続・温泉の効能の話 | 平準司@神戸メンタルサービス カウンセラー養成・個人カウンセリング・心理学の講演、執筆を行っています!

この温泉の効能は「金持ちになれる」ではないかと言いふらした結果、私は関東随一といわれるラジウム温泉にみんなを連れていくハメになったのである。


メンバーのうち男性は、私と、最近、膀胱ガンを患っている私の先輩カウンセラーの二人。

女性は、カネといえばなにをおいても駆けつける主婦の5人組。

全員、ダンナを家に残しての参加である。


私と先輩カウンセラーの男性チームは、月曜日の朝一番に新宿駅で待ち合わせ、“特急あずさ”で甲府まで行き、レンタカーで温泉地に向かったのである。

一方、強欲5人組は、関西から一台の車に同情して現地に集合にしたのである。


ところが、である。

われわれの前途を予感させるがごとく、最近、小悪魔キャラで売っている某カウンセラーが、いきなり、サービスエリアのトイレで財布を落としたというのである。

そして、取りに帰ってみたものの、財布は見あたらず、いきなり全財産を失うというハメに陥ってしまったのである。


そんなこととはつゆ知らず、私たち男性チームは私の指導の下、この温泉地特有の温冷入浴(18~25℃の冷泉と40℃の温泉に交互に入浴し、血行をよくする)で温泉を満喫していたのである。


ちなみに、ふつうの人なら、温泉宿に着くと、ゆっくりと休息をとりつつ、宿の温泉を満喫したり、行ったとしても、その温泉街にある共同浴場に入りにいったりするぐらいではないかと思う。

だが、私の場合、「ほかにもっとすごい温泉がないか?」ということを、地元の人に“聞き込み”するのである。


この温泉地では、聞き込み情報とネットで調べた情報から、1kmほど山奥に入ったところに、すごい温泉があることが判明。

単独行動にて、そのとても不気味な温泉宿に、温泉に入りにのみいったのである。


ここはものすごく気持ちよい温泉だったのであるが、唯一、問題があったのである。

それはなにかといえば、混浴だということなのである。


温泉にあまり行かない男性読者のみなさんならば、「おお、それはなんとうらやましい!」と言われるかもしれないが、私は混浴の温泉でオイシイ思いをしたことなど一度もないのである。


みなさんは東北や九州、信州や北関東の混浴温泉の恐ろしさをほとんどご存じないと思われる。

とくに、平日の昼間から温泉に入っている男性はまずいない。

よって、ひどいときなど、“男湯”というものが存在しなくなるのである。


以前、九州の山奥の温泉地を訪れたとき、男湯の入口を入ったとたん、脱衣場に女性用の浴衣が4つ脱いであるのが目に入ったのである。

間違えたかと思い、看板をもう一度確認しても、やはり“男湯”となっている。


旅館の人に「すいませんけど‥‥」と事情を話したところ、その人は「まただよ」というような顔で男湯に行き、勝手に入っていた婆さん連中に女湯に行くよう言ってくれた。

しかしながら、婆さんたちは、「わしらはかまわんから、にいさんに入ってもらえ」と、男湯を勝手に混浴にしてしまう始末なのである。


どうしても入りたい温泉だったので、この大きい体をちっちゃくし、タオルで前を隠し、かがみ込みながら、「失礼します」と入浴するわけだが、ヒマな4人組の婆さんは、私を話のダシにし、からかいながら入浴するのである。


「にいさんはまだ現役かい?」

「なんなら洗ってあげようか?」

というような状態で、スキあらば、のぞいたり、さわったりしようとするのである。


これって、セクシャルハラスメントじゃないですか!

私の母親以上の老婆に囲まれて、その婆さん連中に、今年、齢50歳にもなるというこの私が、子ども扱い、オモチャ扱いされながらの入浴となったのである。


そんなトラウマが私にはたくさんあるので、混浴という響きを聞くだけで、ビビるのである。


しかし、私はおばあちゃん子だったからであろうか、このようなシチュエーションになると、なぜかおばあさんたちと仲よしになってしまうのである。

結果、30分ほどで切り上げようと思っていた入浴が1時間半にもなり、お菓子なんかもちゃっかりもらっちゃったりして、「これも金持ち温泉効果か?」と喜び、宿に帰り、その日は早寝したのであるが、次の日、悲惨なことが起こったのである。


翌日、われわれは南アルプスの行き止まりにある秘湯に向かったのである。

この機会を逃したら二度と行けないかもしれないと思い、無理をし、日本アルプスの谷底に湧き出し、糖尿病に劇的な効果があるといわれる温泉に来たのである。


国道から奥に入ること40km。

そこに着いたころには、もうすでに昼も回っており、われわれ一同、腹ペコ状態だったのである。


ところが、である。

この場所、コンビニはおろか売店もなく、以前、私が一人で来たときにはあったソバ屋も数年前につぶれ、食事をするところがなにもないのである。

ふだんは村営の日帰り専用の温泉があり、そこで食事がとれるのだが、火曜日は定休日なのである。

よって、ここでは、なにも食べられないのである。


仕方ないので、われわれは温泉宿で温泉まんじゅうを買い、日本アルプスのいちばん谷底の河原でそれを昼メシ代わりに食うという、とても貧しい思いをしたのである。


「あぁ、貧乏くさい!」


ちなみに、その後、参加メンバーのだれかがものすごく金持ちになったという噂は聞かない。