トランプ・ショック


2016年にアメリカ大統領に当選したトランプは、守ってもらっている国々が、アメリカの好意に「タダ乗り」しているとの議論でNATO諸国を始め同盟国を批判した。日本も批判を受けたが、実情は駐留するアメリカ軍の経費の7割を日本政府が負担している。アメリカにとっては日本は最も気前の良い同盟国である。


トランプの批判の矛先(ほこさき)が一番鋭かったのは、NATO諸国である。NATOの場合は、GDPの2パーセントを防衛費に支出するという合意があるにも関わらず、このレベルの防衛費を負担している国が少ない。アメリカにのみ軍事費の負担を強いて同盟国は「タダ乘り」しているとの声はオバマ政権の時代にもあった。もっと言うならば冷戦期から存在した。ヨーロッパの民主主義の体制では、軍事費への増大は、選挙民の間で往々にして評判が良くない。戦車や飛行機を買うよりは、学校や病院を建設する方が、選挙への勝利の近道である。NATO諸国の軍事費負担の割合は、常にアメリカよりも低かった。考えてみると、アメリカは不思議な国である。国民全体のための健康保険もないし、その他の福祉の水準も低い。にもかかわらず政府は巨額の軍事費を使い続け、それを国民は容認してきた。


トランプの主張のヨーロッパのNATO諸国にとっての問題点は、安全保障面でのタダ乘り論ばかりではない。トランプはロシアのプーチンを評価しワシントンとモスクワの関係改善を主張してきた。その主張は、どのような具体的な政策として実施されるのだろうか。


年表 
1878年 スターリン生まれる
1894年 フルシチョフ生まれる
1904年 ケナン生まれる
1911年 ロシア革命
1953年 スターリン死亡
1971年 フルシチョフ死亡
1985年 ペレストロイカ
1991年 ソ連崩壊 ウクライナなど独立
2005年 ケナン死去
2013年 ロシア、クリミアを「併合」
2016年 トランプ、大統領に当選
2017年 トランプ政権発足


-了-



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高橋 和夫
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