第8回「Only Heaven Can Wait」(1980)/Roberta Flack | 柑橘スローライフ

柑橘スローライフ

2018年1月更新終了しましたが、検索ご来訪の方等の
過去記事に対してのコメント・ご質問等は大歓迎です。

1980年発表のRoberta Flackのアルバム「Live & More」
その中から、前年の「ダニーに捧ぐ」に収録されていた曲、
「Only Heaven Can Wait(For Love)」です。



(動画上の表記がデュエットがダニー・ハサウェイとなっていますが、実際にはピーポ・ブライソンです)

この曲をとりあげた理由は、
この15年7月1日で没後10年となる、
ルーサー・ヴァンドロスによるコーラス・アレンジ曲のためです。

【詩作面】
表面的には、お洒落なラブソングという雰囲気ですが、
この曲の詩作内容は結構「意味深」です。
ずばり、中高年夫婦の「離婚前のもやもや話」という感じで、
妻側(彼女側)からの離婚(別れ)の促し、といったところが主題なのかなと思います。
少し英語詩を載せてみます。

We know that it's all over, still we haven't said goodbye
Pretending life is wonderful, pretending you and I
Why do we stay together? We can't wait forever
Never's too late, only heaven can wait

Waiting for love won't make it happen
Crying for love don't mean you care, oh no
Only when love has ended can a heart be mended
Never's too late, only heaven can wait for love
Heaven can wait for love

「全て終わっているのに、何で私たち、さようならを言わないの」
「あなたも私も、人生が素晴らしいなんてふりをしている」
「愛を待ちわびても、何も起こらない」
「あとは天国だけが待っているみたい」などなど.....

こんなところが詩の内容で、
途中のロバータの台詞のところでは、
共働きのこと、子供達のこと、などなど.....
とつとつと、今までの生活の事を振り返っています。
(何ともそこはかとない哀愁が漂っています)

こういう詩の内容は、ネガティブなものなので、
日本の曲などではまずありえないのではと思いますが、
さすが、ロバータ・フラックが歌うとさまになります。
大人が格好いい、アメリカならではという曲です。

【サウンド面】
一方、サウンド面では、
ルーサー・ヴァンドロス一味のバッキングに注目。
05年7月1日に亡くなり、没後10年となるルーサーが、
この曲ではコーラスアレンジを担当し、自らも歌っています。

そこかしこで、ルーサーの独特の声質のコーラスが空間を漂い、
まさにロバータとルーサーの束の間の夢の共演。
そう、この二人はとても合っている声質なのに、
ついぞ、本格的なデュオは実現しませんでした。

それというのも、この当時のロバータは、
79年1月に相棒のダニー・ハサウェイを失い、
それを打ち消すかのように、ピーボ・ブライソンに入れ込み、
盛んに彼を売り出そうとしていたから。

ルーサーはどちらかというと、ずっと裏方で自身のソロデビューも遅く、
ロバータにとって、当時のルーサーは、
多分スタッフの一人という感覚だったのかなと思うのです。

奇しくもルーサーとピーボは同い年で、
調べてみますと、ルーサーが51年4月20日生れ、
一方、ピーボが51年4月13日生れと、わずか1週間の違い。

この時、ルーサーはあくまでバッキングで、
ピーボはフィーチャリングという形だったため、
ルーサーは多少悔しい思いがもしかしたらあったのかな、
などと感じてしまいます。

しかし、ルーサーの真骨頂は歌のみならず、
アレンジやサウンドクリエイトでもあるわけで、
ルーサーはルーサーでこの時は十分に満足して
ステージ上にいたのだろうとも思わせます。

さて、ルーサー一味は、ベースにマーカス・ミラー。
ドラムスにはバディ・ウィリアムスなどなど....
彼らは同時にルーサーと一緒にコーラスも付けているわけです。
彼らはそのままデヴィッド・サンボーンのバッキングにもなり、
当時のルーサー一味は、サンボーン一味でもあるわけですね。
(当時のグローバーワシントン一味がナベサダ一味にもなるのと同じで、
また、その全てに居るのがマーカスで、まさに八面六臂の活躍です)

終始、ご機嫌なサウンドと哀愁のあるロバータの歌が展開されていくのですが、
最後にピーボ・ブライソンがシャウトで登場し、
デリケートに展開していた音空間をぶち壊してしまいます(私見)。

ピーボファンには申し訳ないのですが、
この曲におけるこの歌い方に限っては、
やはり、ちょっとまずい、と感じます。

まず、声質と声量がこの曲のデリケートなテイストと合っておらず、
長く伸ばすペダルポイント気味の音も進行和音上、
ハーモナイゼーションがあまり決まってなく、明らかにラフに過ぎます。
恐らく、あまり打ち合わせも行わず、ぶっつけで行ったのだと思いますが、
まだ若かりし頃のピーボの「若気の至り」という感じがします。

老練な現在のピーボの声はいい感じで枯れていて、
とても巧いシンガーであるのに、この曲に限ってはかなり残念です。
ただ、あくまで私見であって、一般的には絶賛されていると思います。
私の意見は、大抵の場合、マジョリティとは反するのです。

【別アーティスト版】
ルーサー・ヴァンドロスの先輩であり、親友でもある、
ディオンヌ・ワーウィックが同曲を録音していたようで、
未発表(1981年)ながら、これもとても素晴らしい仕上がりで、
一発で気にいってしまいました。
コーラスは、ほぼロバータ版のルーサーによるアレンジと同じで、
ロバータのみならず、ディオンヌもルーサー繋がりといった感じですね。



黒人のR&Bやジャズフュージョン系のトップアーティスト達は、
そのほとんどが何らかの形で横に繋がっており、
様々な取り合わせが本当に面白いものです。





ソウル・R&B名曲選/過去記事一覧
第1回「Until You Come Back To Me」(1974)/Aretha Franklin
第2回「Woman Needs Love」(1981)/Ray Parker Jr.
第3回「Feel Like Makin' Love」(1974)/Roberta Frack
第4回「Mercy Mercy Me」(1971)/Marvin Gaye
第5回「Lovin' You」(1974)/Minnie Riperton
第6回「You Can't Hurry Love」(1966)/The Supremes
第7回「So Amazing」(1985)/Luther Vandross




にほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへ
にほんブログ村