玉の生命力。。第66回NHK杯/準々決勝「久保九段-橋本八段を振り返ろう」
今回は昨日放送されました
日曜午前のお楽しみ第66回NHK杯/準々決勝
「久保利明九段-橋本祟載八段」の模様を
振り返らせていただきます。。
3手目▲5八飛。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
先手は久保九段。
その初手でいきなり中央5筋の歩を突くと
橋本八段の2手目△3四歩をみて、飛車に手をかけ
ケレン味なく、得意の「中飛車」に構えました。。
対します、橋本八段も次に。。
4手目△3ニ飛。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
飛車を3筋へと振り「三間飛車」に構え
戦型は「相振り飛車」となりました。。
久保九段の今期ここまでの成績は
42戦28勝14敗(.667)。順位戦はB級1組で8勝3敗。
最終戦を待たずに、A級復帰を決めました。
現在、郷田真隆王将に挑戦中の第66期王将戦では
3勝1敗とリードを奪い、タイトル奪取に王手をかけており
振り飛車党現党首は一躍、年度末に向かう将棋界の
主役の躍り出ました。
NHK杯も狙うはもちろん、優勝あるのみ。
魂の振り飛車党は充実感を漂わせ、本局に臨みます。
対します、橋本八段の今期ここまでの成績は
26戦16勝10敗(.615)。順位戦は同じくB級1組で
6勝5敗。悲願のA級復帰は来期へ持ち越しに。。
居飛車、振り飛車ともに苦もなく指しこなす天才肌で
コッテリ、モッチリとした重厚な受けが自慢の力戦派も
虎視眈々とNHK杯初優勝を狙います。。
16手目△6ニ玉。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
飛車のポジションが決まったところで
居玉を解除し、7筋まで寄せた久保九段に対し
橋本八段は9筋の位を取ってから、居玉を解除。。
24手目△8ニ玉。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
そのまま「美濃囲い」へと入城を完了。
後手の囲いの完成をみて、久保九段は。。
25手目▲9八香。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
位を取られた9筋の香車を繰り上げ
「穴熊」を明示しました。。
44手目△8四角。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
久保九段は隙間無く「穴熊」の堅陣を完成。
一方、囲いを「ダイヤモンド美濃」に組み替えた
橋本八段は角のアングルをリバースします。。
この手をみて
久保九段が4筋の位を取ると(45手目▲4五歩)
橋本八段も4筋の歩を突き、駒がぶつかりました。。
(46手目△4四歩)
47手目▲4六銀。
上図での持ち駒
▲久保九段: なし
△橋本八段: なし
久保九段は4筋の歩をそのままに銀立てると
橋本八段が次に△4五歩(48手目)と取り込み
以下、▲3五銀~△3ニ飛~▲2四歩~△同歩に
下図53手目▲2四飛と進行。。
53手目▲2四飛。
上図での持ち駒
▲久保九段: 歩
△橋本八段: 歩2
久保九段は突き捨てでリズムを取りながら
飛車を元居た2筋まで振り戻しました。。
77手目▲2ニ飛成。
上図での持ち駒
▲久保九段: 歩2
△橋本八段: 歩
橋本八段は先に馬を作りますが
銀と歩を活用しながら確実に前へと進んだ
久保飛車が上の局面で後手陣突破に成功。。
格調高く組み上がった敵陣へ
ともに大駒を成り込む、攻略の糸口を探ります。。
86手目△7九角成。
上図での持ち駒
▲久保九段: 角、歩
△橋本八段: 金
「穴熊」の堅陣にものを言わせて
久保九段は飛車に続いて角の成り込みにも成功。
「と」金とさらには4筋の銀も後手陣進攻を見据え
ジワジワと圧力を強める先手に対して、橋本八段は
上図で金との交換で攻撃の起点である馬切りを敢行。。
次の▲同金(87手目)をみて。。
88手目△2一金。
上図での持ち駒
▲久保九段: 角、歩
△橋本八段: なし
手にした金を自陣に投入。
橋本八段らしい腰の座った一手で
先手に駒を捌きを求めました。。
この手に対し、久保九段は
馬をグイッと前に出し(89手目▲3ニ馬)、以下
△2ニ金~▲4一馬~△2三金~▲2一飛~△4九飛に
▲2三馬~△2九飛成~下図97手目▲7一角と進行。。
97手目▲7一角。
上図での持ち駒
▲久保九段: 金、歩
△橋本八段: 桂、歩
後手陣で飛車交換が成立すると
両者は即座に、手にした飛車を敵陣に打ち込み
いざ開戦となると、久保九段はすかさず後手の急所へ
角を打ち込み、一気に寄せの態勢に入りました。。
110手目△7五玉。
上図での持ち駒
▲久保九段: 歩2
△橋本八段: 金、桂、香、歩2
将棋界屈指の終盤力を誇る
久保九段の鋭い寄せの前にして、形勢は大きく
先手に傾いたかと思われましたが、しかし
そこから橋本玉は脅威の生命力を発揮。。
先手の包囲網をくぐり抜け
スルスルと上部脱出に成功します。。
132手目△9四玉。
上図での持ち駒
▲久保九段: 桂、歩2
△橋本八段: 角、金2、香、歩
駒を回転させながら
久保九段は執拗に橋本玉へと迫りますが
それ以上に橋本八段の正確な受けが冴え渡り
後手玉は事前に位を取った9筋へと移動。。
攻守は変わらないものの
先手に大きく傾いたはずの形勢の針は確実に
指し手が進む度、反対側へと振れていきます。
【 投了図・158手目△9七歩打 】
投了図での持ち駒
▲久保九段: 桂、歩5
△橋本八段: 角、金2、銀、香2、歩
最後は文字通りの玉頭戦となりましたが
9筋の死闘を制したのは、橋本八段でした。。
最後は迫る香車を払いのけ
橋本八段が先手玉の頭上に歩を突き刺した
上図の局面をみて久保九段、無念の投了。。
強烈なねじり合いを制した橋本八段が
初優勝を目指し、堂々のベスト4進出を決めました。
□□□
サイトの更新もコツコツと再開中。。