卒業シーズン来たる:卒業写真【荒井由実】-太田忠(ピアノ) | 太田忠の縦横無尽

卒業シーズン来たる:卒業写真【荒井由実】-太田忠(ピアノ)

今日は3月15日。そう確定申告提出の期限日である。関係のない人にとっては何てことはない日であるが、私にとっては3月15日は絶対にスルーできない日である。なぜなら、毎年この日に確定申告をするからだ。確定申告をした初年度こそ税金が還付され、「確定申告をすれば税金がかえってくるんだ」と何やらとても得をした気分を味わったのだったが、その恩恵をうけたのはたった1年だけだった。その後は一貫して「追加で税金を納める日」となった。嗚呼。


冒頭から話が脱線してしまった。3月は卒業シーズン。今、まさに卒業式が全国各地の学校でおこなわれている。あちらこちらに忘れられないドラマがあるはずである。


ユーミンこと松任谷由実がまだ荒井由実の時代に書いた「卒業写真」は1975年の作品である。彼女の3枚目のLPアルバム『Cobalt Hour』の2曲目に収められている。発売日は6月20日。だが、そのリリースよりも一足先の2月5日にハイ・ファイ・セットのデビューシングルとして発表され、たちまち人気曲となった。37年を経た今なお卒業ソングとして不動の地位にある。


実は私はユーミンの曲は、あまり熱心に聴いたことがなかった。ユーミンの曲の多くをカバーしている山本潤子さん(元ハイ・ファイ・セット)の声がお気に入りなので、もっぱらそちらを聴くのがメインだった。だが、今回「卒業写真」をピアノ編曲するにあたって、ユーミン作品をチェックしてみたところ、いろいろな発見がありとても面白かった。彼女の曲作りは思いつきやフィーリングによる要素が非常に少なく、その曲を成功に導く「仕掛け」や「戦略」が巧みに計算されている面が強い、というのが私の印象である。彼女は実に多くのチャレンジをしており、日本の音楽業界における革命的存在であると言える。


この「卒業写真」にしても、導音が省略された「FonG」の何とも言えないちょっと曖昧な表現やコードが変化する部分にも保続音を用いて同じ気分を引っ張る表現などが散りばめられて、独特な世界を創り上げている。こういうことは楽曲を分析していると、とても目に付くことであり「ほほう」「あーなるほど」と感心してしまう部分なのだ。


ところで、「卒業写真」に出てくる主人公は女性であり、その女性が「あなたは私の青春そのもの」と言っている「あなた」は男性のことだと私はずっと思っていたが、そうではないことを知ってやや感動の度合いが薄まってしまった。荒井由実の体験として生まれたこの曲の「あなた」のモデルは高校時代における女の先生であり、「遠くで叱って」くれる存在だったようだ。しかし、それはあくまでもこの曲の誕生話。聴き手は聴き手自身の解釈でよい。


「卒業写真」はまさにソロピアノ向きであり、工夫を凝らせば相当良い楽曲に仕上がると思う。


オリジナルはこちら:卒業写真【荒井由実】-太田忠(ピアノ)


太田忠の縦横無尽 2012.3.15

『卒業シーズン来たる:卒業写真【荒井由実】-太田忠(ピアノ)』

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