飛行機の窓からはとても平べったい島が海に浮かんでいるように見えた。が、サンゴ礁が隆起したこの島は、上陸してみれば断崖絶壁の島なのである。
普通、われわれのイメージする島は山のような形で、小高い丘の上から海が見渡せるというものである。ところが、この南大東島は海岸が切り立っていて、島の中ほどに行けば行くほど窪んでいくのである。
島の中心部からはまったく海が見えず、見渡すかぎりサトウキビ畑が広がって、ザワワザワワという音が聞こえるだけなのである。
南の島感はゼロである。「北海道にやってきました!」とピースサインをして写真を撮って、フェイスブックあたりに投稿してもだれも疑わないであろう。
先週も書いたのであるが、今回、私は観光ではなく仕事でこの島にやってきたのである。
私を呼んでくれたのは、こんな離れ小島からわざわざ九州の福岡まで、私どものセミナーに足繁く通ってくれている受講生であった。
この受講生が空港まで迎えにきてくれたのであるが、実際のところ、迎えにきてもらわないと、バスもタクシーもないこの島では移動のしようがないのである。
到着してすぐ村の役場に向かい、村長さんとあいさつをするのであるが、村長さんは出張だったために副村長さんとあいさつした。
そして、すぐに1時間だけのカウンセリングが始まり、その後、村の人々を集めての講演会となったのである。
いちおう、私のことは「東京から心理学の偉い先生が来る」という体で紹介されており、この日は防災無線を使って村中に宣伝されたようであった
ご存じのように、私の講演は抱腹絶倒を誘うものであり、このようなスタイルの講演会に参加されたことのないみなさんはかなり混乱した模様であった。
たぶん、これまでにこの島に来られた偉い先生方は、格調高く、エリを正して聴かねばならないようなありがたいお話をなさったのだと思う。それとはまったく違う講演であったからして、「笑いたいけど、笑っていいのか‥‥?」、「笑ってしまえば、失礼にあたるのではないか‥‥?」という混乱が起こっていたのである。
私の場合、笑っていただかないことのほうが失礼にあたる。
ガマンされればされるほど、こちらのパワーが全開になってしまうわけだからして、みなさんの混乱に拍車がかかってしまうわけである。
講演会が終わったあとは、役場の関係者のみなさまと泡盛を飲みながらの打ち上げが始まった。
そして、きょうの私のお宿であるが、「平さんといえば温泉、湯船のないホテルでは申しわけない」と気を使っていただいて、露天風呂があるコテージをわざわざとっていただいていた。
ところが、なにかボイラーが故障しているらしく、露天風呂は閉鎖され、やはりシャワーだけになったのである。といっても、私はふだんホテルでは湯船に身を浸けることはなく、シャワーですましているので、そんなことはまったく問題ないのである。
一方、私にとっていちばん大事な朝食は、朝6時半から7時半の間にコテージの近くにある食堂まで行って食べなければならないようである。それも、7時半ごろに行っても「もうない」と言われることがあるようで、早めに行くようにと指示を受けた。
よって、翌朝、私は5時50分に目を覚まし、いつものようにシャワーを浴びて朝食に行くことにしたのである。
が、しかし、お湯が出ないのである。
しばらくたったら、なんか温かくなってきたような気がしたのであるが、それは私の体が水に慣れてそう感じただけのようであった。
この日は今年いちばんの寒波が東京にやってきて、ものすごく寒い日であったと思う。が、南大東は28℃ほどあった。よって、「まあ、いいか」とシャンプーを水でしてもへっちゃらだったのである。
そして、朝から水をかぶり、お目覚めスッキリでお風呂を出たときに私は発見したのである。風呂の入口にガス湯沸器のスイッチがあったのである。
このスイッチをONにしないかぎり、お湯は出ないのであった。なまじ、ボイラーが壊れたという話を聞いていただけに、判断してしまったがゆえの大チョンボだった。日ごろ、人にはさんざん「判断してはいけない」と教えているというのに‥‥。
6時半に食堂に行ってみたところ、ホテルの人から「早いねー。まだできてないよ。新聞でも読んどいて」と言われ、1週間ほど前の新聞を渡された。そう、5日に1回しか船が来ないので、新聞にもタイムラグがあるのである。
まだつづく
本日が年内最後の掲載です。
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みなさまにとって、2016年が素晴らしい年となりますように