中部電力の原発は浜岡の1箇所だけ、LNG火力の比率が高い。
そのために出来た英断ともいえるが、米電力大手エクセロンも (福島原発事故とシェールガス革命によって)
「原発の新設は今も近い将来も経済性が合わない」と言っている。
日本の九電力も、もはや原発の時代は終わったと認識しなければ、コスト高で新電力にシェアを喰われ、
いずれ日本経済からの退場を余儀なくされるだろう。
関連記事 電気料金値上げどころか「むしろ値下げできるかも?」その心はシェールガス。
コスト高の原発「正当化難しい」:福島原発製造メーカー 米GEのCEOが発言
原発・全部ウソだった②、本当は高かったコスト。
週間ダイヤモンドより
脱原発に必須の天然ガス調達で、中部電と大ガスがあけた風穴
【原子力発電所の停止でフル稼働が続く火力発電所の主燃料となるLNG(液化天然ガス)。そのコストは電気料金の値上げ、電力各社の赤字の原因になっているが、中部電力と大阪ガスがLNGの調達で風穴をあけた。天然ガスの大量産出で、ガス価格が大幅に低下している米国での契約にこぎ着けたのだ。
6月末、米国ヒューストンのホテルのそばに構えられた弁護士事務所の一室。机を囲んで座った中部電力と大阪ガスの6人の男たちは確かな手応えを感じていた。
「これで展望が開けてきたかもしれない」──。
6人はここで1週間にわたり、米国産のLNG調達に向けた交渉を続けていた。相手はLNG基地を運営するフリーポート社。中部電と大ガスは4月に交渉権を得ていたが、交渉期限が「異例に短い」(大阪ガス担当者)7月に設定されたため、この時点で条件交渉に一定のメドを付ける必要があった。
一時は「交渉期限を延期しないと無理だ」(同)との判断も検討されたが、2度と同様のチャンスが訪れない恐れもあった。契約交渉と経営幹部との調整を同時に進める中、今夏、“サプライズ”ともいえる契約を実現することになる。
契約内容は、フリーポートが建設するLNGの液化加工基地で、2017年から、計440万トンのLNG生産能力を中部電と大ガスが半分ずつ確保するというものだ。これにより、両社は米国で市場に流通している天然ガスを液化し、日本に運んでくることができる。
LNGは原子力発電所の停止でフル稼働している火力発電所の主燃料で、その価格は電気料金に直接跳ね返る。では、何がサプライズなのか──。】
【まず1点目は、天然ガス価格が現状、圧倒的に安い米国から調達するということだ。
米国では近年、従来の天然ガスとは別の地層から産出される「シェールガス」が大量生産され、ガス価格が大幅に低下。これまで天然ガス価格は原油価格に連動するのが一般的だったが、米国だけ全く違う値動きをする「シェールガス革命」が起こっている。
一方、日本は原油価格連動で購入している上に、福島第1原発の事故以降、調達に走り回った結果、売り主に足元を見られて、LNGの高値掴みを余儀なくされた。日本の輸入価格は、米国の天然ガス価格の約6倍にも達し、「ジャパンプレミアム」と呼ばれるほどだ。
商社抜きで契約獲得 中部電は“異端児”?
この構造を打ち破るべく動いたのが、中部電と大ガスだった。現在の価格で見ると、米国の天然ガスを輸入すると液化加工や輸送費を含めても通常の輸入価格より4割は安くなる計算。「既存の枠組みでの価格交渉には閉塞感もあり、突破口が欲しかった」と大ガス資源・海外事業部の揚鋼一郎ゼネラルマネジャーは動機を話す。
ただ、こうした動きは特に電力業界では珍しかった。「数年前まで米国のほうが価格は高かった」(電力会社幹部)と過去を振り返るだけで、中部電を除くと動きは皆無。資源エネルギー庁は「そもそも電力業界には1円でも安く調達しようという気合がない。中部電は異端だ」と指摘する。
2点目は、燃料調達の“プロ”である商社を頼らずに、新たな契約を実現したことだ。
国内ではガス権益だけでなく、LNGも商社を通して購入するケースが大半を占める。米国からの調達は三菱商事や三井物産などが交渉を主導している。だが、「商社は価格下落へのエンジンにはならない」(橘川武郎・一橋大学教授)のが実情だ。商社は、高く販売できたほうがよいからだ。関係者の1人は「もちろん商社は今も必要だが、今回は商社がいたら成功しなかっただろう」と指摘する。】
【生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することも
3点目は、天然ガスの「生産者」としての権利を手にしたことだ。
これまでの調達契約は、生産基地から一定量のLNGを購入し、日本に運ぶだけというのが一般的だった。だが、今回の契約では米国内の好きな場所で天然ガスを購入した後、生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することもできる。
今年初め、韓国のガス公社が米国で別の調達契約を決め、日本では「また韓国に先にやられた」との批判が上がったが、中部電燃料部の佐藤裕紀部長は「あの件はただの調達契約。最初から契約の幅が広いフリーポートに狙いを絞っていた」と打ち明ける。
今後は上流のガス田との関係構築やパイプライン輸送を直接手がけることもできる。佐藤部長は「これまで一部のメジャー企業だけがやっていた未知の領域が自分たちでできるようになり、日本にとっての調達のあり方が抜本的に変わる」とその意義を強調する。
最後のサプライズは、電力会社とガス会社が共同で動いたことだ。共同調達は「そう簡単にはできない」と敬遠する声ばかりだったが、条件がそろえば短期間で実現可能なことを、両社は証明した。
「市場を変えていくんだという意気込みのある人と巡り合えた」と成功の秘訣を語る佐藤部長。両社があけた風穴が業界全体に広がれば、今後日本のエネルギー価格は適正に低下していくかもしれない。】
