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読書に関する要約blogです。

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成功をめざす人に知っておいてほしいこと/リック・ピティーノ
¥1,470
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友人に勧められて購入。

帯には「バスケットボール名監督が語る、能力を最大に発揮する方法」と。

一つ一つの格言についてたとえ話を用いて簡潔に要点を述べるという最近の自己啓発書にありがちな形式。



 第一章から第四章で、基本となる「自尊心」、「目標設定」、「ポジティブでいること」、「習慣」について著者の経験談を交えて30程の格言が紹介される。

「コミュニケーション」と「ロールモデル」に関する具体的な技術については第五章と第六章で。続く第七章から第九章では、成功の弊害となりえる「プレッシャー」「逆境」について。最終章では「成功した後で生き残る」ことの難しさと、成功を持続させる秘訣が述べられて締めくくられる。

 アマゾンのレビューでも書かれている通り、邦訳も自然で非常に読み易く、且つ分かりやすい。

 

 要約すると、


成功する為の土台は、「自尊心」とは何かを理解した上で「自分が成功に値する」と確信できる人になること。その為には「ひたむきな努力」が必要である。

土台が整えば、上を見上げる為の「高い目標設定」。中途半端な目標ではなく、「夢」を叶える為の目標を設定する。その後にすることは目標の「細分化」と「課題のリストアップ」。つまり具体的な目標に落とし込むということ。そして自分に必要なことは何か?を考えその都度改善し、日々の短期的な目標を実現することによって長期的な目標を一歩ずつ達成していくこと。

 一歩ずつ進んでいく上で、「ポジティブ」でいることは非常に重要で、又それは「良い習慣を確立する」ことと相互に作用し、循環する。そしてその二つの事が短期的な目標を達成することを助け、ひいては「夢」を叶えることに繋がる。

 上記のことを実現する為の技術として重要なものは、「コミュニケーション」と「見習う」ことである。

 もちろん道のりは平坦ではない。様々な障害があり、その都度「プレッシャー」がつきまとう。時には大失敗することもある。しかし、子どもの様なチャレンジ精神で「プレッシャー」を楽しみ、味方にするべきだ。大失敗した時でも、いつまでも落ち込まず、諦めず、徹底的に粘ってみる。同時に、失敗から学ぶこと、逆境から学ぶこと、その姿勢があれば強くなることが出来、「明日の成功」に繋がる。

 成功したからといって、満足してはいけない。成功によって得られた安心は慢心となり人間を堕落させるウイルスとなる。夢に最終地点はない。成功して満足感を得るのではなく、毎回より大きな成功を目指さなければいけない。それが充実した人生を送れる秘訣である。



 つまり、どこかで聞いたことがある内容だ。

でも心に響く点があった。


・自分は成功すると信じても、そのための努力をしていないなら、夢は実現しない。

・夢は、目指すべき理想であり、実現したい新生活。目標は達成すべきことを明確に示す日々の青写真。

・コミュニケーションとは、自分の目標達成を手伝ってもらい、周囲の人の目標達成を手伝うこと。

・賞賛だけなら誰でも出来る。成功の秘訣は長所を取り入れること。

・人は自分の決定に基づいて自分に起こることをつくり出している。


自分の仕事、生き方に少しでも根付けばいいかな。

最後に、帯にもなっている著者の言葉をひとつ。


「人生に対処するには、あなたは常に前向きでなければなりません。それが正しい方法だからというのではなく、それが唯一の方法だからです。」


原題は「Success
is a choice

原題のがかっこいい。



 自分の書評を読み返すと、全く本を買おうという気にならない。これじゃいかんな。

けど書き直すのはやめにした。自戒の念も込めてアップした。



2011717日読了




 


仕事、問題、時々妻のアドバイス。 その2


 二日酔いのムカつきと頭痛を覚ます為に、布団から抜け出しキッチンに向かう。水を飲もうと冷蔵庫を開ける。


「おはよう。昨日は遅かったんだね。」


 シャワーからあがった美帆が声をかけてきた。タンクトップとショートパンツ姿で長い黒髪をバスタオルで無造作に拭く美帆が立っていた。


「ブスは三日で慣れるが、美人は三日で飽きる。」とよく言われている。

 しかし、僕は結婚して3年経つ今でもその美しさに一瞬見惚れてしまう。


「上司と飲みに行ってたんだ。連絡もせずにごめん。」


「そんなの全然気にしない。でも、煙草の匂いをさせたままベッドに入るのはもうやめて。朝起きた時、隣に誰か知らないオジサンが寝てるのかと思ってびっくりするから。私は鼻がいいの。」



本当に何も気にしていないけど、これだけは注意しておこう、という様に美帆が付け加えた。


「ごめん。これからは気をつけます。今日天気良いからシーツ洗濯しとくよ。布団も干しとく。美帆は今日仕事?晩御飯はどうする?」



「一件どうしても土日にしか会えないクライアントがいるの。でも夕方には終わるわ。だから夕食は外食にしない?」



毎週土曜、僕が必ず夕食を作っている事を気遣って言ってくれている。

「了解。自慢のタイカレーは明日にするよ。夕方には駅らへんにいるから、終わったら連絡して。店は予約しとくよ。和食?洋食?」



「さすが主夫の鑑ね。仕事が早い上に聞き分けが良い。」



一人で納得した美帆が髪を乾かしながらバスルームに向かう。僕はその後ろ姿に釘を刺すつもりで声を掛けた。



「まだ専業主夫になるつもりはないけれど。」



美帆が返事をするかわりにお尻を小さく二度振った。

仕事、問題、時々妻のアドバイス 


 飲みに行った後、着替えもせずに布団に入ってしまった。煙草の匂いが髪と服に染み付いている。まるで他人と身体を丸ごと交換したように自分の身体ではない気がした。目が覚めてもすぐには起き上がる気分にはなれず、目をあけたまま天井を見るともなく見ていると、昨日同席した池田課長の言葉を思い出した。



