(続き)
・日本神話
作中にはオオナムヂ(大国主命)、タケミナカタといった日本神話に於ける古代の神が登場します。それがどんなものであったか、「古事記」「日本書紀」にあたって押さえておかなければならない。
因みにオオナムヂ、タケミナカタは国つ神であり、ヤマトタケルは高天原の天つ神として降臨して来た天孫ニニギノミコトの子孫ですから、国つ神と天つ神の関係も押さえる必要があります。オオナムヂは息子のタケミナカタが天つ神であるタケミナヅチに力比べで負けて、タケミナカタはタケミナヅチに手を握りつぶされ、諏訪湖まで追いやられてしまうことで、天つ神に「国譲り」をするのですが、古事記におけるこのエピソードも伏線となっているので押さえておかなければならない。
・餓鬼について
餓鬼は平安時代の「餓鬼草子」に依れば世間の至る所に存在していました。それが居なくなったのは何故か、そもそも餓鬼とは何だったのかについて諸星大二郎流の解釈が示されます。これにもビックリしなければならない。
・最期はウパニシャッド哲学から天文学にまで話が及んでしまうので、当然これも押さえなければならない。
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上記の基礎知識から要所・要所を抽出して紡がれた物語が、「暗黒神話」です。だから解っているヒトは驚嘆し、絶賛してしまうのです。
一方解らないヒトにとっては「?」となるのが当然だと思います。
でも、良いんです。
「?」をきっかけにして、ヤマトタケルや日本神話や仏教・ヒンズー教について調べてみて、改めて「暗黒神話」を読み返してみれば、「あ、そういうことだったのか」と腑に落ちると思う。そうなるとやっぱりビックリして驚嘆することになる思います。
これもマンガの読み方の一つだと思います。
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「暗黒神話」に感嘆したヒトはやっぱり続編の「孔子暗黒伝」も読まねばなりません(読んでるヒトはもう読んでると思うけど)。
こちらは、上記要素に加えて中国・インドの古代思想も加わり、もっとスゴいことになっています。因みに、「孔子暗黒伝」のラストシーンは「暗黒神話」冒頭のシーンとなっており、二部作として円環が閉じられるのでありました。
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【直接関係ないかも知れない追記】
ヤマトタケルは最期に伊吹山の神に祟られたことが原因で死んでしまいます。
この伊吹山の神は「古事記」では白い大猪として姿を現します(「書記」では蛇だけど)。
これは、意図があったかどうかは定かではありませんが、「もののけ姫」の乙事主を連想させます。
(マンガの読み方②:諸星大二郎「暗黒神話 終わり)