「もののけ姫」について:その1 神殺し(下) | モノゴトをオモシロくスルドく見る方法「かふてつの方丈記 」

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How to look everythings essentially
or
Everythings gonna be alright

(続き)

 

人間の世界では日本史に依れば、

 

縄文人が弥生人に侵略され
(というかこの場合は融合という感じがしてますが)、

 

弥生人が「まつろわぬ民」としてヤマト政権に侵略され
(ここは本当に侵略だったと思う)、

 

ヤマト政権内でも神道を支持する人と仏教に帰依した人が対立したり、

 

と言う争いが繰り広げられました。

 

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一方、神様の世界でも、上記に述べたように、人間と同様の闘争があったと確信しています。

 

手塚治虫も「火の鳥」クライマックスの「太陽編」で、狗族を始めとしたニッポンの地霊と仏教が連れてきたヒンズー教の強力な神との死闘を描いています。

 

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で、ようやく「もののけ姫」のハナシとなります。

 

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「もののけ姫」はシシ神を殺す神殺しの物語です。

 

シシ神の森は人跡未踏なたたずまいをしているので、まだ弥生の農耕文化すら入っていない、石器・縄文時代の世界と思われます。その中に居るシシ神は石器・縄文時代の地霊である訳です。

 

一方、シシ神を殺そうとするジゴ坊以下の唐傘連は、坊主だか修験者だ判らないような格好をしているので、神道の人か仏教の人か判らないのですが、少なくとも「天長様」の書状を携えていることから、朝廷がバックにあるのは明らかです。時代的には室町時代らしいから、仏教も禅宗が流行ったり、比叡山が権勢を誇ったりと、一定の勢力を持っていたものと思われます。
つまりジゴ坊のバックには、「ヤマト」「仏教」「ヒンズー教」の神様仏様連合軍がついているのです。

 

これはね、敵いっこ無いですよ。
もう、一発ですよ。(エボシ御前は銃弾を二発放ってはいますが)

 

で、石器・縄文時代の森の守護神であるシシ神は結局狩り取られてしまうのです。
そして石器・縄文時代の森である「シシ神の森」は壊滅してしまうのでありました。

 

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もののけ姫でのシシ神殺しは、上に長々と(すいません)記述した神の世界に於ける権力闘争の歴史を再現している訳です。

 

ラストでシシ神に首を返すと、森や野原が再生するのですが、守護神たるシシ神を失った以上、それはもう、石器・縄文時代の森ではなくなってしまいます。室町時代の里山の風情となってしまいます。これも人間が自然を切り開き(破壊しと言っても良い)、その地の地霊を殺して、自分たちの領域としていった歴史を再現しているのです。

(これと同じ状況を高畑勲が描くと「平成狸合戦ぽんぽこ」になるのでした。)

 

(「もののけ姫」について:その1 神殺し 終わり)