2011年末のアメリカ軍のイラクからの撤退期限が迫ってきている。この時期に、三大テレビネットワークの一つであるCBSニュースが世論調査の結果を発表した。それによると、77パーセントがイラクからの撤退を支持している。三分の二は戦争は人命と費用をかける価値がないと考えている。中東イスラム世界に関連する他のポイントは以下の通りである。


<アフガニスタン>

  • 53パーセントがアフガニスタンへの関与に反対している。
  • 36パーセントがオバマのアフガニスタン政策を支持している。
  • 共和党員の間の方が民主党員よりもアフガニスタン政策への支持は高い。
  • 48パーセントが戦争は順調であると信じている。
  • 42パーセントは順調ではないと信じている。

<対テロ戦争>

  • テロとの戦争に関しては、評価が分かれている。42パーセントが勝っているとし、同時に同じ42パーセントが勝っていないと考えている。
  • オバマ政権によってアメリカがより安全になったと考えているのは36パーセントである。5月の調査より8パーセント増えている。
  • 65パーセントが無人航空機などで行われるイエメンやパキスタンでの軍事作戦を支持している。

<リビアと民主化>

  • 49パーセントがリビアに介入すべきでなかったと考えている。
  • 37パーセントがアメリカのリビア政策を支持している。
  • 外国政府の自らの市民に対する暴力を阻止するためにアメリカが軍事力を行使すべきかとの問いに対して、39パーセントが賛成し、同じ39パーセントが反対している。
  • 7割は独裁を民主化するためのアメリカの努力に反対している。

<イスラエルとパレスチナ>

  • 41パーセントがイスラエルを同盟国と考えている。共和党員の場合は58パーセント、民主党員の場合は29パーセントである。
  • 34パーセントがイスラエルを友好的と見ているが、同盟国とは考えていない。
  • 7パーセントがイスラエルを非友好的と考えており、5パーセントは敵だとしている。
  • イスラエルに対する支持に対しては、36パーセントが適切としている。
  • 三分の一が支持は過剰であるとし、17パーセントが不足としている。
  • 42パーセントが国連に認められたパレスチナ国家の建国を支持している。反対は34パーセント

<イラン>

  • 55パーセントは、イランの脅威は外交的に対応できるとしている。
  • 15パーセントは即座のアメリカの軍事力行使が必要だとしている。
  • 17パーセントがイランは脅威でないとしている。
  • イランは軍事力の行使を要する脅威だとする見方を支持している中では、共和党員は民主党員の二倍の比率である。

<パキスタン>

  • パキスタンに関しては、39パーセントが非友好的と、24パーセントが敵と見ている。21パーセントが友好的ではあるが、同盟国ではないと見ている。

<イスラム>

  • 四人に一人はイスラムを好意的に見ている。しかし三人に一人は否定的に見ている。特に共和党員の52パーセントは、イスラムを否定的に見ている。

<共和党の大統領候補>

  • 予備選で共和党に投票する有権者の間では、軍の最高指揮官としてはミット・ロムニーが一番適任とされた。次がニュート・ギングリッジである。しかし、支持率はいずれも26パーセントと21パーセントであり、群を抜いているという数値ではない。
  • 同じようにギングリッジとロムニーが軍事・外交の危機に一番対応できると見られている。数値はそれぞれ31パーセントと19パーセントである。

なおサンプル数は1182名で、調査は11月6日から10日に電話で実施された。
(11月15日、記)


*畑中美樹氏の主宰するオンライン・ニュースレター『中東・エネルギー・フォーラム』に2011年11月18日(金)に掲載された文章です。



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