「偽装請負」キヤノン御手洗・経団連会長ビジョン「希望の国、日本」?! | 権力とマイノリティ

「偽装請負」キヤノン御手洗・経団連会長ビジョン「希望の国、日本」?!

■国会は連日、格差問題で論戦
 国会の衆議院予算委員会では、野党議員は「格差是正」を焦点を当て審議している。それゆえ、答弁は安倍首相と柳沢厚労大臣に集中する。民主党の枝野幸男衆院議員は7日の衆院予算委員会で、御手洗冨士夫・日本経団連会長の参考人招致を要求していた。御手洗氏が会長を務めるキヤノンが、違法な労働形態である「偽装請負」で行政指導を受けたことを踏まえたものだ。御手洗氏は経済財政諮問会議メンバーであり、今年始めに通称「御手洗ビジョン」を発表している。

■絶望と諦めが蔓延する「希望の国」
 経団連ビジョン「希望の国、日本」は、経団連のホームページでPDFファイルで公表されているが、プリントアウト出来ないようにされている。印刷されたものは書店で販売するという(1260円也)。ケチだね…経団連。仕方ないので、画面上で一通り読んでいたのだが、今までの経済財政諮問会議での議論をなぞらえている政策提言で、小泉「構造」改革の更なる遂行を、というような内容だ。「美しい国へ」から「希望の国」ですかぁ? 美しくも希望もないニッポンへの道をまっしぐらだとしか、わたしには思えませんが…。

■格差問題に関心の薄い安倍首相
 今日午後の予算委員会で枝野議員が、安倍首相に対して「昨日の予算委員会公聴会で発言したキヤノンの工場で働いている大野さんの意見を聴いたのか?」と問われ、安倍首相は「秘書官から内容を聞いただけ」と答弁した。わずか20分の衆議院TVの録画も見られなかったようだ。
 国民は憲法「改正」より、景気・労働や医療・福祉など生活に密着した問題に、関心があるというのに、どうみても安倍首相は「ワーキングプアー」や「格差是正」に興味が薄いとしか思えない。
 政治評論家の森田実氏が「井の中の蛙、大海を知らず。新しい時代の変化の方向を見極めないと、この国は衰退し、国民に絶望と諦めが蔓延してしまう」と衆議院予算委員会・公聴会(2月22日)で発言していましたが、まったく同感です。

■ネットで国会傍聴してポリティカル・リテラシーを
 そのまんま東氏が宮崎県知事に就任し、連日テレビニュースで県議会の様子(そのまんま劇場)が長時間に渡って放送されている。県議会の傍聴席が満席になるなんて、どこでも滅多にあるものではないのが哀しい現実。
 国会中継もNHKでたびたび放映されているし、衆・参院ともネットで生中継もビデオも見られる。国会議員や閣僚がどんな話をしているのか、永田町まで行かなくてもネットで見られるのだから、しっかりチェックした方がいい。NHKの中継が入っているときは、閣僚も議員もカメラを大変意識している。
 3年前に厚労委員会の傍聴をたびたびしていたが、こんな大事な審議に傍聴人が余りに少なくてビックリしたことがあるので、たまには傍聴もした方がよいとは思いますが…。
情報公開はネットの普及でかなり進んでいるので、私たち有権者に求められているのは、ポリティカル・リテラシーではないでしょうか。

●朝日新聞 2007年02月21日23時47分
【偽装請負への思い、国会で訴えへ キヤノン工場の男性】
http://www.asahi.com/job/news/TKY200702210339.html
 請負会社に雇われてキヤノンの工場で7年近く働いている宇都宮市の大野秀之さん(32)が22日、衆議院予算委員会の公聴会で、職場の「偽装請負」について意見を述べる。キヤノンからは偽装請負を否定され、行政に是正を求めている。請負、派遣、パートなど非正規雇用の労働者の気持ちを国会で代弁するつもりだ。

 大野さんは00年4月、宇都宮市清原工業団地のキヤノン工場で働き始めた。雇用主は請負会社だが、大野さんによれば、キヤノンの正社員に手ほどきを受け、超高精度のレンズを作ってきた。事実上キヤノンに派遣されたも同然の偽装請負状態だったという。大野さんは当時、派遣を請負と偽る偽装請負のことを知らなかった。昨夏にその違法性を知り、10月、栃木労働局に実態を内部告発し、是正を求めた。12月には、キヤノンユニオン宇都宮支部を立ち上げ、支部長に就任した。

 大野さんには、「世界一のレンズの製作に携わっている」との誇りがある。しかし、今の雇用形態だと、いつクビを切られるか分からない。「だから正社員になり、契約更新におびえずに、いいものづくりをしたい」
 キヤノンはこれまで偽装請負を否定し、大野さんらとの団体交渉を拒否している。「請負会社と業務委託契約に基づき請負取引しているもので、貴組合員は請負会社の従業員として当該業務に従事しているにすぎない」大野さんは、この言い分を聞き、悲しくなった。「キヤノンという会社が好きだし、ここで今後も働いていきたい」との思いを国会でぶつけようと考えている。

■衆議院TV2月22日 予算委員会・公聴会  ←ぜひ、ご視聴を

●朝日新聞 02月22日16時46分
【キヤノン請負労働者「生身の人間。正社員と同じ賃金を】
http://www.asahi.com/job/news/TKY200702220255.html
 キヤノンの工場で請負で働く大野秀之さん(32)が22日午前、衆院予算委員会の公聴会に招かれ、非正規雇用の労働者の思いを語った。長年にわたる職場の「偽装請負」も指摘し、「厚生労働省は労働者派遣法を適用して直接雇用をキヤノンに指導してほしい」と訴えた。

 大野さんはこの7年近く、数カ月おきに更新される細切れ契約で請負会社に雇われ、キヤノンの宇都宮光学機器事業所で働いてきた。「何年働いても賃金は上がりません。ボーナスはなく、退職金制度もありません。私たちには景気回復傾向の実感はまったくなく、待遇は日に日に悪くなっているのが現状です」

 キヤノンと請負会社の契約はもとは請負だった。それが一昨年5月に労働者派遣契約になり、昨年5月に再び請負契約に。さらにまた派遣契約に戻されようとした矢先の昨年10月に、労働組合東京ユニオンに加入した。不安定な将来に「精神的に限界」だった。
「私たちは生身の人間です。正社員と同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金をもらいたい。安心して子どもを産み、十分な教育を授けたい。親の面倒を見たい。そして自分自身も社会に貢献しながら幸せな老後を送りたい。そんな生活をしたいです」

 昨年12月に労組のキヤノンユニオン宇都宮支部を立ち上げた。が、キヤノンからは「使用関係がない」「偽装請負はない」として団体交渉を拒否されている。「私たちのように、一度、非正社員の道に入り込んでしまうと、正社員の道を歩むことがとても困難であることをどうか知ってください」そう述べて、大野さんは陳述を締めくくった。