第2回トークライブを開催しました | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 国際野球支援団体ベースボールブリッジでは、昨夜東京都墨田区にある貸会議室にて、池永大輔さん(シャトーレ・フレンチカブス前選手兼任監督)をお迎えしてトークライブを開催しました。


 昨年2月17日の第1回に引き続き、池永さんをゲストとしてお迎えした今回のイベントでは、「五輪野球考2014」と銘打ってオリンピックと野球をテーマに計90分にわたり議論。「オリンピックに野球は必要なのか」という話題をきっかけとして、WBCとの関係性やヨーロッパでの現場の現状、さらにはオリンピックという主題から一旦離れ、それぞれがどのような活動を日々行っているのかについても語り合いました。


 池永さんは五輪野球の必要性についての持論として「ファン心理としては、やはり世界最高レベルの凄い野球が見たい。だからこそ、無理にオリンピックに野球を復活させるよりは、世界最高峰の大会としてWBCに集中してしまうのはありなのではないか」とする一方、ドイツやスペイン、フランスといった国々から選手を日本に送り込むなどの自身の活動を紹介したうえで、「自分が今エージェントとして取り組んでいる活動は、長期的に見ればオリンピックという物につながっているのかもしれない」とも語りました。


 特に池永さんが問題視していたのが、日本球界と欧州球界の間の交流の少なさ。「欧州では野球が好き=MLBが好きという認識で、両者が直結した関係にある。ヨーロッパ選手権にフランス代表のコーチとして参加した時も、ネット裏のスカウトは皆MLBの所属だし超満員のお客さんの中にも日本人の顔はない。向こうにはこんなにも日本人がいないのかと愕然とした。既に欧州はMLBの勢力圏になっていることを考えても、まずはもっとお互いがお互いを知らないといけない」と危機感をあらわにしました。


 一方、ベースボールブリッジ代表の立場で参加した俺は、かつて自分が住んでいたこともあるイギリスが補助金停止を理由とする資金難のため、2007年にヨーロッパ選手権で準優勝したにもかかわらず、出場権を獲得した翌年の台湾での北京五輪世界最終予選への出場を、泣く泣く断念せざるを得なくなった事例を紹介しました。「スポーツを盛んにする上では、外野での様々な環境整備が非常に重要な意味を持つ時代になっている。そのための莫大な予算の元手となる補助金を獲得する意味でも、五輪競技であることは必須事項。現場が掴んだ成果が彼らの手が届かない場所で潰されるということは、スポーツの世界では絶対にあってはならないことであり、第2、第3のイギリスを出してはいけない」と語りました。


 また五輪とWBCの関係性については、「車の両輪でありどちらが欠落しても野球界にとってはマイナス。例えば、WBCは五輪と違って招待制の大会であり、まず出場できるか否かという点でハードルがある。出場国は必要な資金をMLBが全部負担してくれるから良いが、そもそもWBCに出られない国はどうカバーするのか。第3回大会から28か国に出場枠が増えたが、世界野球・ソフトボール連盟(WBSC)加盟国はあと96もある。そこはWBCだけではケアすることはできない」と紹介しました。


 五輪野球というトピックで必ずと言っていいほど語られる、競技施設の問題については「例えばオランダやドイツには、数万人規模を収容できるスタジアムが既に存在しているし、他にもマイナー顔負けのボールパークはいくつもある。それをそのままうまく活用すれば済む話。仮に1からスタジアムを作るにしても、それがもしかしたら将来的に野球がその国で人気競技になる、一番最初のきっかけとなるかもしれない。スタジアム建設は浪費ではなく投資と捉えるべきで、もっとポジティブな方向で考えるべきなのではないか」と主張しました。


 一方、池永さんもこれには同意。「2006年に自分が初めてドイツに行った時も、当初は島流しか何かだと思っていて正直行きたくはなかったが、実際に現地でスタジアムを目にして度肝を抜かれた。向こうはスポーツ施設をつくるうえでも自治体などが絡んでくるし、2部リーグの球団でもかなり豪華な設備がある。スポーツ施設へのお金のかけ方が日本とは全く違う。こういうことも含めて、日本ではなかなか向こうの事情が知られていない」と語りました。


 日本と欧州の交流の少なさに関しては、池永さんは自身の目論見として「NPB経験者を例えばドイツとかに連れていく。そうすると日本のファンも『NPBでやっていた選手がドイツに野球をしに行く時代になったのか』と注目するようになる。そうすることで視線があちらの方に向いていくようになって、関心を持つ人も増えてくるはず」というアイデアを紹介。「とにかく今の日本では、欧州球界についての情報が少なすぎる。そこが大きな問題だと思っている」と語りました。


 今回のトークライブには、海外でのプレーを目指している大学生やMLB球団のマイナーチームのトレーナーなど、様々なバックグラウンドを持つ方々が来場されました。出演者とオーディエンスの距離がとても近かったこともあり、出演者同士はもちろん来場者とも活発なやり取りが展開され、非常に充実した90分間になりました。前回のトークライブでは最大の課題となったタイムマネジメントも、今回はほぼ完ぺきに行うことができ、その意味でも手ごたえを感じましたし大きく前進できたと言えると思います。


 個人的にも、今回のイベントは本当にやっていて楽しかったですし、無事に終わることができてよかったと思います。これからもこうしたイベントは定期的に開催していこうと思っていますし(もし可能であれば、今年もう一度相手を変えてできたらな、なんて考えているところです)、そのたびにどんどん進歩していければと思います。最後にこの場を借りて、当日お越しいただいた来場者の皆様、企画立案の段階からずっと支えてくれたスタッフ、そして共演者の池永さんに心からお礼を言わせていただきます。今回は本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。


国際野球支援団体ベースボールブリッジ代表

田中亮多 a.k.a. SYSTEM-R