最後に底力。。第42期女流名人戦5番勝負/第5局「里見女流名人完勝、輝く7連覇達成」
7連覇を目指す里見香奈女流名人に
女流将棋の第一人者・清水市代女流六段が挑戦する
第42期岡田美術館杯女流名人戦5番勝負。
ここまで4局を消化し、ともに譲らず2勝2敗のイーブン。
タイトルのゆくえは本日、東京・将棋会館にて行われる
最終戦/第5局までもつれこみました。。
振り駒で決まる大一番の手番で
まずは幸先良く先手を得たのは、清水女流六段。
その初手は居飛車党の誇りを示す、拘りの2六歩から。
対します、里見女流名人は
2手目に角道を開ける△3四歩と返して
対局はスタートとなりました。。
4手目△5四歩。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: なし
清水女流六段が3手目に角道を開くと
里見女流名人はすかさず中央5筋の歩を突いて
振り飛車投入を示唆します。。
6手目▲5二飛。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: なし
清水女流六段が飛車先を決め(5手目▲2五歩)
後手の意思表示を急かせると、里見女流六段は
ノータイムで飛車に手をかけ、5筋に構えました。
13手目▲3七銀。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: なし
居飛車も取り入れ、戦型選択に試行錯誤をする
里見女流名人ですが、タイトルの懸かった大一番は
はやり、手に馴染んだ「ゴキゲン中飛車」を投入。。
後手の作戦に対し、清水女流六段は
「ゴキ中」対策の決定版「超速▲3七銀」を採用します。
19手目▲5八金右。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: なし
しかし、清水女流六段は4六に構えることの多い
右銀の戦場への繰り出しを急がず、じっくりと
まずは自陣を固めていきます。。
先手の駒組みに呼応して
里見女流名人も玉の囲いを目指し
振り飛車の相棒である「美濃囲い」の中へ
玉の入城を早々と完成させました(18手目△8二玉)。
角が重たくなってきた清水女流六段は
右の金を5筋に上げて後手に手番を渡しました。
上図から次に、里見女流名人が
△4二銀(20手目)と繰り上げたのをみて。。
21手目▲4六銀。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: なし
清水女流六段はこのタイミングで
右銀を起点となる4六の地点に構えました。。
36手目△3二飛。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 歩
△里見女流名人: 歩
その後、5筋の位を張った後手の歩を挟んで
先手に続けて(23手目▲6六歩)、後手も(24手目△4四歩)
角道を二重に止める、大一番らしい慎重な序盤の展開に。。
3筋に飛車を合わせて、歩を交換した清水女流六段に対し
里見女流名人も同じく飛車を3筋に振った、上図の局面で
午前の対局は終了、お昼休憩突入となりました。
【 お昼のメニュー 】
清水女流六段: ミックス雑炊
里見女流名人: うな重(梅)
50手目△5二銀。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 歩
△里見女流名人: 歩
午後の対局開始となっても
両者は相手の出かたに細心の注意を払いつつ
けん制を入れ、駒を組み替え手を渡す神経戦が
局面の均衡を保ちつつ、ひたすら展開されます。。
58手目△3三桂。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 歩3
△里見女流名人: 歩
緊張感のある、ジリジリとした展開に
先に風穴を開けたのは、里見女流名人でした。
ともに頭上を歩で叩き、つり出した
先手の飛車と銀目掛けて、左の桂馬を跳躍。
華麗に両取りから、仕掛けを開始します。。
清水女流六段は、次に
飛車を自陣最下段へと逃がして(59手目▲2九飛)
以下、△4五桂~▲同桂~△4四歩に▲2三歩~
△同飛~下図65手目▲1五桂と進行。。
65手目▲1五桂。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 歩2
△里見女流名人: 銀、歩
里見女流名人が前に出た反動を利用して
清水女流六段は手にした桂馬を1筋に投入。
後手の飛車に狙いを定め、反撃に転じました。
69手目▲2三歩。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: 銀、歩2
清水女流六段は手持ちの2枚の歩を連続投入。
里見飛車の頭上を叩いて押さえ込みをはかり
後手の角の取り切りを狙います。。
ここで飛車が逃げてるようでは話にならず
△2八歩と先手の飛車を叩いても、すでに遅いと。。
70手目△1五角。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: なし
△里見女流名人: 銀、桂、歩2
里見女流名人は飛車を見捨てて
角で桂馬を捕獲し、勝負に出ます。
清水女流六段は、もちろん
すぐに飛車を取り込み(71手目▲2二歩成)
以下、△4五歩~▲5七銀~△3七角成~
下図75手目▲2三飛成と進行。。
75手目▲2三飛成。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 飛
△里見女流名人: 銀、桂2、歩2
里見女流名人は馬を、清水女流六段は龍を
それぞれ敵陣で作り、いよいよ本格開戦へ。。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 飛、歩
△里見女流名人: 桂、歩2
いざ、開戦後は里見女流名人の独壇場。
馬を引いて先手の2筋の拠点を睨みながら
その馬の馬の回りに攻め駒を連続投入して
攻撃の圧力を一気に高めました。。
91手目▲7五飛。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 歩
△里見女流名人: 歩
急激にアクセルを踏み込む里見女流名人に対し
置き去りにされてなるものかと、清水女流六段は
手持ちの飛車をいきなり7筋に投入すると。。
95手目▲7二飛成。
上図での持ち駒
▲清水女流六段: 銀、歩2
△里見女流名人: 歩
なりふり構わず、飛車を突進。。
強引に後手の「美濃囲い」を粉砕して
凄まじい気迫をむき出しにして、己を鼓舞します。。
しかし。。
【 投了図・118手目△7八「と」金 】
投了図での持ち駒
▲清水女流六段: 金、銀、歩3
△里見女流名人: 金、銀2、歩
清水女流六段の勝利への執念は後一歩、届かず。
最後は後手玉に「詰めろ」をかけて意地を見せましたが
その直後に、里見女流名人が厳しく寄せに入り万事休す。
上図の局面をみて無念の投了を告げました。
第4局で大敗を喫するなど
らしくない対局もみられた今シリーズでしたが
決戦の大一番ではさすがの勝負強さをみせつけた
里見女流名人が完勝で見事、7連覇を達成しました!
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里見女流名人は奨励会でも奮闘中。。