信頼を裏切った罪は重い | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 日本プロ野球選手会は、どうやら自ら地雷を踏むことを選択したらしい。つい先ほど、Twitterにて「プロ野球選手会が、2013年WBCへの不参加を決議した」というニュースを見て、愕然としたばかりだ。そのショックがまだ完全には収まらないうちに、この記事を書いているので、正直言い回しがきつかったり、乱暴だったりするかもしれない。ただ、俺が怒りに任せて、過激な文章を書くのはいつものこと。今回もそういうものだと思って、どうか読んでほしい。


 俺はこれまで、このブログにおいて何度も、「日本代表はWBCに出るべきだ」と一貫して主張してきた。国際大会のカレンダーが新しくなり、国際化の波が押し寄せているなか、まだ過去2回しか開催されていないWBCに、世界一決定戦としての白羽の矢が立てられた。その大会を大きく育て、野球を世界的人気スポーツにしていくうえでは、「アジア王者」を自認し、過去2大会で優勝した日本が、開催国アメリカとともに存在感を発揮していくべきだと考えているからだ。


 また、近年決して安泰な状態にはない日本球界にとっても、WBCのような大規模な国際大会に参加することは、人気回復のためには必要なことだ。今のNPBの試合は、かつてのようにゴールデンタイムで放映されることはほとんどなくなり、BSやCSに追いやられた。日本一を決める戦いである日本シリーズですら、デーゲーム開催を強いられたほどだ。一方で、「世界との戦い」がそれこそ日常的に存在するサッカーは、代表戦限定とはいえゴールデンでの中継はあるし、いわゆる「欧州組」の活躍の様子も、毎日のように耳に飛び込んでくる。


 もはや、国内のみで完結するスポーツは、日本においては生き残れないんだ。現在の日本サッカーの隆盛ぶりに対しては、素直に敬意を表するけれど、一方で野球ファンの1人としては、やはり現在の状況に対して危機感を覚えずにはいられない。必ずしも、地上波中継だけが唯一絶対の指標ではないし、各地域ごとのレベルでは、そこまで人気が落ちていないという状況も確かにある。ただ今の時代は、プロ野球というだけで無条件に応援してもらえるようなものじゃない。エンターテイメントの担い手として、人気をつなぎとめていくためには、新しい要素も見せなければならないんだ。国際大会は、そうした「新しい要素」の1つだし、各国のトップ選手が出場するWBCは、人気の起爆剤として相応しいものだったはずだ。


 一方で、選手会が掲げる主張の矛盾についても、幾度となく指摘している。いくら、日本代表がスポンサー収益によって潤う仕組みができたとしても、他の出場国すべてがその恩恵にあずかれるわけじゃない。派遣選手数が、MLB選手会のそれと比べても圧倒的に少ないのに、日本の取り分を増やせというのもおかしな話だし、MLBが主催する体制にはケチをつけるくせに、れっきとした国際競技連盟であるIBAFが主催する、ワールドカップには一切出ないというのも、全く筋が通らない。どう考えても、彼らの主張に理があるとは思えないんだ。


 そんな無理を言っても、MLB側は選手会のことを信じて、回答期限が過ぎた後もずっと待ってくれていた。他の27の参加国だって、前回の大会王者(WBC優勝チームが「世界一」と正式に認定されるのは、今回の2013年大会からであって、日本はあくまでも「WBC優勝」という扱いでしかない)の我儘に散々振り回されながらも、文句ひとつ言わずにこの大会に向けて準備を進めてきた。NPBも、選手会が最後には態度を翻してくれると期待して、彼らに先駆けてWBC出場を公言した。俺たちファンだって、極端な投高打低を強いる統一球に、内心ではうんざりさせられながらも、「WBCで勝つためだから」と我慢していた。皆、彼らのためにずっと辛抱していたんだ。


 そういう状態にもかかわらず、選手会は自ら爆死する道を選んだ。さんざん回答期限を引き延ばすくせに、何1つ具体的な行動を起こすこともせず、早期回答を求めるMLBやファンをカリカリさせた挙句、1次リーグの会場や組み合わせなどが報道され始めたこの時期になって、当初とまったく変わらないうたい文句を盾に、大会への不参加を表明したんだ。MLBを敵に回し、他の全参加国を敵に回し、揚句俺たちファンまでも敵に回した。それも何のことはない、ただ金のためにだ。こいつら、一体どういう神経してるんだ?


