他でもない、アレルギーの検査のことです。



ちょっと湿疹が出たり、咳が長引いたりすると、決まってママから言われます。

「アレルギーの検査とかした方がいいのでしょうか?」

たいがいの場合、僕はこうお答えします。

「やって何か変わりますか?」


喘息で治療中のママからも、

「アレルギー検査は?」

と聞かれるので僕は、

「結果を見て何か治療方針が変わりますか?」

と答えます。

アレルギーの検査で最も確実なのは血液検査です。

つまり嫌がる子供を押さえつけて恐い思いをさせながら針を刺して採血をすることになります。

そんな事をしてまで得られた結果を、どう活用するのかを問いたい。


ママからのリクエスト以前に、何かあればすぐにアレルギー検査をする先生もいます。

僕は何もアレルギー検査をすること自体を完全否定しているわけではありません。

当院でも必要に応じて検査することはしばしばあります。


でもやはり、何でもかんでも検査する方針には疑問を抱かざるをえません。


理由は大きく分けて2つ。



1.アレルギーの検査は結果がすべてではないから


例えば卵にクラス6の反応が出たとしましょう。でも食べてまったく問題ない子もいます。

逆にクラス0であっても、卵を食べるたびにじんましんが出る子だっています。

このように検査データはあくまでも「参考」でしかないわけで、重要なのはその子が食べて平気かどうかなのです。

なので何でもかんでも検査しまくって、その数値しか見ない医者はダメだと以前の記事から書いてきましたが、まさにその通りなのです。

なんでもない子に検査をして卵が陽性だったからといって、その日から卵を除去させるような方針が2つの意味で愚の骨頂であることは、これまでの僕の記事を読んで来られた方ならお分かりでしょう。

「2つの意味」とは、まずこれをアレルギーだと診断してしまうこと、もう一つは除去という選択肢を採るということですね。

最近学校で事故があったせいか、学校サイドも神経質になってて、

「学校の先生から検査して来いと言われました」

といったケースの多い事・・・

検査するかどうかの判断は医者がすることで、教員ではありません。



2.それにより治療に劇的な変化が期待できないから


例えば湿疹が続いていてアトピーが疑われる子がいたとしましょう。

そんな子を治療していると、だいたいママから「アレルギー検査はしなくてもいいのですか?」と聞かれるし、実際にそういった子をジャンジャン検査しまくる医者がいます。

でも、最初に書いたように僕は「やって何か変わりますか?」と返答します。

アトピーは経皮感作(こちらの記事を参照) ですから、まず100%ハウスダストなどにアレルギーがあります。

また喘息のお子さんも十中八九ハウスダストにアレルギーがあります。

これは検査しなくても明らかです。

それを、検査で改めて知って、何か今後の治療方針に変化が生じますか?

ハウスダストをゼロにすることはできないけど、肌が弱い子には経皮感作を防ぐためにスキンケアを指導すると同時に、原因と思われるホコリなどを極力減らすような生活指導も普段から行っています。

そんなお子さんに改めて「あなたはホコリ系にアレルギーがあることが分かりました」と説明したところで、なんのメリットがあるでしょうか?これ以上もっとホコリを減らせと??

知ってなにかメリットがありますか??

痛い思いして恐い思いしてまで、やるメリットがどこにありますか??



検査とは治療方針を立てるためのツールの一つです。

例えばインフルエンザの検査をして陽性が出れば、タミフルという治療の選択肢が選べます。

溶連菌の検査で陽性であれば、抗生剤を使わなければなりません。

こういった治療に結びつく検査は、少々痛い思いをしてでもしなければならないし、僕も疑わしければ積極的におこないます。


ただ、世の中には治療に結びつかない不要な検査を乱発する医者が多すぎる気がします。

その最たるものがアレルギー検査だと思います。


検査しなくたってアレルギーの診断はできるし、治療方針だって立てられるのです。


不必要であり、子供にとってイヤな思いをさせるような検査は、僕は絶対にしません。