ぽっかりと空いた週末の夕方、友人Iからいつもの
釣りのお誘いメールが入った。
今年はまだナマちゃん(ナマズね)ボウズだったので、
行くかっ、と気合を入れ、俺はマジェ、ヤツは角目の
BMW R100GSで出撃した。
ところが現場近くの信号でヤツの顔色が変わった。
「どうした?」
「クラッチワイヤー切れた」
「なに~!」
家までの距離は約10㎞。
クラッチなしで、停まらずに走るのは至難の技だ。
信号待ちの手前でニュートラルに入れて、スタートは
俺が後ろから押して、走り出したところで2速に入れる。
そんな作戦を試すも、信号が多くて、交通量もあるので、
非常に危険。
こうなったら、引っ張るしかないか。
近くのヒャッキンでロープを探すが、ろくなのがない。
結局あったのはコレ。
ビニールロープかよ。
しかたないのでこのビニールロープを牽引用に
編む、あむ、アム。
約5mの牽引ロープを作り、
カラビナ(鍵についてた)で連結。
準備は整ったが、250スクーターで
BMWの1000ccを引けるのか?
呼吸を合わせて、ゆっくりスタート。
じりじりとマジェがGSを引く。
ゆっくりと車輪が回る。
「おっ、意外といけるぜ」
大きな道をできるだけ回避し、裏道をつないで
時速20km/hで進む。
だいぶ慣れてきたころにそいつが現れた。
どうしても登らなきゃいけない急な坂。
他に道はない。
アクセルをジワリと開ける。
登らない。
さらに開ける、じわりと進むが、それ以上
行かない、と思ったらヤツが叫んだ。
振り向くと、マジェから煙が噴出し、焦げ臭い。
ヤベェ、ベルトが空回りしている。
坂だけをクリアすればいいので、GSのエンジンを
始動し、下り坂で勢いをつけて2速に入れ、
そのまま坂を上ることに。
うまくいった。
「こんどコーラと焼肉と31な」
「ラーメンとギョーザとビッグマックも付けてやるぜ」
……って男の友情を演じてる場合じゃねぇ。
ナマズ釣りにいったんじゃねーか。
もちろんその後に車でリベンジ。