2014-03-04 09:19:43

『ナチスの手口』に“まなぶ”とは(4)

テーマ:ドイツ

だまされないために


ナチスの手法は巧みであり重層的であった。


最初は選挙で権力を握ったナチスであったが、以降は暴力で反対派を次々と抹殺し、独裁を固めた。ユダヤ人を、同性愛者を、共産主義者を次々と排除して行った。人々をパンとサーカスとファッションと音楽で魅了しながら。


おろかにも、だまされた人々は戦争へと駆りだされた。というよりは、喜んで世界征服戦争の熱気へと身を投じた。


ナチスの宣伝の巧みさを考えるとき、思い出すのが反ナチ闘争に身を投じたマルティン・ニーメラーという牧師の次の言葉である。


彼らが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。
私は共産主義者ではなかったから


社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。
私は社会民主主義ではなかったから


彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。
私は労働組合員ではなかったから


そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。


ナチスの手法に習おうとする権力者がいるのなら、民衆はナチスに抵抗できなかった人々の失敗から学ぶ必要がある。一人の権利の弾圧が、やがてはすべての人々の権利の蹂躙(じゅうりん)につながる。小さな権利の抑圧が、結局はすべての人権の否定につながる。


音楽やファッションに浮かれてはならない。


美しい言葉にだまされてはならない。


いつも悪魔は優しく雄弁に語り始めるから。


-了-


『まなぶ』2014年2月号、21~23ページに掲載された文章です。


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2014-03-03 09:17:06

『ナチスの手口』に“まなぶ”とは(3)

テーマ:ドイツ

サーカス


古代ローマの時代から、市民を満足させるにはパンとサーカスだといわれる。


ナチスは、公共事業などで仕事をつくりだしてパンの手当をすると、今度はサーカスも考えた。どうすれば国民を楽しませることができるのか、と。


ヒトラーの答えは自動車であった。安価でだれにでも買える自動車を提供できれば、ナチスへの支持が高まるであろう、と。ヒトラーは自動車づくりの天才ポルシェに、安価で、丈夫で長持ちのする高性能の自動車の製造を求めた。だれにでも手に入る車フォルクス・ワーゲン(国民車)が誕生することとなった。すでにフォルクス・ワーゲンが疾走すべきアウトバーンの建設が進んでいた。


しかし、なんといっても最大のサーカスは、オリンピックである。1936年、ナチスはドイツの国力を内外に誇示するために盛大なオリンピックを行った。ギリシアで太陽光線によって火を起こし、それをリレーしてベルリンの会場にまで運ぶという新しい儀式を取り入れてオリンピックを盛り上げた。また、オリンピックの様子は多数のカメラを使って撮影され、それが映画『民族の祭典』に編集された。監督はレニー・リーフェンシュタールという若くて美貌のある女性であった。これが世界に輸出されてドイツの国力の興隆を印象づけた。


>>次回 につづく


『まなぶ』2014年2月号、21~23ページに掲載された文章です。


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2014-03-01 10:44:00

『ナチスの手口』に“まなぶ”とは(2)

テーマ:ドイツ

ナチスは宣伝ということに力を入れた。


政権をとってからは、ヨセフ・ゲッペルスという人物を宣伝大臣に任命した。宣伝大臣というポストを新設したところにナチスが宣伝に注いだエネルギーの大きさがわかる。


それまでの政党が選挙前にキャンペーンをしていたのに対し、ナチスの発想はパーマネント・キャンペーンであった。つまり選挙があろうがなかろうが、つねに宣伝活動をつづけたわけだ。


ナチスはいろいろなことをやった。まず、ロゴマークである。


鉤(カギ)十字を採用して、これを多用した。現在のマーケティングの用語を借りれば「ロゴマークの採用とコーポレート・アイデンティティーの確立」であった。



ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館に展示されているナチスの飛行船
(2012年7月 筆者撮影)

次にファッションである。


素敵なデザインの制服をつくった。今でもナチスの古い制服を売っている店を見かけたりする。ナチスの忌まわしい過去を知らない世代には、けっこう人気なのだろう。東京の私立の女子高がデザイナーを使った素敵な制服で学生集めをするのと同じ発想である。カッコ良くなければ人は集めにくい。ファシズムはファッションからである。


また、右手を前に突き出すあいさつを使い始めた。古代のローマ軍の敬礼とされるものである。まず、イタリアのファシストが使いはじめ、ドイツでもナチスが採用した。


ナチスの宣伝で大きな役割を果たしたものをもう一つ紹介すると、それは飛行船である。ゆっくりと巨大な船体が空を行けば、多くの人々が見上げる。ナチスは、鉤十字のマークの付いた巨大な飛行船を飛ばして注目を集めた。戦争が始まると、ドイツが勝っている時は、ドイツ人の優秀さを宣伝し、負けるはずがないと国民を煽(あお)った。


ドイツが劣勢になると、「敗北は国民の奴隷化を意味する。死ぬまで戦うように」と国民を脅した。敗戦まで、ナチスに対するドイツ国民の大規模な反乱が発生しなかった要因の一つは、ゲッペルスのこうした宣伝であろう。


>>次回 につづく


『まなぶ』2014年2月号、21~23ページに掲載された文章です。


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