 選手会はこの問題を巡って、「ファンには迷惑をかけることになるかもしれないが、理解してくれるはずだ」とも発言したそうだ。でも、選手会が今回不参加を決めたのは、平たく言えば金の問題のはず。所詮他人の財布に金が入るか入らないかの問題に、一体誰が理解したり同情したりする?そもそも、2004年の近鉄・オリックス合併騒動の時に、「私たちは、常にファンの皆さんとともにいます」と言ったのは、他でもない選手会じゃないか。そんな彼らが、どうしてこんなファンを軽視するような発言ができるんだろう。当時とリーダー(当時は古田敦也、現在は新井貴浩)は違うとはいえ、このダブルスタンダードはあまりにもひどすぎる。


 俺は今回の不参加決議を下した選手会に対しては、2度とWBCには出場してもらいたくはない。それだけじゃなく、WBC以外のあらゆる国際大会にも、一切出てもらいたくはない(たとえ五輪が復活し、IBAFが新たに計画しているプレミア12が、WBCに匹敵する規模になったとしてもだ)。また、もし今後WBCに出場する方向で、彼らが意見を翻したとしても、俺は選手会に対して中指を立てるよ。どんな理由があろうと、金のために国際大会を辞退するような人間に、一国の国旗を背負う資格なんてありはしないんだ。日本代表という存在の重みを、今の選手会が実感しているとは到底思えない。一度は、彼らも日の丸を背負った身のはずなのにね。


 結局、選手は口では「皆さんの声援のおかげで勝てました」「応援よろしくお願いします」なんて言っていても、本音の部分ではファンの方なんて全く見ちゃいないんだろう。今回の報道を聞いて、俺は率直にそう思ったね。どんなに素晴らしいアスリートとしての才能があろうと、そんな奴を応援しようとは思えないし、ましてや金を払おうなんて思えない。今夜からのオールスター戦も楽しみにしてたけど、もう見る気も完全に失せたね。今後も、NPBの試合を見に行くのは一切やめる。ささやかな規模かもしれないけれど、これは野球ファンとしての信頼を裏切った選手会に対する、俺なりの意思表示だ。


 でも、実際にNPBや選手会が被る被害は、そんなささやかなものじゃすまないよ。上述したとおり、一度は(NPBが)出ると言ったくせに、散々回答期限を引き延ばした挙句、結局出ないと公式に発言したんだからね。この契約社会において、約束を反故にする行為は絶対に許されない行為。MLBはもちろん、他の参加国からも損害賠償を請求される可能性は、かなり高いと俺は思っている。実際、彼らが被った被害というのは、選手会が思っている以上に大きいんだからね。これは、中国野球ブログ「加油!中国棒球」管理人であるチュニキの受け売りだけど、「金のために出場辞退したのに、賠償地獄で大赤字」なんて展開も、十分あり得ると思うよ。ひょっとしたら、今回の件をきっかけに、NPB自体が潰れるなんてこともあるんじゃないの?


 まぁ、仮に本当にNPBが潰れたとしても、俺は全然かまわないし、一切彼らに同情しないけどね。運営にあたって、収益を12球団で分け合う仕組み1つ作れず、指揮官が不倫問題を起こしても、何事もなかったかのようにグラウンドで指揮を執ってる。おまけに、散々ファンをやきもきさせた選手会は二枚舌。こんな救いようのない組織、冗談抜きにこの際潰れてしまっていいと思うよ。職場を失い、路頭に迷ってから、自らが犯した過ちに気づけばいい。その時になって初めて気づいて悔やんだとしても、もう遅いけどね。