品格を与え、
絢爛豪華な仕上がりになります。
金描きのあとは金窯といい上絵窯より低い温度で
金を焼き付けます。
技術だけではなく、手間も掛かり大変な作業です
いろいろな工夫がなされています。
もともと赤絵で使われていた赤は九谷和絵の具でも
唯一透明感のない絵の具で、
他の絵の具と異なりボリューム感の少ない絵の具です。
それゆえ赤はそのまま使うと、
沈んだ感じの色になりやすい特性があります。
そのため、赤絵の具の調合、酸化作用や窯温度といった点に
注意することで赤の発色をよくしています。
また細描に用いる筆にも細かい作業で使いやすく、
思い通りの表現ができるように
自分に合った筆づくりをおこなっています。
福島武山は細描を行う筆を細書き用の筆よりさらに細くし、
細い線がきれいにでるように作ります。
また絵の具が滑らかに磁器に滑り降りるように
筆の根元から筆先までこだわります。
先は細く根元は絵の具をたっぷり含むように太めに作って、
絵にむらが出ないような工夫がされています。
福島武山の作品には道具へのこだわりは当然のこと、
絵の具や筆を使う絵付師自身の経験と
その技がもっとも反映されているのではないでしょか。
足の側面部分も細かく金彩が施されています。
これは本来皿や壷など美術品を作っている
職人さんならではの発想と作りだと思われます。
写真では大きさが判りにくいですが
左右2.2cmの大きさに書き込んでいます。
鉢の作りも薄作りで、赤絵細描と相まって繊細な鉢です。
前にも書いた事 があるのですが
美術品を作る作家さんは”土を入れるような物”を
作ると名声に傷が付くといわれるようです。
では、なぜ
福島武山は鉢を作ったのでしょうか
それは”ある方”の注文で特別に作られたそうです。
その経緯は定かではないのですが、
その際に幾つか作られており、
その殆んどが香炉の様な形の物に穴を開けたような物で
鉢らしい形は殆んど無かったようです。
それはおそらく鉢の知識がなっかたからでしょう。
この鉢の形を見ていると「月之輪涌泉」に似ているのは
見本として写したからでしょうか。
それとも思い違いでしょうか。
福島武山本人が解説している動画 がありました。
同じ一本の線でも”ちょっと”したことで
随分と違う表現になるんですね。
九谷焼きの名匠「福島武山」が作った鉢で
その中でも出来が良く、
鉢の形が素晴らしいこの鉢は
”名品中の名品”として過言ではないと思います。
予断ですが、
前に来て頂いたお客様で陶磁器がお好きで詳しく、
色々な窯元まで訪問される方がおられました。
その方がたまたま「福島武山」の事をよくご存知で、
「福島武山さんが鉢を作ったら、
物凄く素晴らしい鉢が出来るだろうなぁ」
と言われて思わず、「あるよ」と言ってお見せし、
絶賛されたのを思い出しました。