2013年8月8日に世論調査で知られるギャロップ社がエジプト経済に関する世論調査の結果を発表した。調査は7月に軍がクーデターでモルシー大統領を追放する2週間前に行われている。クーデター直前のエジプト経済をエジプト国民は、どう認識していたのだろうか。また一人一人の生活状況を、どうとらえていたのだろうか。調査結果は、そうした疑問に答える興味深いデータを示している。


この調査によれば経済状態が「良い」と答えた者は1割にも満たない。「苦労している」が58パーセントと6割に近い。それよりも経済状況が悪く「苦しんでいる」との反応が34パーセント、つまり三分の一に達している。この数値は約半年前の1月には23パーセントだったので、この期間中に10パーセント上昇している。また経済的状況に「苦労している」と、もっと悪くて「苦しんでいる」を合計すると9割を越える。エジプト人の9割が、経済状況に不満であることがわかる。


以上が現状認識であるが、それでは将来の方向性をエジプト人は、どう見ていたのだろうか。悪くなって行くとの答えが、80パーセントに達しており、国民の大半がモルシー政権の経済運営に期待していなかったのがわかる。実は、2011年ムバラクが倒れた直後には、経済が悪くなると見ていた国民は34パーセントに過ぎなかった。つまり三人に一人だったわけだ。2年間で経済の先行きへの見方が極端に悪化していたことを数値は示している。逆に経済が良くなると見ているエジプト人は、今年のクーデター直前には12パーセントに過ぎなかった。これはアラブの春直後、つまりムバラク没落後には46パーセントが経済は良くなると期待していたのと比べると、急降下とも言える変化である。


エジプト経済全体ではなく、個人の生活についての質問では、55パーセントが悪くなっていると答えている。逆に良くなっているとの答えが17パーセント、そして28パーセントが変わらないとの返答であった。


こうした一連の数値は、大規模な反モルシー大統領デモが起こった経済的な背景を説明している。


なお調査は15歳以上のエジプト人1149人に対して5月の中旬に面接で行われた。


21世紀に入ってからギャロップ社などのアメリカの調査機関が、中東各地で長期にわたり継続的な世論調査を実施している事実は興味深い。

(8月13日、記)


畑中美樹氏の主宰するオンライン・ニュースレター『中東・エネルギー・フォーラム』に2013年8月19(月)に掲載された文章です。


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