イギリスにてMLB公式戦開催のプランが浮上? | 欧州野球狂の詩

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日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

※今回の記事は、ハフィントンポスト英国版の記事の翻訳となります。


 来年、国際オリンピック委員会(IOC)は野球とソフトボールを再びオリンピックムーブメントに迎え入れるべきか否か、投票を行うことになっている。現在、急速なグローバル化が進んでいるこのスポーツのコミュニティにおいて、イギリスもまたその中で存在感を示そうとしている国の1つだ。


 イギリス代表監督に今年就任したリアム・キャロルは、オリンピック予選に自らのチームを率いて参戦するという目標を持っている。これはすなわち、彼のチームが現在の世界ランキング22位から、世界で上位6位以内に急上昇を果たすことを意味するものだ。現在イギリス国内においては、野球専用スタジアムはスロー近郊のファーナムパーク1か所しか存在しておらず、また財政的な補助も年間でせいぜい数千ポンドという規模にとどまることもあって、選手たちの多くは大会参加の為に自腹を切らなければならない状況にある。このスポーツの社会的存在感を高めるための支援を、キャロルが必要としていることは否定しようがないだろう。


 そして彼らに対する支援を足し述べるための存在として、国際的な競技普及を通じて自らのマーケット拡大を目指しているMLB以外に、ふさわしいものがどれだけあるだろう?フォーブス誌によれば、昨年のワールドシリーズは観客動員数において過去最低を記録するものだった。一方、アメリカンフットボールのNFLは年々アメリカにおける存在感を強めている。MLBが生き残るためのToDoリストに、「海外マーケットの発掘」が記載されたのも当然の帰結と言えるかもしれない。


 「NFLがこれまでイギリスでやってきたことに目を向けてみればいい。如何に彼らがグレートであるかよく分かるはずだよ」と、オークランド・アスレチックスの捕手スティーブン・ヴォグトは語った。「MLBの国際的なマーケットを拡大していくことはとても重要なことだ。はっきりと言おう。試合の為にイギリスに行くのは大歓迎だ。僕は是非そうしたいと思う」


 NFLは、我々イギリス人がアメリカンスポーツに対してオープンマインドであることを証明した。聖地ウェンブリースタジアムで開催された、いわゆるロンドンゲームはどれも大成功だった。どの年度においても、決して安くはない価格のチケットが完売に至ったのだから。もっと喜ばしいと思えることは、アメリカのプロ野球チームの関係者たち自身が、ここイギリスにおいて新しい観客たちの前でプレーすることや、その取り組みを通じて我が国における野球発展の手助けとなることに前向きであるということだ。


 「最終的な目標となるのは、いくつかのチームをイギリスに派遣して何試合かプレーさせることだろうね」とヴォグトは言う。「イギリスでの野球人気を爆発させる起爆剤になるのは間違いないと思う。自分が成長し続けるチームの一員である時、君は人生についてのたくさんのことを学ぶだろう。これは非常にいい機会だと思うよ」


 一般的に、野球は完全なアメリカ人のスポーツと解されがちだが、真実はそうではない。野球というスポーツの根源はわがイギリスにある。野球の元祖となるスポーツを、ロンドン近郊のカウンティであるサリー出身のウィリアム・ブレイが生み出したのは、1755年のイースターの月曜日のことだ。であるとすれば、なぜこれほどまでに野球が「母国」に帰ってくるまでに長い時間を要することになったのだろう?実際には、MLBはもっと早い段階にイギリスを訪れているが、それはあくまでも長い伝統となるものではなく、むしろ単発の巡業としての性格が色濃いものだった。


 ハフィントンポストの記者で、ウェブサイト「BaseballGB(www.baseballGB.co.uk )」のオーナーでもあるマット・スミスは、「MLBに関連したイギリスでの最初の試合は、1874年に行われたボストン・レッドストッキングスとフィラデルフィア・アスレチックスによる全国巡業だ」と指摘する。


 「それ以降の出来事としては、1924年にニューヨーク・ジャイアンツ-シカゴ・ホワイトソックスの1戦が、チェルシーの本拠地スタンフォード・ブリッジで行われたのが挙げられる。この時は観客席は満員で、当時の国王であるジョージ5世もスタジアムに足を運ばれていたそうだ。もっとも最近の出来事としては、1993年にボストン・レッドソックスとニューヨーク・メッツが、ロンドンのオーバル・クリケットグラウンドでマイナーリーグの選手たちを集めてエキシビションマッチを行った例がある」


キャロルは、MLBやMLB選手会がヨーロッパでの公式戦開催に着手し始めていることを歓迎するとともに、イギリス野球の発展に資するという点に関してヴォグトの発言に同意する意向を示した。「ロンドンでのMLB公式戦開催は、イギリスにおける野球発展の契機として私たちが長い間ずっと考えてきたアイデアなんだ」と彼は語った。


 「NFLをはじめとする、他のアメリカンスポーツがイギリスにおいて収めてきた成功は、MLBのロンドンシリーズがイギリス野球に対して凄まじい影響を与えるであろうという私の見立てを補強する、格好の材料になっている。とても多くのイギリス人が、アメリカ旅行の折やテレビでMLBの試合を観戦することによって野球のファンやプレーヤーとなっている。イギリス国内でMLBの試合を行うということは、こうした動きが何倍ものスケールで起こるということなんだよ」


 アスレチックスのボブ・メルビン監督は、ハフィントンポストの取材に対してこう答えた。「レギュラーシーズンの試合の一部をイギリスで開催することは、あなた方の国における野球の発展において、非常に強力なトリガーとなることは間違いないだろう。イギリス人は野球というスポーツに高い理解度を示せる人々だと私は思うし、試合開催は自然なことだと思うよ。実現するのが楽しみだ」


 「もし試合の為に渡英するというオファーをアスレチックスが手にすることになれば、私はそれに対して100%の全力を尽くすつもりだ。数年前に同様の海外公式戦の為に日本に行ったが、素晴らしい経験になったのをよく覚えている。大西洋を渡ってイギリスを訪問し、首都ロンドンで我々のスポーツを披露するという機会は、注目度を集めるという意味ではもしかしたらそれ以上のイベントとなるかもしれない。いつでもその準備はできていると断言するよ」


 MLBの前コミッショナーであるバド・セリグは、早ければ2015年にもヨーロッパでの公式戦開催を実現したいというビジョンを披露したが、残念ながらこの構想は現時点ではまだ実現には至っていない。


ソース:http://www.huffingtonpost.co.uk/2015/05/28/bringing-baseball-to-britain-mlb-wants-come-over-play_n_7461174.html