第2期叡王戦決勝三番勝負/第1局「未来の将棋を振り返ろう」
今回は昨日、沖縄県名護市にて行なわれました
注目の第2期叡王戦決勝三番勝負/第1局の模様を
振り返られせていただきます。
意外にも初手合いとなった本局
振り駒の結果、先手を得たのは千田五段でした。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: なし
△佐藤名人: なし
千田五段の初手は角道を開く▲7六歩。。
対します、佐藤名人も2手目△3四歩と同じく
角道を開き、対局はスタート。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: なし
△佐藤名人: なし
次に両者は息を合わせて飛車先を決め
「横歩取り」を目指す出だしとなりますが。。
7手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: なし
△佐藤名人: なし
千田五段は▲7八金と角頭を受けずに
いきなり飛車先の歩を突き合わせました。。
11手目▲5八玉。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 歩
飛車先2筋で歩交換が成立すると
千田五段は浮き上がった飛車はそのままに
さっと玉を立て、「中住まい」に構えました。。
プロデビュー当初から超力戦派として名を挙げ
将棋界随一の将棋ソフト通としても知られる千田五段は
本局の大一番でも定跡に全く囚われることなく
独自の手順で模様を張って行きます。。
14手目△8六歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 歩
出だしから趣向を凝らす先手に対して
早めに居玉を解除した(12手目△4一玉)
佐藤名人も飛車先の歩をぶつけます。。
上図から以下、▲同歩~△同飛の進行で
後手もウォーミングアップがてらに飛車を走らせ
歩の交換が成立した、次の瞬間。。
17手目▲2ニ角成。
上図での持ち駒
▲千田五段: 角、歩2
△佐藤名人: 歩2
千田五段は迷うことなく角交換を敢行。
まだ駒組みもままならぬうちに大駒を捌きました。。
19手目▲7七角。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩2
△佐藤名人: 角、歩2
角交換成立直後
千田五段は手にした角をすかさず自陣投入。。
浮いたままの佐藤飛車に当てて手番を稼ぎます。。
21手目▲8三歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 角、歩2
佐藤名人が飛車を元居た地点まで引き戻すと
千田五段はその頭上を叩き、追撃。。
ここで△同飛と払うと
次の▲2ニ角成が猛烈に厳しいということで
佐藤名人はこの歩は払わず飛車を5筋へと移動。。
(22手目△5ニ飛)
すると、次の瞬間。。
23手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩2
△佐藤名人: 角、歩2
千田五段はいまだかつて見たことない
上図の局面で2筋の浮き飛車で3筋の歩を捕獲。。
これが近未来の「横歩取り」なのでしょうか。。
26手目△5五歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩2
△佐藤名人: 角、歩2
ここまでは先手の独壇場でしたが
佐藤名人は5筋から反撃を開始。。
飛車先で位を確保し
先手の角道と飛車の横利きを止めます。。
この手をみて、千田五段は
まず、2筋を叩いて金を吊り上げてから。。
29手目▲5五飛。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩2
△佐藤名人: 角、歩3
飛車で5筋の歩を弾き飛ばし
名人相手に飛車交換を要求しました。。
事実上、飛車交換を誘った形の佐藤名人は
もちろん、この申し出を受けて立ちます。。
(30手目△同飛)
千田五段が角で飛車を払って(31手目▲同角)
以下、△2七飛~▲2八歩~△2四飛成~▲7七桂~
△7四龍~▲6六角に△3ニ金~▲8九飛~△7ニ金に
下図41手目▲8四飛と進行。。
41手目▲8四飛。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 角、歩3
機敏に龍を作った佐藤名人対して
角を基点に据えた千田五段は上図で二度目の
飛車交換を求めますが。。
42手目△7六龍。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 角、歩4
今度は佐藤名人はこの申し出を拒否。
龍をスッと前に走らせ先手陣に圧力をかけます。。
この手をみて、千田五段は
金を8筋に繰り出し(43手目▲8七金)
強引に龍を追いますが。。
44手目△6九角。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 歩4
佐藤名人は先手陣に出来た一瞬の隙を逃さず
手持ちの角を6九の地点に打ち込み、王手・金取り。
次の▲同玉(45手目)をみて、龍が先手陣に侵入。。
王手・角取りで畳み掛けます(46手目△6七龍)。
64手目△8一歩。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 角、歩2
基点の龍で角を取り返した佐藤名人は
形勢有利を自覚し無理せず丁寧に模様を張ります。
一方、何とか局面をかき回して
序盤の勢いをもう一度取り戻した千田五段は、次に
1筋の歩を突き合わせ、仕掛けを開始(65手目▲1四歩)。。
しかし、佐藤名人の△同歩(66手目)をみて
8筋の飛車で7筋の歩を取った(67手目▲7四飛)
次の瞬間。。
68手目△8八角。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩2
△佐藤名人: 歩3
佐藤名人はここでも抜け目なく
飛車がどいた8筋に角を打ち込み、香取りを確定。
したたかに盤上を隅々まで見渡し、わずかな利を
少しずつ重ねて行きます。。
80手目△7六龍。
上図での持ち駒
▲千田五段: 歩
△佐藤名人: 金、香、歩3
序盤の勢いは何処へやら。。
さすが名人の磐石の指し回しの前に攻めあぐねる
千田五段を横目に、佐藤名人は上図の局面で
金との指し違いでスパッと龍を切ります。。
82手目△7五香。
上図での持ち駒
▲千田五段: 飛、歩
△佐藤名人: 金、歩3
先手の△同7六同角(81手目)目掛けて
佐藤名人は角が捕獲した香車を打ち込み、以下
▲5六飛~△7六香~▲同飛~△7八金~▲1一飛に
△6八金~▲2一飛~下図90手目△6七角と進行。。
90手目△6七角。
上図での持ち駒
▲千田五段: 桂、香、歩
△佐藤名人: 銀、歩3
佐藤名人は千田五段の反撃を相手にせず
極めて淡々と、問答無用の寄せに入りました。。
【 投了図・108手目△3八金 】
投了図での持ち駒
▲千田五段: 角2、歩2
△佐藤名人: 桂2、歩4
佐藤名人の厳しい寄せの前に
千田五段は為す術を失い、上図の局面をみて
無念の投了を告げました。。
千田五段の
斬新で意欲的な指し回しも異彩を放ちましたが
しかし、それ以上に強さを際立たせた佐藤名人。。
名人が名人たる理由を自ら証明し
貫禄も十分に、叡王戦優勝へ王手をかけました。。
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神童・藤井四段のデビュー戦が決定!