「まぁ赴任したばかりなんだし、問題が起きない訳がない。オフィスの移転もあっただろ?みんな慣れない環境の中で頑張ってんだ。もう少し力を抜いてみたらどうだ?」



「はい。わかりました。ありがとうございます。」



適当な返事しか出来ない僕を課長は苦笑いしながら見ていた。仕事上のアドバイスではなく励ます事しか出来ない課長は部下や上司から「能無し」と陰口を叩かれる事が多い。



 会社という組織の中において、周囲の評判は絶対だ。実際、池田課長の同期入社は全員がなんらかの経営職になっている。32歳という史上最速の若さで部長になった海外事業部の角谷部長や、入社3年目で営業成績トップになり、そのまま出世街道を邁進し第二営業部の部長になった早川部長、そして池田課長の上司である渡辺部長も課長と同期入社だ。



渡辺部長はその生来の人柄に海外赴任経験が手伝い、部下にフランクに接する。5年前の第一営業部 部長就任時の朝礼で挨拶をした時も、

「ビジネスでもっとも重要なスキルはコミュニケーションであり、それは組織内でも言える事だ。だから僕に対しても同僚と接する様にして欲しい。仕事の悩みや、つまらない冗談にも相談にのりたい。もちろん恋愛についてもね。」

これまでにない上司の挨拶に全員が苦笑いしか出来ないでいると、課長時代からの部下である僕と同期入社の藤原が助け舟を出した。



「コンパとかも呼んでいいんすかぁー!?」



渡辺部長が「割り勘で頼む。」と返す事で一気にその場の空気が和んだ。それから5年。着実に部内の信頼を積み重ねた部長は他部署でも評判が高い。そんな目立つ同期に囲まれながらも池田課長が目立っていない訳ではない。僕が今回の人事異動を周りに報告すると、その第一声は「大変だねぇ。」といった声が大半だった。彼らの顔色は「第一営業統括部 資材課 部品管理係 係長」という僕の役職の「第一営業部」のところで明るくなり、「資材課」のところで同情の色に移り変わる。彼らは花形であるイチエイに所属することを称賛するよりも、ザイカの池田課長の下にいることに同情してくれた。「イチエイ ザイカの昼行燈」と言えば社内で知らぬものはない程、池田課長は有名だった。



曰く、学歴が低いのに入社できたのはコネのおかげ。曰く、自分の失敗を部下に押し付ける癖がある。曰く、窓際に座り過ぎて右半身だけ日焼けしている。曰く、課員と食事に行った際の割り勘は一円単位まで徹底する。といった悪口の類に始まり、深夜にレンタルビデオ屋でバイトしているのを見たという人がいたり、いや、オカマバーで働いていたのを見たぞという声があり、いやいや俺が深夜に残業してた時なんて身体にコンセントを挿して充電してたぞ。実はあれはNASAが開発した新型ロボットなんだ。そういえば、ジャパネットたかたで掃除機とセットで売られているのを見た気がする。


というもはや意味が分からない都市伝説とも言えない様な噂が絶えずつきまとっていた。1000人弱の従業員が働いている中小企業であるこの会社でもっとも有名な課長が池田課長だった。社員が飲みに行く先でもその名前が頻繁に登場するので、スナックのホステスも顔を知らずに名前を覚えてしまう程だ。



僕も異動前からその噂は嫌というくらい耳にしていたのだが、まさか自分の上司になるとは思っていなかった。辞令が出た翌日からは深夜のテレビCMが気になって仕方なかったし、着任当日に池田課長と初めて挨拶を交わした時なんて、ついコンセントのジャックを探してしまったものだ。



しかし、僕は池田課長が嫌いではない。悪い人じゃないのは確かだし、仕事が特に出来ない訳でもない。少し部下や上司とのコミュニケーションが得意じゃないだけだ。というのが部下になって二カ月たった僕の池田課長評だ。

それを同期の飲み会で話していると、噂話好きな女の子が同情しながら


「池田課長の下に配置された人は出世が大きく遅れるんだって。原君は大丈夫ぅ?」

と都市伝説よりも背筋が凍るような事を言い出した。隣のテーブルでコンパの段取りをしていた藤原が、

「俺も聞いた事ある!前の係長も随分長かったし、今のザイカって10年前からメンバー変わってないらしいよ。今回の人事でやっと原が係長で入って、オペレーターに山田君だっけ?彼が入ったでしょ。10年も人事異動が無い部署ってすげぇよな。」


と他人事のように言った。


同期内でも人気者の藤原が話すと全員が耳を傾ける。そこからは僕の、というよりイチエイ、ザイカの課長、池田純一の都市伝説でひとしきり盛り上がっていた。その大半が今までに耳にした事だった。会計時に幹事がおどけて「一人5223円お願いします。」と言った時に藤原が「池田かよ!」とツッコンだのが少し癇に障った。 

 朝日が反射する天井を見ながら、そういえば昨日の居酒屋でも会計時、課長に3,752頼む。」と言われたよな。と思い出して少し笑ってしまった。

やっぱり僕は池田課長が嫌いではない。