憲法二十五条[生存権]剥奪の先取り「新たなセーフティーネットの提案」 | 権力とマイノリティ

憲法二十五条[生存権]剥奪の先取り「新たなセーフティーネットの提案」

■改憲への道・国会審議のスタート
 26日は衆議院憲法調査特別委員会が開催、その様子がNHKで生中継された。安倍新政権は、5年以内に「新憲法制定」を目標にしており、改憲4法案の審議が次々始まっている。
 以下、とりあえず見出しのみ掲載。
●共同通信 10月26日(木)12:31
【憲法改正案の審議は数年先 与党と民主党一致】
●朝日新聞 10月26日(木)23:41
【日教組、教育基本法改正阻止へ「非常事態宣言」】
●読売新聞 10月26日(木)23:54
【防衛庁の省昇格法案、26日審議入り…衆院】

 こういう一連の政局のなか、「生活保護を原則5年」というニュースに注目したい。
これは憲法二十五条・生存権の剥奪の先取り政策提言である。このニュースソースになった全国知事会・全国市長会の「新たなセーフティーネットの提案 『保護する制度』から『再チャレンジする人に手を差し伸べる制度へ』」が、すでにウェブで公開されている。概要版から、気になったフレーズを一部抜き出し見る。
・新たな制度の目的は、国民の「勤労を尊ぶ自立自助の精神」に基づき、個人が貧困と戦うことを、国が積極的に支援する制度を創設することであり、ライフステージに応じた貧困対策を実施することである。
 このフレーズのこころは、次の通り。貧困とは、国家の責任で起きることではなく、個人の自己責任の問題であり、貧困と戦わない人間は怠け者である

■生活保護受給者数の増加は平成7年以降の現象
 会計監査院「社会保障費支出の現状に関する会計検査についての報告」(10月)の「生活保護について」より引用。
・生活保護世帯は、昭和60年頃より減少の傾向にあったが、平成7年度あたりから増加に転じ(中略)、その結果、保護率は7年度の7・0%から16年度の11・1%に増加している。

 なぜ、昭和60年頃より減少傾向にあった生活保護受給率が、ここ10年来増加傾向にあるのか、それに対する考察がなされていない。「格差社会」の進行が、ここまで深刻であるかを、具体的に示すひとつの指標なのに、その説明がなされていないことは、極めて恣意的であると言わざるをない。
安倍政権下で改憲へのスケジュールが明らかになってきたが、憲法九条[戦争放棄]と憲法二十五条[生存権]の関係性がいっそう明確になった、10月26日はそうした「記念すべき」日・・・だった。
 
●東京新聞 10月25日 20時03分
【原則5年間で打ち切りを  生活保護で知事会検討会】
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006102501000613.html
 全国知事会と全国市長会の「新たなセーフティーネット検討会」は25日、就労可能な生活保護受給者に対する給付を原則として5年間で打ち切る「有期保護制度」の導入などを提言した報告書をまとめた。
 受給世帯の自立を促し、自治体の財政を圧迫している給付を抑制するのが狙い。知事会と市長会は報告を踏まえ、政府に生活保護制度の改定を要望する。

 報告書では、有期保護制度を導入した上で、アルコール依存対策や職業訓練など、受給世帯が自立するのに必要な支援を行うことを提言。5年は通算の期限で、1年で生活保護から脱却できた世帯が再び貧困に陥った場合、4年間は保護制度を利用できるとした。
 5年間で自立できない受給世帯で、どうしても就労できないなど一定の条件を満たす場合は給付を続ける。
 また、高齢者世帯を現行制度から分離し、基本的に金銭給付に限定、住宅を担保とした貸付制度の創設も求めた。
 このほか、現在は生活保護を受けていない低所得層が受給世帯になることを防止するため、職業紹介や職業訓練などを行うことも盛り込んだ。(共同)

参考 気になったニュース 生活保護が権利でなくなる時代がやってきた!