経済人のバイブル・日経新聞の手がける日経ビジネスが、ここまで踏み込んだ記事を掲載したことは驚きだ。

 朝日でも毎日でもなく、身内の筈の日経が、政界・財界・原子力ムラに引導を渡す役目を引き受けた?
その真意は?

 原発の命をこれ以上永らえることは、日本の、日本経済のためにならない、との賢明な判断か?

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 日経ビジネスより
原発時代は終わったのではないか エネルギー政策を揺さぶる5.21大飯判決
5.21衝撃の判決

 歴史的な出来事が起こった。2014年5月21日、福井地裁は、関西電力大飯原発3、4号機について、運転してはならない、という命令を下したのである。日本のエネルギー政策を根本から揺さぶるほどの大きな判決である。関西電力はこの判決を不服として翌22日に控訴した。しかし、仮に、上級審で判決が覆ることがあったとしても、かなり時間がかかるだろう

 大飯原発は「最後の稼働」か

 2012年7月5日に大飯3号機が、同21日には4号機が発送電を開始した。しかし、その後再稼働した原発はなく、これら2基も、2013年9月2日に3号機が、15日には4号機も定期検査のため停止、再び日本国内における原発の稼働は停止され、現在に至っている。

 もし、今後日本のどの原発も再稼働しない、という事態になれば、大飯3、4号機は、「日本で最後に稼働した原発」になる。

 危険な原発銀座

 大飯原発のある若狭湾は、日本の原発銀座。商用炉だけでも、東から、日本原電の敦賀1、2、関電美浜1、2、3、関電大飯1、2、3、4、関電高浜1、2、3、4の合計13基。これに、「もんじゅ」(日本原子力研究開発機構の高速増殖炉)を加えると全部で14基に上る。さらには、現在廃炉作業中の「ふげん」もある。日本で最大の原発密集地帯である。

 この密集地帯は、また、危険地帯でもある。若狭湾は、天正地震の津波で大きな被害が出たことが明らかになっている。しかも、大飯1、2号機と3、4号機の間をほぼ南北方向に走る破砕帯が活断層である可能性が指摘されたことがある。

 京都まで50km、大阪まで80km

 福島第一の事故では、220kmほど離れた東京でも多くのホットスポットが確認された。また、約150km離れた奥日光・中禅寺湖(栃木県)などでは、ヒメマス、ニジマスなどの川魚に基準を超える汚染が確認されている。

 このように、150km、200kmの距離でも危ないのに、大飯原発から京都までわずか50km、大阪まで80km余りである。福島事故での汚染の広がりから考えると、京都、大阪も「地元」である。事故が起こった場合の影響は福島第一の比ではない

 安全性の欠陥は「人権侵害の可能性」

 福島第一原発事故を踏まえ、樋口英明裁判長は「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」と述べ、差し止めの判断基準として「新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか」を挙げた。新基準とは独立して、司法の判断がなされたこと、しかも、その根拠を「人権侵害の可能性」としたことが画期的である。

また、使用済み核燃料を貯蔵するプールについても、樋口裁判長は福島第一原発事故で建屋の壁が吹き飛ぶなどして、周辺住民の避難が計画されたことを指摘。「使用済み核燃料も原子炉格納容器と同様に堅固な施設によって囲われてこそ初めて万全の措置と言える」と、関電の対応の不十分さを批判した。

 この批判は、全国のほとんどの原発に当てはまるので、この判決の影響は、大飯だけではなく、他の多くの原発にも及ぶはずだ。

 原発時代の終わりの始まりか

川内も「その次」と目される伊方も「延期やむなし」とのムードが広がっている印象だ。大飯判決の影響は非常に深く幅広い。

 さらには、福島事故が収束からほど遠い現実も影を落とす。際限なく増える汚染水は制御されておらず、汚染廃棄物の処分場決定も難航している。国民が福島の状況に対してある程度の安堵感を持つまでは再稼働への機運は盛り上がらないのではないか。しかも、そういう時期が数年内に訪れるとは考えにくい。

 日本の原発の歴史が終わるのか。あるいは、すでに終わっているのかも知れない。】一部抜粋