共犯者 | 平準司@神戸メンタルサービス カウンセラー養成・個人カウンセリング・心理学の講演、執筆を行っています!

いつもに、スキをみて暇をつくって事務所の近所の温泉に行ったりしているのである。
早起きした日なんかは、コソコソせず、堂々と胸を張って有馬温泉に行っちゃったりしてから事務所に行くのである。


しかしながら、どちらにしても、昼前後に温泉に入っているわけで、温泉から上がると、休憩室でゴロゴロしたりするのである。
こんな昼の日中から、温泉に入り、ゴロゴロしているのは、ほとんどがおじいちゃんやおばあちゃんなのである。

だが、たまに勤務時間中と思われる営業マンがいるのである。
多いときには、そんな営業マンが、休憩室に3,4人ほどいたりするのである。

そして、営業マンの携帯電話が鳴るのである。


「プルプルプルプル・・・・・・」
「はい、えっ今ですか? 北区の付近を走ってます」

「なに?走ってますって言ったってあんたは、休憩室でゴロゴロしてるじゃないか!」
と付近の人は思いつつも、なぜか息をひそめたり、音を立ててはいけないような雰囲気がつくられるのである。
そして、その電話が終わると、その営業マンともどもまわりにいる我々の緊張感もなごむのである。
再びダラダラしはじめると、また違う営業マンの携帯が鳴ったりするのである。

とにかく、さぼっている営業マンが電話口で言う言い訳の数々がとても個性があっておもしろいのである。



言い訳の数々というと、昔、若かりし頃、私の悪友の一人に起こったまさに危機一髪の出来事があったのであるが、きょうはその話をする。

今から、25年ほど前にテレホンクラブというものがあったのである。
それは、ビルの一角にあり、電話機1台が置いてある2畳ほどの個室に男性陣が控え、ただひたすら電話がかかってくるのを待っているのである。
テレホンクラブの会社は、駅などで大量のチラシをばらまいているので、それを見た暇つぶしや、彼氏募集中の女性たちがそこに電話をかけてきて、後は、2人の話し合い次第、という出会い系サイトの電話版のようなものだったのである。

ところが、女性を求めている男性のスキをついて、いろんな人がここに電話をしてくるのである。
一般的によくあるのは、オカマさんが電話をかけてくるケースや、「美人局(つつもたせ)」と呼ばれる、女性をおとりに使って、いざというときに「俺の女に何をする!」と怖いお兄さんが乱入してきて、男から金をせびるケースなどである。


私の友達の一人が、このとき実際に体験したのは、この美人局なのである。
彼がテレホンクラブにこもり、ようやくかかってきた電話の向こうの女性はとっても積極的だったのである。
「よかったら、私のおうちに来ない?今日はとっても暇なのラブラブ
そう言われて、彼は喜び勇んで彼女のマンションに行ったのである。


しかしながら、あまりにも順調すぎたので、不安になり、テレホンクラブの張り紙を思い出したのである。
その張り紙には「あまりにも順調すぎる誘いには罠があり、悪い男は、風呂場に隠れて待っている」とあったのである。


まさかと思いつつも、彼は「ちょっとトイレ貸して」と言って席を立ち、間違ったふりをして、お風呂場のドアを開けてみたのである。
すると、怖そうなお兄さんが、お風呂場でしゃがんでいたのである。
「あっ、どうも」とあいさつをする彼に、びっくりした先方も「いえいえ、どうも」とあいさつをしてしまったのである。
たぶん、予想外の出来事で、先方もどうしていいのかわからなくなってしまったのだと思う。

さらに彼はびびりながらも、彼女のいる居間にとって返し、「お風呂場にいた男性の人だれ?」と聞いたのである。
すると、彼女はいたく動揺し、「お、お兄ちゃんなの」と答えたのである。
彼は、すべてを察しながらも、「あぁ、お兄さんなんだ・・・」と彼女に言い、とてもバツの悪い時間が流れたのである。
そして、この会話の一部始終を聞いていたのか、おもむろにお風呂場から、お兄さんがやってきて「どうも、妹をよろしく」とあいさつをし、さらに気まずい時間が流れたのである。


彼がいたたまれなくなり、「じゃあ、そろそろ僕はこれで」と席を立つと、誰も彼を止める者はなく、彼は危機一髪、難を逃れたのである。


その後、彼は、テレホンクラブには、足を向けなくなったのであるが、バツの悪い三人組が居間でどんな顔をしているかを想像するだけでもとてもほほえましいのである。