第二回口頭弁論--その13--大技 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論--その13--大技

ちなみにうちのニャン太君は少々変わりモノだ……。
普通ネコが飛びつくような物には食指を動かさない。


マグロ・鶏のササミ・焼き魚……などなど。


更には缶詰フードも食べない。

ドライフードの通称「カリカリ」しか食べない。


多分子猫の時から、それしかやっていなかったのが原因であろう。


しかし……。「一生そればかり喰って幸せなのだろうか……。」
時々ワタシは思うのである。

まあ…本人がいいので良いのであろうが………。




勿論、この裁判中に「カリカリフードです。ウチのネコはこれしか食べません。」なんて発言はしていない。


どうせ言ったところで、川畑は納得するはずもないだろうし……敢えてコチラから教えてあげる義理もない。
………と言うか、ネコのエサが「カリカリ」だろうが「缶詰」だろうが関係の無い事であろう。


説明するのもアホらしい。



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川畑      「あ…………っ!!」


そう言うとこう質問してきた。


川畑      「このネコ……。グレーのネコ……。赤い首輪をしていますね。」
タロウ     「確か……してますが……。」


赤い首輪のネコは世界に推定1万2千匹はいるであろうが……。


川畑      「オスですか?メスですか?」

タロウ     「オスです。」
川畑      「それを証明するものは?」


こっちが聞きたい。


川畑      「去勢・避妊手術は?」
タロウ     「してますよ。」
川畑      「それはいつ頃ですか?」
タロウ     「さぁ?もう10年以上前かな……。」


聞かれた以上、仕方ないので答えてあげる。


川畑      「どこの動物病院ですか?」
タロウ     「北川動物病院」
川畑      「その時の記録はありますか?」
タロウ     「ウチには無いよ。そんな昔のもの。」
川畑      「では……病院には?その時のカルテやネコの写真など……。特徴のわかるもの……。」
タロウ     「さぁ?ご自分でお聞きになればどうでしょう?」


何が言いたい?何がしたい?

たいていの事には……もう驚かないぞ。ワタシ。


すると裁判官に向かって……。


川畑      「ワタシ……思うんですが……。被告がネコを摩り替えたって事じゃないんですかね?」


いや。驚いた……。
正直驚いた……。


いきなりわけがわからん。
それに裁判官も疑問文で聞かれても困る……。


川畑      「ちょっと待ってください……。ワタシが訴訟内容で被害を受けていると明記しているのは……
         『1月27日から4月20日まで』ですよね……。それで、自分の家のネコ『シロクロ』
         私のクルマに傷を付けているのを2月中頃に気づいた……。
         それで『シロクロ』『ネコ発見時の通報記録』を作って『自分の家のネコではない』とし……
         責任逃れをしようとした!」


まだ続く……。


川畑      「ちょうど偶然にも同じ時期に『迷いネコ』『グレー』が家に上がるようになったので……。
         『このネコをウチのネコにしてしまえ』って事で2階のベランダのある部屋に幽閉した。
         それで元飼いネコであった『シロクロ』は自分の家に帰ったつもりで被告宅に上がっている。」


川畑……いっそ推理小説家にでもなってしまえ……。
いやきっとその方が大成する……。


すごい発想力だ……。脱帽である。


川畑      「で……それを被告は認めずに追い出している!!こうなりませんか?裁判官!!」
裁判官     「………………。」


裁判官無視……。


タロウ     「あのねぇ……。原告。なんでもいいから立証してください……。
         『思う』とか『かも』とか『もし』とかいらないですから……。」
川畑      「どういうことですか?そんな事コチラ側が証明できるわけ無いじゃないですか?」


無理やりキレる。


タロウ     「いいですか?だいたい訴訟内容の時期を『1月27日』と書き換えたのはあなたですよ。
         それまでは『3月はじめ頃から』と訴状になってますが……。
         第一回口頭弁論で訂正しているでしょう?あなた……。」


詳しくは第一回口頭弁論---その3---訴状訂正 をご覧頂きたい。


川畑      「だから!前もって訴えられた時のことを想定して被告が先手を打ったんじゃないですか?」
タロウ     「はぁ……。」
川畑      「それか……。被告が『グレーのネコ』が良いネコだから……摩り替えたのかもしれません。」


もうこっちがキレたい。


はたして自分が長年飼っていたネコを「そんな事」するだろうか?


もし万が一………。ワタシがそんな鬼畜みたいな人間であったとして……。
川畑の言う通りだったとしたら………。


「ワタシはどこか遠くに『シロクロ』を捨ててくる。」


もう返す言葉が見つからない……。
笑いを堪えるのも……怒りを堪えるのも……限界である。


裁判官     「あのー。そんな話をされても……。ここでは結論出ませんからね……。
          原告。わかるでしょう……?とにかく書証出して…立証してください。」


わかっていないからこうなっている。


裁判官     「これ以上進展は無さそうなので……。もういいですね?原告。」
川畑      「………。はい。」


打ち切られた。


裁判官     「ではちょっと……被告と話がありますから…原告と傍聴席の人は退廷してください。」


もう終了しそうな雰囲気……。


タロウ     「あ。原告に対する反対尋問は?」
裁判官     「あ。忘れてました。………。いいです。あとでやりましょう。」


忘れてもらっては困る。
最大の見せ場である。


裁判官     「ま……とりあえず……。」


書記官に促されてワタシと裁判官・司法委員・書記官以外は退廷した。
退廷する時、ユミコと杉森のおばさんがクスクスと肩で笑っているのが見えた。


裁判官     「あのねぇ…被告……。」


苦笑いで尋ねる。


タロウ     「オフレコですか?」
書記官     「オフレコです。」


すかさず答える。

裁判中はすべてカセットに録音されている……。
こういう場合を除いては……。


裁判官     「どうします?」



いや…「どうします?」と聞かれても……。

                                        第二回その13 イラスト:

以下次号。