まさに「リスク管理」が問われた一週間 | 太田忠の縦横無尽

まさに「リスク管理」が問われた一週間

真夏のような日差しが照りつける日が増えてきた。「ああ、このギラギラ感だ」という忘れていた感覚がよみがえる。夏が確実に近づいてきている。


さて、今週のマーケットは実にスリリングな展開だった。いったん混乱も収まったかに先週は思えたが、やはり「想像以上に現実となって襲いかかってくるまさか」 が起こった。


日経平均は1万円をあっさりと割り込み、米国市場も5/6の注文ミスも交えて引き起こされた一瞬の急落はやはり「幻」などではなく、金曜日のザラ場中に1万ドルを割り込んだ。ほんの数週間前までは「予想以上にファンダメンタルズ好調&力強い景気回復」が株式市場におけるキャッチフレーズだったが、そんなセリフはどこへやら、全く違う国に来てしまったかのような印象である。ギリシャ国債の問題はユーロ通貨という仕組みそのものへの問題に発展し、足元の景気回復もヨーロッパ諸国の緊縮財政による景気減速懸念に転化してしまう。いつものようにマーケットは一瞬にして変わり身を演じてくれる。


まさに「リスク管理」が問われた一週間だった。私が毎度耳タコのように言っている「リスク管理」であるが、何度でも言わせてもらう。日本の個人投資家の最大の欠点が「リスク管理」に無策であり、損失を被ってから「しまった」と嘆くことである。「含み益」は利益確定しない限り「幻」であり、「含み損」は「現実」である。


さて、ここからが実は重要である。マーケット参加者の「恐怖心」という要素をすべて忘れ去って、完全に冷静な状況で現状の株価を見ると、バカげた安値になっているものが多く目につく。マーケットのセンチメントが再度変化して「売られすぎ」が意識される状況になると今度は上昇方向への「まさか」が起こる。「まさか」は下にも上にも想像以上に現実となって起こるのがマーケットの常である。


ということで、かなり面白くなってきているというのが私の個人的見解である。フルインベストメントでリスク管理をしていない投資家は、もはや自分の状況を正視できなくなり始める。「忘れよう」と決め込む人たちが多くなる。なぜなら「含み損」の拡大をこれ以上見たくないし、上昇に転じたとしても「含み損」の縮小を待つだけしか何もできないからである。それに対して「勝ち組」の投資家ならヘッジをいつはずすか、どのタイミングで現物株の投資ウェートを増やすかという大事な戦略を実行できる選択肢がある。一番良いチャンスを生かせるか、生かせないかという大差が生じる。


とはいえ、日本のマーケットの方向性を決めるのはしばらくはすべて海外の外部要因だけなので短期的な予測すら難しい。パニックが起こる前は「サブプライム問題」も「ギリシャ国債問題」もそのマーケットインパクトの大きさを我々は認識できていなかった。この大混乱の最中に新たなパンドラの箱はいつでも開く可能性がある。


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太田忠の縦横無尽 2010.5.22

まさに「リスク管理」が問われた一週間

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