気になったニュース 貧困&低所得者層から「生存権」を奪うのか! | 権力とマイノリティ

気になったニュース 貧困&低所得者層から「生存権」を奪うのか!

■「社会的弱者」の生存権侵害の進行
 社会保障費削減のニュースが、相次いでいるが、これは権力の国民(ピープル)に対する憲法25条「生存権」の侵害行為である。もう少し突っ込んで言えば、「新憲法制定」の先取りである、障害も病気も老いすらも、すべて自己責任などというインチキな「国民の責務」というまやかし政策の先取りだ。
 たとえば、介護保険料を支払ながらも、1割の自己負担に応じられず、介護サービスを受けたくても受けられない「老・老」介護世帯の増大をもたらした、介護保険法改悪。
 また、障害者自立支援法という新しい法律の施行で、福祉サービスの1割負担により、もともと収入のない(障害者年金などの所得のみ)障害者の自立生活を阻害する。この悪法により、障害者の生活不安を増幅し、全国各地で悲鳴の報道が相次いでいる。
 そして我が国は、国民皆保険制度のもと、世界的(WHOデータから見て明らか!)に見ても優秀で、国民が平等な医療を受けられる制度を維持してきた。
 英国で80年代のサッチャリズム(医療の市場化)による医療の質の低下に対して、ブレア政権がそれを取り戻すべく必死の努力をしているが、一度悪くなった医療制度を元に戻すのに、相当の苦労をしている最中である。NHKニュースでコメントしていた近藤克則氏は、その英国の医療・福祉について、些細なレポートをしている。

●NHKニュース 7月12日  19時25分
【治療費の未払い 100億円超】
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/07/12/d20060712000145.html
 全国263の公立病院を運営する都道府県と政令指定都市を対象に、先月NHKが行いました。それによりますと、診察を行って1年以上経っても、患者が支払わないままになっている治療費は、総額で109億円に上っていることがわかりました。未払いの治療費は年々増加して、5年前の1.5倍に急増しており、1病院の平均はおよそ4200万円でした。
「生活が苦しい世帯の増加」という答えが最も多く82%、次いで「医療費の自己負担の増加」が60%、「患者の支払い意識の低下」が50%などとなっています。また未払いになるのは、どのような患者が多いと思うか聞いたところ、「入院や高額の治療を受ける患者」や「保険証を持っていない患者」を上げるところが目立っています。

 未払い金が急増したことを受けて、東京都では地方税の徴収を行う担当者によるチームを作り、支払いを督促するなどの対策に乗り出しているところもありますが、大半の自治体では有効な対策が打ち出せず、病院の経営が悪化する要因になっているとしています。また治療費を支払わない患者が診察を申し込んできた場合、法律で診察を拒むことができないため、未払い金がさらに増えるケースも多いということです。
 この結果について、医療政策に詳しい日本福祉大学の近藤克則教授は「医療費の自己負担すら払えない、低所得の人が増えていることが大きな要因だ。今後、お年寄りの自己負担が引き上げられると、医療費が払えない人がますます増えることが予想され、低所得者に配慮した制度の見直しが必要だ」と話しています。

■生活保護者から医療費の自己負担を?!
 生活保護費の約半分が医療費に費やされているということは、すでにわたしはキャッチしていた。それゆえ、生活保護者にとって「無料の医療費」の削減が、ひとつのメルクマールになるだろうと思っていた。いやはや、案の定である。
 生活保護は、日本の「最後のセイフティーネット」といわれる社会保障制度である。しかし、リストラなどの失業者は補足していないし、土地・家などの「財産」がある高齢者などは受けられない。申請主義で福祉事務所に相談しても、家族や親戚に対して「その本人を養えない理由」を問う、文書や家庭訪問による照会がある。やっと最後の生活のための蓄えだと思って貯金していた、わずかなお金ですら福祉事務所に発覚すると、生活保護は受けられない(見殺しするんですよ…お役所は、だからホームレスに…)。
 障害や病気などの理由で、今日・明日の食べるお金にも困り、住むところも追い出されそうになり、多重債務でサラ金などの借金すらままならない・・・そういうところまで、追いつめられないと、受けられないのが現行の生活保護制度である。

 アパートの家賃や水光熱費など、毎月の必要経費を差し引いたら、ひとり世帯で数万円で、食費などの諸経費を賄わななければならないというのが「健康で最低限度の文化的生活」の現実である。
 そこに、医療費の自己負担ですか? 障害や病気が理由で、やっと生活保護を受けられたのに、その医療費すら「生活扶助費」から自己負担するっていうのは、どういうことなんでしょうねぇ。労働力や戦力にならない「お国の穀潰しは死ね!」そういう棄民政策です。
 この国での、サバイバルもレジスタンスも、いやはや大変ですなぁ・・(ため息)…!?

●毎日新聞 2006年7月11日 3時00分
【医療扶助:生活保護者に「1割」自己負担 厚労省が検討】
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060711k0000m010132000c.html
 厚生労働省は10日、全額税金で負担している生活保護受給者の医療費「医療扶助」について、08年度から一部自己負担を求める方向で検討に入った。医療機関の窓口で、最低でもかかった医療費の1割を支払ってもらう考え。ただ、受給者に自己負担を課すことは、憲法上の「最低限度の生活保障」を目的とする生活保護の理念を覆す、との指摘もあり、同省は慎重に検討を進める意向だ。
 06年度の生活保護費(予算ベース)は2兆6888億円。うち、51.8%に当たる1兆3940億円が医療扶助に充てられている。現在は、生活保護受給者が医療機関にかかっても窓口負担は一切不要で、財務省はこの点が生活保護費全体を押し上げているとみて改善を迫っている。

 社会保障費を2011年度までに国費ベースで1.1兆円削減することを目標とした政府方針を受け、財務省は今後5年間、厚労省に毎年社会保障費の伸びを2200億円圧縮するよう求める方針。厚労省は、07年度予算については、生活保護費の母子家庭を対象とした加算の縮小と地域加算の見直し、雇用保険の国庫負担削減などでクリアできるとみているが、08年度のメドはたっていない。このため08年度は、生活保護費本体部分の「生活扶助」の水準カットとともに、医療扶助への自己負担導入を検討することにした。
 同省はこの社会保障費の削減効果を1000億円台とみている。
 生活保護制度の改革をめぐっては、医療扶助を廃止し、生活保護受給者には市町村の国民健康保険へ移行してもらって自己負担を求める案が再三浮上している。ただ、市町村は「財政負担増を招く」と反発し、議論は進んでいない。このため厚労省は、医療扶助制度を残したまま自己負担を求める方針案を与党幹部らにも説明した。

 ◇医療扶助 生活保護申請者で、自治体の医療助成制度などを活用しても生活が苦しい人が対象。社会福祉事務所などで発券する診療依頼書を持参して受診する。99年度の月平均受給者は80万3855人だったが、04年度は115万4521人と急増している。