そのために出来た英断ともいえるが、米電力大手エクセロンも (福島原発事故とシェールガス革命によって)
「原発の新設は今も近い将来も経済性が合わない」と言っている。
日本の九電力も、もはや原発の時代は終わったと認識しなければ、コスト高で新電力にシェアを喰われ、
いずれ日本経済からの退場を余儀なくされるだろう。
関連記事 電気料金値上げどころか「むしろ値下げできるかも?」その心はシェールガス。
コスト高の原発「正当化難しい」:福島原発製造メーカー 米GEのCEOが発言
原発・全部ウソだった②、本当は高かったコスト。
週間ダイヤモンドより
脱原発に必須の天然ガス調達で、中部電と大ガスがあけた風穴
【原子力発電所の停止でフル稼働が続く火力発電所の主燃料となるLNG(液化天然ガス)。そのコストは電気料金の値上げ、電力各社の赤字の原因になっているが、中部電力と大阪ガスがLNGの調達で風穴をあけた。天然ガスの大量産出で、ガス価格が大幅に低下している米国での契約にこぎ着けたのだ。
6月末、米国ヒューストンのホテルのそばに構えられた弁護士事務所の一室。机を囲んで座った中部電力と大阪ガスの6人の男たちは確かな手応えを感じていた。
「これで展望が開けてきたかもしれない」──。
6人はここで1週間にわたり、米国産のLNG調達に向けた交渉を続けていた。相手はLNG基地を運営するフリーポート社。中部電と大ガスは4月に交渉権を得ていたが、交渉期限が「異例に短い」(大阪ガス担当者)7月に設定されたため、この時点で条件交渉に一定のメドを付ける必要があった。
一時は「交渉期限を延期しないと無理だ」(同)との判断も検討されたが、2度と同様のチャンスが訪れない恐れもあった。契約交渉と経営幹部との調整を同時に進める中、今夏、“サプライズ”ともいえる契約を実現することになる。
契約内容は、フリーポートが建設するLNGの液化加工基地で、2017年から、計440万トンのLNG生産能力を中部電と大ガスが半分ずつ確保するというものだ。これにより、両社は米国で市場に流通している天然ガスを液化し、日本に運んでくることができる。
LNGは原子力発電所の停止でフル稼働している火力発電所の主燃料で、その価格は電気料金に直接跳ね返る。では、何がサプライズなのか──。】
【まず1点目は、天然ガス価格が現状、圧倒的に安い米国から調達するということだ。
米国では近年、従来の天然ガスとは別の地層から産出される「シェールガス」が大量生産され、ガス価格が大幅に低下。これまで天然ガス価格は原油価格に連動するのが一般的だったが、米国だけ全く違う値動きをする「シェールガス革命」が起こっている。
一方、日本は原油価格連動で購入している上に、福島第1原発の事故以降、調達に走り回った結果、売り主に足元を見られて、LNGの高値掴みを余儀なくされた。日本の輸入価格は、米国の天然ガス価格の約6倍にも達し、「ジャパンプレミアム」と呼ばれるほどだ。
商社抜きで契約獲得 中部電は“異端児”?
この構造を打ち破るべく動いたのが、中部電と大ガスだった。現在の価格で見ると、米国の天然ガスを輸入すると液化加工や輸送費を含めても通常の輸入価格より4割は安くなる計算。「既存の枠組みでの価格交渉には閉塞感もあり、突破口が欲しかった」と大ガス資源・海外事業部の揚鋼一郎ゼネラルマネジャーは動機を話す。
ただ、こうした動きは特に電力業界では珍しかった。「数年前まで米国のほうが価格は高かった」(電力会社幹部)と過去を振り返るだけで、中部電を除くと動きは皆無。資源エネルギー庁は「そもそも電力業界には1円でも安く調達しようという気合がない。中部電は異端だ」と指摘する。
2点目は、燃料調達の“プロ”である商社を頼らずに、新たな契約を実現したことだ。
国内ではガス権益だけでなく、LNGも商社を通して購入するケースが大半を占める。米国からの調達は三菱商事や三井物産などが交渉を主導している。だが、「商社は価格下落へのエンジンにはならない」(橘川武郎・一橋大学教授)のが実情だ。商社は、高く販売できたほうがよいからだ。関係者の1人は「もちろん商社は今も必要だが、今回は商社がいたら成功しなかっただろう」と指摘する。】
【生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することも
3点目は、天然ガスの「生産者」としての権利を手にしたことだ。
これまでの調達契約は、生産基地から一定量のLNGを購入し、日本に運ぶだけというのが一般的だった。だが、今回の契約では米国内の好きな場所で天然ガスを購入した後、生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することもできる。
今年初め、韓国のガス公社が米国で別の調達契約を決め、日本では「また韓国に先にやられた」との批判が上がったが、中部電燃料部の佐藤裕紀部長は「あの件はただの調達契約。最初から契約の幅が広いフリーポートに狙いを絞っていた」と打ち明ける。
今後は上流のガス田との関係構築やパイプライン輸送を直接手がけることもできる。佐藤部長は「これまで一部のメジャー企業だけがやっていた未知の領域が自分たちでできるようになり、日本にとっての調達のあり方が抜本的に変わる」とその意義を強調する。
最後のサプライズは、電力会社とガス会社が共同で動いたことだ。共同調達は「そう簡単にはできない」と敬遠する声ばかりだったが、条件がそろえば短期間で実現可能なことを、両社は証明した。
「市場を変えていくんだという意気込みのある人と巡り合えた」と成功の秘訣を語る佐藤部長。両社があけた風穴が業界全体に広がれば、今後日本のエネルギー価格は適正に低下していくかもしれない。】