本格的なタバコ条例がスタート | 太田忠の縦横無尽

本格的なタバコ条例がスタート

子供の頃からタバコの煙が嫌いだった。あの独特の臭い匂いに体が拒絶反応を示すためだ。中学生にもなるとタバコに興味のある男子ならば誰しも大人のマネをしてタバコを吸ってみるものだが、私には無縁の経験だった。生まれてこのかた一度もタバコをくわえて吸ったことがない。それほどイヤなのである。


大学生の頃、同級生の男子の半数以上はタバコを吸っていたが、飲み会などでは出来る限り彼らからは遠い席に座っていた。あまり口に出すと気まずい雰囲気になる可能性があるので、ニコニコしながらすばやく自分の最適の場所を見つけてサッと座っていたものだ。一番いいのは女性たちの中に紛れ込むことである。


ところが、社会人になって大いに困った。私が入社した1980年代の後半はまだ会社の中で自由にタバコが吸える環境だったため、私の斜め横の上司がヘビースモーカーで1日中プカプカ、プカプカ吸っていたからである。これには参った。私より15歳以上年上の世代で証券会社につとめているような男性社員は皆が皆タバコを吸うのである。まさか息を止めるわけにもいかず、苦痛の日々が続いた。


だが、そういう日々も1990年代に入ってからは、社内で自由にタバコを吸うことができなくなり、喫煙所が設けられるようになったため、あの不快な思いからはおさらばした。


ところで、この4月1日より神奈川県で「受動喫煙防止条例」がスタートした。不特定多数の人々が出入りする公共的施設において禁煙または分煙を義務付けるというものだ。「受動喫煙」とはよく言ったもので、まさにタバコを吸わない人にとってこの忌まわしき被害を自治体が正式に認め、防止するという画期的なものである。タバコを吸う人にはわからないかもしれないが、喫煙者のそばにいるだけで、煙を吸い込むにとどまらず、衣服や髪の毛にタバコの煙の成分が付着し、なかなか取れないのである。いつも不愉快である。


それにしても、この二十数年間でタバコを吸う人の肩身は著しく狭くなった。奥さんがタバコを吸わない家庭ならば、家の中でもダンナは換気扇の下でタバコを吸わねばならず、外出しても吸える場所がほとんどない。千代田区のように「歩きタバコ」を禁止している自治体もあり、ポイ捨てが見つかろうものなら罰金を取られる。「タバコを吸うために思わずタクシーに乗りましたよ」という知人の涙ぐましい話も先日聞いた。世の中変われば変わるものである。


家計費と健康のためにも「禁煙」をという流れは、これからますます加速するだろう。お気の毒だが、タバコを吸う人の人権がどんどん剥奪されていく。


太田忠の縦横無尽 2010.4.7

「本格的なタバコ条例がスタート」

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