ロイターの記事には、日本の天然ガス価格が世界で最も割高な価格なのは、「電力・ガス会社が地域独占を背景にコスト削減意識が希薄なため、割高な価格でLNGを輸入し続けてた事実も見逃せない。」と書かれている。

 電力・ガス業界が、競争原理の働かない地域独占、総括原価方式による暴利を保証された料金に胡座(あぐら)をかいた放漫経営で、漫然と超割高なLNGを輸入し続けてた結果、31年ぶり貿易赤字の一因にもなっているという。

asahi.comより
 『米国産の液化天然ガス輸入拡大へ 政府交渉進む』
【 藤村修官房長官は22日の記者会見で、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入を拡大するため、日米両政府が交渉を進めていることを明らかにした。

 藤村氏は「米国は(岩盤層が含む)シェールガスの生産拡大によって天然ガス価格が低下している。低廉かつ安定的な天然ガス供給の確保につながると期待しており、様々なレベルで働きかけを行っている」と述べた。昨年9月に訪米した牧野聖修経済産業副大臣が、米エネルギー省長官にLNGの輸出促進を要請したという。

 東京電力福島第一原発の事故後、火力発電への依存度が高まっていることに加え、核開発疑惑を抱えるイラン産原油の輸入削減も迫られている。LNGは中東への依存度は低いが、マレーシア、豪州、インドネシアの上位3カ国からの輸入が全体の約6割を占める。輸入先の多角化に向け、米国への働きかけを強めている。】

 ロイターより
『シェールガス増産で米LNG安価に、日本の輸入価格引き下げ急務』
【米国で新型ガス、シェールガスの増産が進み、天然ガスの価格下落が進む中、韓国ガス公社(KOGAS)(036460.KS: 株価, 企業情報, レポート)が1月末に安価な米国産の液化天然ガス(LNG)を20年間の長期にわたり調達する契約を結んだ。日本のLNG調達価格は国際的にも割高で、調達先の多様化や資源外交を含めた抜本的な対応が急務となっている。

<シェールガス増産で米天然ガス価格は2年で半値以下、カタール産LNG余剰に>

米国では、地中の岩盤層から産出されるシェールガスの増産が急ピッチで進んでいる。米エネルギー省は1月、米国が2016年にLNGの純輸出国になるという予測を発表した。大増産を背景に米国の天然ガスの市場価格は過去2年間で半値以下に急落しており、現在100万BTU(英国熱量単位)当たり2.5ドル前後と、日本のLNG輸入価格と比べた場合8割も安くなっている。

このため米国は、同国向け需要をあてにしてLNG増産を進めてきたカタール産LNGの輸入が事実上不要となった。当初、カタール産LNGの受け入れ拠点を目指していたルイジアナ州サビーヌパスの輸入基地は、米国産ガスの輸出拠点に転換され、韓国ガス公社と契約した。契約価格は米国の市場価格に連動し、100万BTU(英国熱量単位)当たり4─5ドルと日本の3分の1程度とみられる。

<31年ぶり貿易赤字の裏に割高なLNG調達価格>

米国の増産により余剰となったカタール産LNGは、欧州などに転売されている。この結果、欧州はロシアとの天然ガス価格交渉で強気になり、世界的に天然ガスの価格低下が進んでいる。

これに対し、日本のLNG輸入価格は100万BTU当たり16ドル前後と世界で最も割高な水準だ。かつて原油価格が安かったことと、日本には指標となる天然ガスの市場がなかったことなどから、日本では値決め基準に原油の輸入価格連動方式を採用してきた。現在のように原油価格が中東情勢の緊迫で高止まりしていると、世界的な天然ガス価格の需給緩和による価格下落の恩恵を享受できない。

2011年に日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落した要因として、原子力発電所の稼働停止に伴いLNGの輸入量が前年比12%と急増したためと説明されることが多い。しかし電力・ガス会社が地域独占を背景にコスト削減意識が希薄なため、割高な価格でLNGを輸入し続けてた事実も見逃せない。】