「歩き」考:補足 | Tempo rubato

Tempo rubato

アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

前々回のブログで歩きについて書きました。

何気ない動きほど考えてみると奥が深かったりします。
何気なくやっている動きは、無駄のない最短距離で、重心の移動に無理がないよう上体や腰の位置、手足の動かし方を総合的に動かして行われています。

四足動物の動物歩きや走りも覚えてしまえばそれほど悩みませんが、あれも(おかしな言い方ですが)実によく出来ています。

歩きの図解について「寄生獣 セイの格率」の清水監督…20代から知ってるので清水君と呼びますが…から指摘があって、少し手直ししました。

ついでに送り出しの足の動きがイマイチだったので自己修をば。



着地している足が重心の軸線上に来る点を、両足が着地している、いわゆる「原画のポーズ」の中央に配置しました。
さすが清水君、実際には少し前側にすると指摘してくれました。

仰る通りで、説明しやすくするために「真ん中のポーズ」は言葉通り真ん中位置に描いていました。
ボクも「真ん中のポーズ」は中央より前側に配置します。
中5枚でも、4枚でも、3枚でもその方が歩きの流れを作りやすいからです。

清水君は、こうした方が、真ん中へ到達する動きがもたつかないと言っていました。
これは彼が経験で編み出したものだろうと思います。

歩きの割り方は均等割で教わったそうです。
教わる環境によっていろいろありますね。

最近はどのように教わっているのかわかりませんが、(まずは動画チーフや動検さんの指示に従う必要がありますが)マニュアル的な動かし方を型通り行うのではなく、動きを解析して、自分なりに理解してから中割を…あるいは原画を構成するのが良いと思います。

動画も原画も作画に違いはありません。
動画でも、自分で絵を描き動かすつもりで作業をすれば楽しくなってきます。
そうすれば原画の意図も理解できるようになって勉強にもなりますよ。


自然な動きはよく観察して動きを理解したり、自分で動いてみて絵にすることが出来ます。
特に誇張しようとしなくても、しっかり動きを理解できていれば「自分なりの動き」に昇華できるはずです。

さらにアニメ的に誇張する場合はどうでしょう。

ボクの原画は取り立てて特徴がないと自分では思っているけども、以前、今石君が「動きに引っかかりがある」と言ってたことがあります。
たぶん、動きを作る時に頭や手足を同時に同じ方向に動かさないでそれぞれをズラす時に生じる、動きの引っかかりなんだろうなと思う。

この動かし方の元ネタは『宇宙刑事ギャバン』です(笑)
大葉健二さんの蒸着の動きがカッコよくて繰り返し見てたら、顔や腕や肩の動きが全部ズレて動いてる事に気がついたんです。
例えば、斜め後ろを向いたポーズから右腕をグッと手前に回転させて正面を向く動きでは、肩→肘→胸→顔→手、という順番で、しかも、肘が手前に来る時に顔を逆方向に動かしてズレを大きくしています。これが一瞬のうちに行われてあの独特なアクションになっている。

「ははぁ~~」と思って派手目なアクションの原画で応用してみると結構うまく行ったんです(^_^)

実際に人の動きを観察してみると、ギャバンほどではないにしろ、やっぱり動きのズレは各所で生じているんですよね。
アクション映画を見てても切れの良いアクションは必ずしもビシッと全部が同時に決まっているわけでなかったります。

てなわけで、日常芝居からアクションまで、机の上や紙の上であれこれするだけでなく、眼に入る現実のものは全て「作画資料」だと思って、日々暮らしましょう ♪