モスルの陥落以降の情勢を質疑風にしたためてみました。


Q:モスルで追い詰められる「イスラム国」ですがモスル陥落ということになれば、イラク国内での勢いはなくなると見ていいのでしょうか?


はい、その勢いは大幅に低下すると思われます。


Q:モスル陥落なら、イラク政府は、今後、どういう動きをするのでしょうか?


どう動くかは読めませんが、どう動くべきかはわかります。
スンニー派の人々を、どうやってイラクの政治システムに取り込むか。疎外されたままでは、スンニー派地域での新たな抵抗運動が起きるでしょう。
この地域の復興にも力を注ぐ必要があります。


Q:シリア内のイスラム国はどうでしょうか? やはり、こちらも弱体化していますか?
「首都」ラッカ陥落も近いとの報道も出ていますが…。


恐らく時間の問題でしょう。


Q:最近、フィリピンのイスラム国の情勢がよく伝えられますが、東南アジアで、同じように、イスラム国の影響を受けた勢力が台頭する危険性がある場所はほかにありますか?


既にインドネシアでは何度もテロが発生しています。
ISでは言語別に部隊が編制されていたと伝えられています。
恐らく同じマレー語系の言葉を使うフィリピン南部、インドネシア、マレーシア出身者は、同じ部隊に居たのではと推測されます。
イラクとシリアでのIS支配の崩壊を受けて、要員が出身地に戻りISの旗を掲げたのがフィリピンでしょう。
インドネシアは引き続き要注意です。
これまでテロの起こっていないマレーシアが心配です。


Q:イラク・シリアなどで「イスラム国」が拠点や力を失った場合、この地域で次に発生するのはどういう事態でしょうか?


イラクではISという共通の敵がいなくなりましたので、中央政府とクルドの自治政府が直接に向かい合う状況となります。
具体的なは両者間の線引きの問題があります。
両者が領有を争っていた地域の大半はIS騒ぎのどさくさにクルド人が押さえてしまいました。  
クルド人には返還の意志はないでしょう。
クルド人と平和的に交渉をまとめることができるのか?注目されます。また9月にクルド人が独立を問う住民投票を予定しているのも注目点です。


シリアではクルド人の扱いが焦点でしょう。アメリカは自らの陸軍としてクルド人を使ってラッカ攻略戦を行いました。ラックが陥落すればクルド人を見捨てるのかどうかが問題になります。必要がないからとクルド人を見捨てるのか。あるいはクルド人支援を続けるのかが決断のしどころです。クルド人支援を続ければ、NATO加盟国のトルコとの関係の悪化は避けられないでしょう。自国にクルド問題を抱えるトルコはシリアのクルド人の力の拡大を懸念しています。

ロシア軍、アメリカ軍、イラン軍、イスラエル軍などがシリアに介入し、それぞれの民兵組織を支援しています。
偶発的な衝突が懸念されます。

何よりもシリアの将来が見にくいのは、アメリカが明確なシリア政策を打ち出していないからです。


Q:今発生している「カタール包囲網」とは何を意味しますか?
サウジ、UAEなどが主導している様ですが、その原因や狙いとは?


意味しているのはサウジの新世代の外交的な無知と乱暴さです。
2015年のイエメン介入、2016年の対イラン断交、そしてカタールとの断交です。

狙いはカタールの政権の転覆でしょうが、実際にはサウジの方でクーデターが起こり、皇太子が代わりました。